「WDエフェクター・システムの製作」
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No.26「WDエフェクター・システムの製作」




これはお客様から依頼を受けて製作した特注品です。デカイです。
納品した際に「HP掲載の許可」を頂いておきながらだいぶ日にちが経ってしまいましたが

WDというブランドのエフェクターが12台あって 「1つにまとめて欲しい」 という依頼です。


ご要望、条件は以下の通りでした。

・12台を1つのケースにまとめる。
・乾電池仕様からAC(コンセント)仕様への変更。
・全てにINPUT端子とOUTPUT端子を付ける。
・VOLUME、SENS等の各種つまみ、及び、ON/OFスイッチ等の増設。


要は使い勝手ですよね。
すべて乾電池仕様なので交換が面倒だし、電池交換を繰り返して配線材が断線してたり
バラバラにあるのをガチャガチャと繋いで組み合わせてとか、そういう問題を解消したいということで。


お預かりしたものがこちらですね。



RED RANGER、BLUE CLIPPER、ORANGE SQUEEZER、YELLOW HUMPER、PURPLE PEAKER、GREEN RINGER
合計6種類で12個です。



まずは物理的に空間に収める為の、ケースの選択とレイアウトの設計から始めました。

お客様との綿密な打ち合わせを行いまして、
元々このような筐体なのですが・・・



中にはこのように基板が収められていまして・・・



お客様の提案から、この筐体の枠を利用して基板を固定するという方向で決定しました。
枠1つで基板を2枚固定出できますので、これをケースの中に6個配置すれば12台分の基板が納まります。

また、当初はこれらに加えてElectro Harmonix4台もあったので(結果的には今回はなくなりましたが)
念の為その分のスペースも空けておくような感じで余裕を持たせることにしました。

ジャックやスイッチ等が干渉しないように計算しながら図面を描いていきます。
私は普段、回路設計やプリント基板の設計ばかりしてますが、メカ(筐体)設計も好きです。





次に、現物を見ながら全てのエフェクターの回路図を起こしました。
いくつかはネットに回路図があったのですが、何故かどれも現物とは全然違います。

どう違うかって、まずネットの回路図だと普通に正電源になってますが
現物はRED RANGERとGREEN RINGERが負電源でした。


なので、全然違うんです。


どうやら時期によって生産国が違うようで、例えばORANGE SQUEEZERにしても

 ・最初期、英国製(音叉マーク付き)

 ・米国、ミュートロン社製

 ・70年代末期、日本製(筐体表面の穴の中にトリマーが有って音量調整可能)

 ・韓国製(WDの文字が入った)

の4つのタイプがあるようです。
当然のごとく、トランジスタも違うし各定数もところどころ違います。

手元にある現物は全て「MADE IN KOREA」なのですが、ネットの回路図は英国製とかなんでしょうね。


さて、正電源は電池スナップの赤の配線を「+9V」に繋ぎ、電池スナップの黒の配線を「GND」に繋ぎますが
負電源は電池スナップの赤の配線を「GND」に繋ぎ、電池スナップの黒の配線を「−9V」に繋ぐので
正電源のエフェクターと負電源のエフェクターは電源を分けなければなりません。
配線の繋ぎ方を工夫しようとしても負電源仕様は正電源仕様と混ぜて使うことは出来ないですね。

つまり、電源を2つ用意するか、両電源を1つ用意するかです。

例えば正電源仕様と負電源仕様ではOUTPUTジャックと電池スナップの配線がこのように異なります。



負電源仕様では乾電池のプラス端子(電池スナップの赤)をジャックのGND(基板のGNDに繋がる)に接続します。
要するに乾電池のプラスをシャーシ(ケース)に繋ぐのです。

100VからVccとGNDを取り出す場合でも配線材の端が「電池スナップ」か「電源」かの違いだけなので
上記のことが理解出来ていれば応用出来ます。

たかがケースの移植でも、今回のように正電源と負電源が混在する場合、もしくは負電源であることに気付かない場合、
上記のことが理解出来ていない人はかなり混乱すると思います。



負電源仕様の例としてRED RANGERの回路図をあげておきます。









内部はこのようになりました。



お客様には大変気に入って頂けましたので良かったです。
私自身も、手間がかかったのと完成後の存在感で愛着が湧いてしまい
自分用にも欲しくなってしまいました。
現物はもう手元にはありませんが、全て回路図を起こしてあるので安心ですね。

BLUE CLIPPERだけOPアンプもので、他はどれもトランジスタ数個の単純な回路です。
私はこのような基本的なトランジスタ回路自体が好きなので楽しかったですよ。
とはいえ、ヘヴィ・メタル好きの私にはやはりトランジスタ数個の回路にありがちなブーミーさというか
低音弦ミュートがぼやけてしまうのでザクザク感は出ませんので、
昔風のブルースとかを弾くような用途に限られるかなぁ。

ただ、個人的にはORANGE SQUEEZER(コンプレッサー)が気に入ってしまいまして、これだけは別格でした。
ブレッドボードで組んだ実験では忠実に再現出来ることを確認してありますので
そのうちちゃんと形にして製作しようかなと思います。

終わってみれば、本当に楽しかったです。
ありがとうございました。



ちなみに今回は組み込まないことになったElectro Harmonix4台ですが、せっかくなのでお借りしました。
これまたレアなものばかりで、Muff Fuzzなんかずっとジミヘン弾いて酔ってました。

Muff Fuzzはトランジスタ版とOPアンプ版があるはずなんですよね。
数年前に回路図からトランジスタ版とOPアンプ版のプリント基板を作って置いてあるのですが
今回、現物にて回路と実際の音を確認させて頂きました。貴重な資料です。

あらゆる角度から舐めるように撮りまくった写真のうちの一部を紹介させて頂きます。
これって空中配線だったんですね〜

Muff Fuzz


MOLE


SCREAMING BIRD


LPB-1


時代が変われば音楽もギターの音も変わりますが、アナログにはアナログの良さというものがありますよね。
デジタル化が進む中で、これだけアナログに触れることが出来たというのは本当に幸せです。

また、古い回路による音は私にとって必ずしも最終目標の音ではないのですが
古い回路には問題点があるわけで、その問題点を解消しようとすることでノウハウを得られるし
ドレミファソラシドというメジャー・スケールを再確認するのと同じように、
しっかりと原点の回路に触れることで自分の設計のスキルもアップすると思います。

先に進む為にも、基本や原点というのはどれだけ多く知識や経験として蓄えておいても損はないですからね。

2014.11.21

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