「Proco/RATの製作」
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No.24「Proco/RATの製作」


 色々なエフェクターの入力インピーダンスを測定していたら (→ No.11「入力インピーダンスの測定」
RAT2の入力インピーダンスは、カタログ公表値が1MΩなのに実測で245kΩしかありませんでした。

色々調べてみると・・・

まず、RATシリーズは以下の11種類がリリースされていて(present=現行品)

・“Bud Box” RAT 1978
・The Rat 1979-81
・The Rat (ver. 2) 1981-83
・Small Box RAT 1984-88
・R2DU 1984-88
・RAT 2 1988-present
・Turbo RAT 1989-present
・Vintage RAT 1991-2005
・Brat 1997-2001
・Deucetone RAT 2002-present
・You Dirty RAT 2004-present

この他に、HPでは「More information coming soon.」とされていますが、限定復刻生産の
・Limited Edition Reissue '85 Whiteface RAT
があります。(2013年6月現在、発売中)

 また、上記「RAT 2」(LED付のもの)はマイナーチェンジによってさらに数種類に分かれていて
少なくとも自分が所有している「LM308版」と、依頼を受けて修理したことがある「OP07DP版」は
OPアンプだけでなく、基板のレイアウトも回路も異なります。
(現行のRATはこれら2つとはさらに異なります。)

ということで、RAT2から見ていきます。

左がOP07DP版、右がLM308N版。


LM308N版


OP07DP版


ネットで拾えるRATの回路図は初期のものが多く、RAT2の回路図は少ないです。
しかも私が実際に基板で確認した物とは違うものばかりで、完全に実物と一致する回路図は見たことがありません。
ということで、私が実際に基板で確認して起こしたRAT2の回路図をUPしておきます。

rat2_schematic

特に注意したいもののうちの1つがFILTERの後の抵抗器1.6kΩです。。
初期RATもRAT2もネットの回路図ではここが1.5kΩになってるものが本当に多いですが、
私が確認したものは、2台のRAT2と1台のVintage RATの3台とも1.6kΩです。
このことはちょうど5年くらい前?にもここの日記で書いてます。

 (茶青赤=1.6kΩ)

それと、あとで詳しく説明しますが、同じ6Pでもスイッチの使い方(配線)が初期のRATとは違います。
これは、たかがスイッチの使い方なんですが軽視できないことなのです。


で・・・


入力インピーダンスのカタログ公表値が1MΩっていうのは、違う。 という件ですが・・・


「世界のエフェクター大図鑑」での「Vintage RAT」の説明によると

『サウンド面においては、正方形“RAT”と殆ど違いはない
(正確には入力インピーダンスが異なる)が、筐体の外観は著しく異なる。』

と、説明されています。


これだと 「え?RATの種類によって入力インピーダンスが異なるの?」 という話になります・・・


この「Vintage RAT」は「The Rat (ver. 2)」を完全復刻したとされるリシュー(長方形のやつ)で
これも以前借りたことがあるので、現物の基板から回路図を起こしてあるのですが、
確かに入力部分の回路は異なるものの・・・「入力インピーダンスが異なる」とは思えません。


これもネットで拾える回路図や「ネットの回路図のここはこうだ」みたいな情報も間違いだらけで、まるでアテに出来ません。
これもFILTERの後の1.6kΩが1.5kΩになってしまっているものや、入力部分でBIASに落とす1Mオームの出る位置が違うものが特に多いです。
「正しいものを提示したい」という気持ちと、「またネットの回路図が増えて混乱を招くじゃないか」という気持ちが交差しますが
RATについてはネットの情報があまりにもひどい状態なので、
とりあえず、私が実際に基板で確認して起こした「Vintage RAT」の回路図をUPしておきます。

vintage rat_schematic

 さて、正方形“RAT”とは「入力インピーダンスが異なる」ということですが、
回路を見た限り、入力部分での相違点は、「Vintage RAT」に付いている抵抗器が1MΩ1本のに対して
「RAT2」は、2.2MΩ2本の並列合成抵抗で1.1MΩになっています。

 (もっと細かく、片方の2.2MΩがBIASに落ちていることを考慮しても
  BIAS-GND間にある1μFのパスコンが交流的に分圧抵抗の100kΩのインピーダンスを下げることになりますし、
  分圧抵抗の100kΩを計算に入れて2.2MΩと2.3MΩの並列合成抵抗で計算しても、結局は四捨五入して1.1MΩです。)


何故このようにしたのかというと、RAT2ではLEDのON/OFFをする為にスイッチの使い方(配線)を変えたので
OFFの時に入力コンデンサの片端が浮いて「ボツ」というノイズが出ないように
入力コンデンサの片端を大きな値の抵抗でGNDに落としておく必要があり、
それによって元々あった抵抗器と交流的に並列になるので、
元々の1MΩの抵抗値と同じ値にする為に2.2MΩを2本にしたのだと考えられます。

つまりこの回路の変更では、入力インピーダンスが異なるのではなくて、
回路の変更のせいで入力インピーダンスが異ならないように、調整してあるのです。

それに、RAT2の入力インピーダンスが実測で245kΩしかないのはその抵抗値のせいではなく、
その後に付いてるコンデンサーが交流的なインピーダンスを下げているせいなので、
この抵抗器自体の直流的な「1MΩ」と「1.1MΩ」の差が、そのまんま交流的な入力インピーダンスに影響を与えるというわけではないのです。


ということが、分かっているのですが・・・


一応、確認する為に「Vintage RAT」を製作することにしました。



特にMotorola社製とかにこだわらなければ、一般的な部品は常に大量に在庫してあります。
今回はMotorola社から分社化されたOn Semiconductorの2N5458をチョイス。OPアンプは差し替え可能です。

 

測定の誤差を確認する為に「Vintage RAT」と「RAT2」をソケットで切り替え可能にしましたが、
本来の目的が「Vintage RAT」の入力インピーダンスを測定することなので、
スイッチの配線は「Vintage RAT」の通りにし、LEDも付けていません。



ポリウレタン塗装で分厚くカッチカチにしました。



「Vintage RAT」の入力インピーダンスの測定結果は(→ No.11「入力インピーダンスの測定」)にも書きましたが、
やはり実験前に述べた通り、「Vintage RAT」も「RAT2」と同じで、実測で245kΩでした。

ということで、Procoが公表している「入力インピーダンス=1MΩ」というのは、最初から間違え続けてるわけですね。



RATというエフェクターは、個人的にはオリジナルの筐体じゃないと魅力が半減するって思うのと
ある程度歪ませた時の音がブーミー過ぎるというのがあって、好みの音を出すのにものすごく苦労するし
ちょっとこのままでは普通には使えないですね。私は。
ただ、ちょっとモデファイすればブーミーなのとかは消えるので、そういう遊び方をすると楽しいエフェクターかもしれないですね。
今度RATのモデファイの記事でも書こうかな?

あらためてRATを評価すると、

・弱めの歪みで使うならセッティングによっては抜ける音が出て良い。
・真ん中以上に歪ませて使うと低音がボヤけてブーミーになるので好みの差が激しい。
・「VOLUME」は真ん中が基本ではなく、音質にもかなり影響するので、暴れ馬のように扱うのが難しい。

ただ、一度手放してから筐体の魅力だけで買い直してる私に言わせれば、
筐体の魅力だけでも購買意欲が沸くというあたりが、さすが往年の名機だなと思います。

そう。私にとって、RATの魅力の大半は「筐体」です。

2013.6.25



2014.3.12改定 (回路図に記載していた、あまり重要ではない補足説明を一部削除。)

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