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No.08「YAMAHA / YTA-95 修理」



今回は修理の依頼を受けました。
YAMAHAのYTA-95というトランジスタ・アンプです。



つまみ。かっこ良過ぎ。



写真で見るより大きいです。



この「250W」という刻印は出力じゃなくて消費電力のことですよね。



出力は機種名が「YTA-95」だからといって95Wとは限りません。
スピーカーが50W×2発なので、出力は90W〜100Wの 「偶数」 といったところです。

調べてみたところ他にもスピーカーが単発のYTA-15A、YTA-25、YTA-45というのもありました。

それにしてもこの出力のアンプで消費電力が250Wとは驚きです。
例えば取説の記載の「主な仕様」によると
「Roland / JC-55」は出力50W(25W+25W)、消費電力40Wで
「Roland / JC-120」は出力120W(60W+60W)、消費電力110Wですから
昔のアンプはこんなに電力の消費が大きかったのかという感じです。



依頼主様は音楽の現場でお仕事をなさっている方で、
前からこのアンプが欲しくてやっと手に入れたとのことですが

『最初は普通に音が出ていたのですが、ものの1時間ほどで各種ノイズがひどくなり、
動作全般も不安定なところが出てきてライブ/レコーディングでは怖くてとても使えない状態になってしまいました。』

とのことです。

しかも、アンプ修理業者さんにいくつか相談したものの、

「トランジスタは無理」
「交換パーツがない」
「回路図もないから年単位の膨大なチェックと時間/費用がかかる」

という感じでどこでも断られてしまったそうです。

ここまで古いとメーカーでも断られるのが普通ですね。

一応私にも修理が出来るものもあれば出来ないものもありますし
お話を聞いただけで最初から無理だと思うものは残念ながらお断りさせて頂くこともあるわけですが
今回のアンプのように古いアナログのものはデジタル・モデリングのようなアンプに比べて
基本的には修理可能という心構えで

・最終的に修理出来なくても部品代がかかってしまうこともある。
・代替部品に交換することで、部品の取り付け方法や音が変わってしまうこともある。

などのデメリットを説明させて頂いたうえで、承ることになりました。
「料金は問いません」的だったこともありますが
「大事に使っていきたい。」という想いが伝わってきたのは大きいですね。



それでは、中を覗いてみましょう。



まずこれ。日本の標準コンセントは100Vですが



使用する電源電圧の切り替えが可能なので、海外でも使えます。



パワーアンプ部分の基板ですね。
エミッタ抵抗と、そのエミッタ電圧を調整する半固定抵抗器があるのが分かります。
あと、ホコリが積もっていて汚れているということも分かります。



2SC783と2SA483があります。コンプリメンタリの励振段増幅用ですね。
それぞれ右側に白いセメント抵抗が見えるのがエミッタ抵抗です。



その上に、放熱器に隠れた2SC1080が見えました。これが最終段増幅用です。



2SC1080はコレクタ損失100Wです。怖いですねー。

簡単に言うとトランジスタは出力が大きいほど発熱して、
その発熱によって劣化していき、限界を超えると壊れるわけですが
これは100Wまで耐えられるということです。
厳密にはこの説明だとちょっと違うんですけど、イメージとしてはこんな感じです。

当然ながら廃番品種ですので、普通はこれが壊れてたら諦めるでしょうね。
まぁどうしてもというと私なら2SC5198あたりを代替品として使いますかね・・・
ただし、パッケージも違うしポン付けで交換出来るわけじゃないので、
私が言ってることを鵜呑みにして安易に「なるほど2SC1080の互換品は2SC5198なのか」などと勘違いしないで下さい。

互換品ではなないものを工夫したり調整したりして、代替品として使うという意味です。



基板はまだまだあります。

アンプの上部にプリアンプ基板やらリバーブユニットやら何やらあります!!

どーん!!



これは今まで見たアンプの中でもかなりしっかり造られている方だと思います。
ギターアンプのブランドとしてどうのこうの以前に、
YAMAHAは楽器部門においても大手メーカーであるということを物語っています。

配線を束ねるのに、焼き豚を煮るかのごとくロープを使っています。
かなり丁寧に手作業しているのが分かります。



焼き豚って、焼き豚なのに煮るんですよね。


また、配線処理が丁寧なだけではなく、本体の内側には予備のヒューズが備えられていました。



作りっぱなしの売りっぱなしではなく、あとのメンテナンスのことも考えられているということが
各所に見受けられるのです。メーカーの誠意を感じます。

色々と勉強になります。



そんなこんなで・・・



ケーブルの束は全てコネクターで外すことが出来て
なんとかプリアンプのユニットを取り出しました。





ユニットには基板が4つあります。
まずこれは1ch側のコントロール基板です。



これはトレモロ基板。



これは2ch側のコントロール基板で、1ch側と同じかな。



で、これがワウの基板。リバーブのドライブもここみたい。



あとはこれ。後ろの面に貼り付いてます。「SIGNAL OUT」用・・・いや、
「SIGNAL OUT」ジャックからの出力に限らず全てこの出力回路を通りますので出力回路の基板ですね。



「SIGNAL OUT」は他の機器の「LINE IN」などの入力へ出力します。チューナーとか繋げられます。


基板が1枚ものだと回路を追うのに大変なんですけど、このように基板が分かれてると楽なんですよね。

でもこれらを見ただけでもうお腹いっぱいですわな。



では、基本的には
「ギターダー様のアイデンティティで満足いく所まで完全オーバーホールしていただければ幸いです。」
ということで、いよいよ修理にとりかかるわけですが、

メールで聞いていた「具体的な症状」が

・ノイズが爆音でトラウマになってしまい以降詳細は確認できていません。
もう一度電源入れたらさらに悪化するのではないかという恐怖心もありここ数日は寝かせております。

・電源投入直後の大きなポップノイズ
・1ch/lowインプットでギター接続後、volumeつまみを上げると「ガー!」「ピー!」という爆音
・EQ周りは大きなガリは最初はなかったのですが、volume不具合で出してからガリが出だしたように感じます。
・リバーブツマミも同様に最初は大丈夫でしたが、volume不具合以降ノイズが出た記憶があります。
・ワウモードにするとは帯域が著しくローカット気味になり、体感音量も半分以下になったのが仕様かどうか気になりました。
・ある程度の音量にするか、小さくても特定低音域でスピーカー/キャビのどこかが大きく共振してブーミーなノイズが出ます。
・2ch周辺/その他にも問題あるかもしれませんがほとんど確認できていません。


という恐ろしい症状なので(笑


電源を入れる前にスピーカーの破損が無いことをチェックし
(注1:実はあとで「見た目では分からなかった不具合」が発覚します)
基板上の部品に焼け焦げているような箇所が無いことを確認し、
VOLUMEのガリを簡易的に即席で改善する為につまみを何度もグルグル回します。

そんな程度の下準備で、まずは初期症状を体験したいという欲求にかられ、
ユニットを元に戻してギターを繋いで電源をONします!

バチッ!!

さすがに電源投入時のポップノイズは大きくてビビリますが、あとはわりと普通です。

ところが・・・

音量を上げようとしたその瞬間、バチ!! バチバチ!!!!

要はVOLUMEの可変抵抗器のガリがひどい状態です。

VOLUMEというのは、もともとフルの音量の信号を
可変抵抗器を通じてGNDに捨てることで音量を0から10までコントロールするものなので
GNDに繋がる部分で接触不良を起こしていると、急に音量がフルの状態になるわけです。

怖いですねぇ(笑

ということで、音量を変えずに一通りの動作確認をします。


YAMAHAのアンプというと音が細くてカン高いイメージでしたが、
このアンプは意外とRolandのSPIRIT-20に近く、音自体は太くてコシのある、しっかりした音です。

私が認める「使える音の出るアンプ」としては合格です。
しかし、確かにワウの音が極端な音痩せというか、おかしいです。
あと95Wにしては音量が小さいような気がします。


ということでだいたい分かったので電源を切ります。

何が分かったのかというと、 「原因は接触不良である」 ということです。



では、作業に入ります。
まず可変抵抗器のカバーを外します。



内部をクリーニングします。



黄色い丸で囲った部分が端子の接触するところで
円形のカーボンの板をグルっと回るわけですが
そこを綿棒に接点復活財を付けて綺麗に磨きます。


ちなみにこの可変抵抗器はパネルに直接取り付けない独特な方式になっています。



全ての可変抵抗器をクリーニングすると、
とりあえず「ガー!」「ピー!」という爆音の類は無くなりました。

簡単に書いてますけどこれ、可変抵抗器1つにつき40分〜1時間かかってます。

まぁこれで音を出しながら不具合を確認していけるので、とりあえずは一安心です。



続いてオーバーホールの作業に入ります。
消耗品である電解コンデンサとトランジスタのほとんど全てを新品に交換します。

今までにも書いてることですが、トランジスタはよく「半永久部品」と言われてたりするんですけど
実際には劣化する消耗品なんです。

いざ「トランジスタは消耗品である」と言ってしまうと人によって意見が分かれるかもしれませんが
トランジスタは電流を流すほど発熱するものであって、その発熱が劣化の原因になります。
具体的な症状としてはhFEが小さくなってしまいます。

絶対最大定格以内の使用でも長時間の使用などの条件によっては著しく特性の信頼性が低下する
といったことはデータシートにも記載されています。

なので、私も最初の頃はトランジスタは半永久部品で性能も安定していると思っていたのですが、
色々と製作や修理をする過程でhFEを測定するうちに、トランジスタは消耗品だということを知るようになりました。

ということで、こちらが今回交換する電解コンデンサです。
この時点ではまだ仕入れていないものもありますので、これ以外にも交換するものはあります。



電解コンデンサはオリジナルのものと容量は当然同じですが
コンデンサって容量が同じでも意外と色んな大きさがありまして、
見た目も考慮して、基板に搭載するにあたってある程度は大きさもそろえた方がいいと思いました。

色々と悩んだ末、主にニチコンのFine GoldとKZを使い分けることで揃えました。



こちらはトランジスタ類です。 互換品も含みます。
この撮影後に追加したものもあります。



個別の詳細は後述しますが、
ちょっと前まではトランジスタは互換品や代替品ならいくらでもあるのが常識だったんですけど
今ではこれら互換品も含めて全て廃番品種になってしまっていて、価格が高騰したり店頭から消えたりしています。

私はべつにトランジスタやOPアンプをコレクションをしているわけではないのですが
色々と製作、実験、修理などをしていくうちに常備在庫が増えていき、
トランジスタだけでも100種類くらいをそれぞれ数十個〜数百個程度在庫しています。

それでもトランジスタ全体からするとほんの一部でしかないわけで、
今後のことを考えると、どこまで在庫をストックしておくかというのは悩みますね。

というのも、外観にこだわらなければ現在主流のチップ・トランジスタで代替できるものも多いからです。
チップなら今でも普通に手に入るわけですよ。
といっても今までの廃番になったTO-92タイプの種類を全てカバーしてるわけではないですし、
パワートランジスタなんかはやっぱりチップでは難しいですよね。

まぁ最近は台湾の半導体メーカーが廃番品のセカンドソースを次々とリリースしていたりするので
もしかしたらそれほど深刻な状況にはならないかもしれないというのもあります。

また、中国ではセカンドソースというよりは「偽物」が多く出回っているので
メーカー名やロゴを無視すればセカンドソースといえるのかどうかを確認したり
色々と世界の状況を常に把握して様子を見ながら対応していこうと思います。



さて、部品を交換していくわけですが、ここで重要になってくるのがハンダ付けです。
製作や修理はハンダ付けの確実性が全てといっても過言ではありません。

コテの手入れ、コテの温度、ハンダの種類による融点の把握、コテを当てる時間、
プリントパターンの剥がれを起こさない注意の仕方、古いハンダの除去、ハンダ後の確認・・・など
常に細心の注意を払う必要があります。

楽器の演奏と違って、慣れてくればあまり神経を使わなくても出来るようになるというものではなくて、
経験を積んで慣れてくるほど、神経を使うようになるものだと思います。

以前、「製作したエフェクターが動作しないので見てもらえませんか?」という依頼があって
診たことがありますが、レアで高価なパーツだらけなのにハンダ付けがちゃんと出来ていない為に
どこもかしこも接触不良を起こしていてお話になりませんでした。

それ以来、ハンダ付けの確実性がいかに重要であるかを訴えかけていく必要があると思うようになりました。

ハンダ付けがちゃんと出来るか出来ないかで、動作するかしないかほどの差が出てしまうのです。


温度調節機能が付いてないコテでも適切な状態を匂いや周囲温度で感じ取り、
熱を加えているハンダや足の内部の様子が透視できるくらいの、

いわば・・・フォースを身に付けなければなりません。

すなわちハンダごてはライトセイバーであり、フォースを学んだ者だけがジェダイの・・・



部品を交換する際には、まずこのようにハンダを綺麗に除去します。
古いハンダや熱を加え過ぎて劣化したハンダはもうハンダとしての機能を有していません。



そして、「いもハンダ」「天ぷらハンダ」にならないように、確実に熱を加えて吸い付かせるようにします。

富士山型が理想です。  (富士山が噴火して形が変わってしまわなければいいのですが・・・)



しっかりとハンダが吸い付くように馴染んでいるかどうか、欠けや空洞が無いかどうか、
1箇所ずつ1つのハンダを終える度に虫眼鏡で四方八方から丁寧に確認します。

ハンダ付けの時間よりも、いつまでもジロジロと確認している時間の方が長いくらいの方が良いです。

また、ハンダ付けする部品の足を曲げるかどうかについては賛否両論あるかと思いますが、私は曲げません。
理論と経験から様々な理由があるわけですが、足を曲げてもデメリットが多いだけでメリットはないです。
このあたりは語りだすと小一時間かかるので割愛します。

部品を交換しない箇所も、ハンダをし直す必要があると思われるところが結構あるので
そういうところはどんどんハンダ付けをし直します。



ではch1側のコントロール基板からいきます。

この基板には2SC644と2SC732が使われていまして
2SC644は入手性や性能などから、互換品の2SC1923に交換することにしました。



で、2SC644のhFEランクは「Y」だと思っていたのですがよく見ると隣に「Q」とも印字されているので

念の為データシートを見ると、なんと2SC644のランクは
R:180〜360、S:260〜520、T:360〜700
ということになっています。

つまり「Y」も「Q」も存在しないはずなのです。
そもそも2SC644-Yというのは仕入れようにも見当たりません。

楽しいですね。

hFEを測定してみます。



hFE=138でした。

周囲温度による変動を考慮しても
どうやらランクRより下の、データシートには載っていないランクです。
メーカー特注のランクというのがたまにあるのでそれかもしれません。

で、今回仕入れた2SC1923-YのhFEはというと、



hFE=137です。

べつにhFEのランクをRにしても問題ないのですが、2SC1923-Yを選択して正解だったと思います。



一方、2SC732-BLですが、こちらは色々な兼ね合いによってランクだけGRにします。
これはhFE=350〜400まではBLとGRのどちらにも該当するし
BLとGRなら実際の動作には影響ないです。





交換前がこんな感じで、



交換後がこんな感じです。



このアンプのトランジスタは全て真ん中の足に黄色いスミ・チューブがはめてありまして
良いことなので同じようにはめておきました。

真ん中の足(=コレクタ)は基本的にVcc(電源)側に繋ぐところです。
昔の家電などはトランジスタの足にほこりが溜まってショートして故障するケースが多かったので
その対策でしょう。
そういえば当HPの「SC-4025の修理」でもトランジスタの足にほこりが溜まってましたね。

やはりこういうところも丁寧な造りですよね。


基板全体を見てみましょう。

ch1基板交換前。



ch1基板交換後。交換と同時にクリーニングもしています。



トランジスタは1つ交換するごとに動作確認しています。


ch2の基板もch1と内容は同じです。

ch2基板交換前。



ch2基板交換後。





次はch1とch2の間にある小さめの基板をやります。
こちらはトレモロの基板になります。



ここにはトランジスタが3つ。

先ほども登場した2SC644の他に、2SC828-Yと



FETの2SK30A-Yが搭載されています。



2SC828-Yは互換品の2SC1815-Yに交換します。



今は、というかちょっと前までは何でもかんでも2SC1815でしたが
昔は何でもかんでも2SC828だったようです。

まぁぶっちゃけた話、今まで出てきた2SC644と2SC732も2SC1815でいいわけですよ。
とにかくNPN型なら2SC1815で、PNP型なら2SA1015で大丈夫なんです。
ランクもYでもGRでもBLでもなんでも大丈夫なんです。

そういう汎用品です。

2SK30A-Yはそのまま新品の2SK30A-Yに交換します。



これもFETといったら2SK30Aっていうくらいの汎用品ですが、
2SK30Aはあまり在庫を置かない販売店が多かったということなのか
他のトランジスタと比べても、
廃番が決まったとたんに販売終了になったお店が続出した気がします。

今までどこの店でも販売してた汎用品だったのに、急に市場から遠ざかった感じです。

既にレア化しているので代替品として2SK117-Yも考えましたが
結局どっちにしても廃番品なので2SK30A-Yにしました。

どちらも一応在庫をストックしてはありますが、
これもいざとなったらチップを代替品にすればいいので
外観にこだわらなければ修理に困ることはないでしょう。


基板上には微調整用に半固定抵抗器が2つありまして、1つは信号レベルの調整で
もう1つはINTENSITYの可変抵抗器の片側に繋がっているので
エフェクトの効果の幅を微調整するところということになります。

これは交換前にエフェクトのかかり具合や可変幅をスマホで撮っておいて
交換後に変わりがないかどうかを比較チェックしましたが
全てのトランジスタと電解コンデンサを交換してもかかり具合や可変幅は同じだったので
特に調整の必要はありませんでした。



交換後です。





さて、次はこれ。
リバーブとワウの基板です。

見てるとワクワクしてくるのは私だけですか?



トランジスタは数は多いですけど全て今まで登場したものと同じです。

・2SC644-Y × 6
・2SC828-Y × 2
・2SK30A-Y × 2

全部で10個です。



古そうなOPアンプらしきものがありますよ。 最初から気になってたんですよね。
汚れを落としてみると・・・「AN274 MATSUSHITA」とあります。



これはOPアンプではなくてオーディオ・パワーアンプICですね。
1Wなのでラジオや無線機のスピーカーを鳴らせる程度のパワーアンプです。
ミニ・ギターアンプとかもこれで製作出来ます。

この回路ではリバーブのドライブ用に使われていますが、
私なんかはラジオや無線機を製作するのにこれと同じ類のLM386N-1というICをよく使ってます。

とにかくトランジスタ回路の設計が出来ない人でも大丈夫なくらい便利なICですので
設計の楽しさというのは無いのですが、ただただ便利です。

AN274は当然ながら廃番品ですけど、探せばまだデッドストックで出てきますね。
まぁこれは消耗品でもないし交換の必要はないです。


あとは調整用の半固定抵抗器が3つ付いてます。

こういうやつ。



これは左のやつがバイアス調整用で、真ん中のがリバーブのかかり具合、右のがワウの調整用でした。
これらはトランジスタを交換したら再調整が必要になります。


この、コンデンサが固定されていたガムみたいな接着剤を取り除くのに必要なのは・・・



「時間」と「根気」です。



リバーブは昔ながらのビチャビチャしたサウンドで、
私にとっては「ベンチャーズ・サウンド」っていうイメージです。
スプリング・リバーブってこのようなビチャンビチャンのやつとそうでないやつに分かれるんですよね。

私はこの大まかに2つに分かれる特徴の原因というか、ビチャビチャになってしまう原因が
「スプリングが劣化して伸びてしまうこと」にあるのではないかという気がするのですが、
それは同じものを2台所有しているRolandのSPIRIT-20のリバーブのかかり具合に差があることについても
「スプリングの伸び」が関係しているのではないかと思っているのです。

スプリング・リバーブについては
ただ単に「個体差が大きい」というだけで済ませるのも納得がいかないというか
じゃぁその個体差はどこからくるのかというのを検証しようしようと思いながらまだやってないので
劣化による伸びやスプリングの個体差そのものが原因なのか、ドライブ回路に原因があるのか、
あと元々のスプリングの長さについても「長いほどビチャビチャするのかどうか」も含めて
そのうちに検証しようと思います。



また、RolandのSPIRIT-20のリバーブはスプリングが10cmでも温かく深くかかりますが、
別のアンプで同じ10cmのものでもショート・ディレイのようにしかかからないものもあります。

奥が深い世界ですよね。



■■【リバーブのかかり具合の調整】■■

そんなこんなで、このへんは依頼主様にもお話をして

「素直なクラシカルピチャピチャリバーブは大歓迎です。」

という方向性のお返事を頂いているので
この「クラシカルビチャビチャ」を尊重して丁度良いと思うところに設定しておきました。

といってもこれは微調整に過ぎませんので、元々のかかり具合のままという感じです。


■■【ワウの調整】■■

ワウの調整は「かかるポイント」と「かからないポイント」があるだけなので
かかるポイントに合わせるだけです。


■■【バイアス調整】■■

これはこの回路の増幅部分のバイアス調整になりますが、音だけ聞いても判断できませんので
オシロスコープを使って波形を観測しながら調整します。

デスク前面に備え付けてあるいつものオシロスコープを引っ張り出すのがあれだったので
ハンディ・タイプの簡易的なやつを使いました。


調整前・・・波形の上下が非対象になって崩れています。



調整後。



これはモードが大雑把なので細かい周期を調整したりするには不向きですけど
このような波形の観測程度ならまぁ使えます。



というわけで、交換と調整が完了しました。



こっちからの眺めも好きかな。







さて、修理・オーバーホールを開始してからここまででもう何日も経ってるわけですが、
この基板が終わったところで音が安定してきてることに気付きました。
バイアス調整とかの前から安定してたので、
どこかのハンダが接触不良っぽかったのを交換等の作業で一緒に直してたのだと思います。

できれば「ここのハンダが接触不良だった」というのを確認したかったですけどねぇ。


しかし、ここで、ある重大な事実が発覚するのです・・・


上の方で (注1:実はあとで「見た目では分からなかった不具合」が発覚します) ってありましたよね?

スピーカーのウーハーに触れてみたら、片方が振動していないのですよ!
なんと、片方のスピーカーしか鳴ってなかったのです。 ずっと・・・

片方でも50W分の音は出ますし・・・

ワナワナワナワナ・・・・


実は少し前に依頼主様から、

「ある程度の音量にするか、小さくても特定低音域で
スピーカー/キャビのどこかが大きく共振してブーミーなノイズが出ます。」

「ch1/Low、EQ12時フラット、ボリューム9〜12時で6弦の3〜10fの単音弾きで大きな唸りが出た記憶があります。」

と言われていて、でもこちらではそれが確認出来なかったんですよ。
電源のハムノイズはまた違う現象のようですし。

で、依頼主様の方でも色々とお調べになって
ギターアンプの共振ノイズが出る場合の対処の仕方を公開してるサイトを紹介してくれたりして、
でも私も「もしそういう対策が必要ならYAMAHAの設計を否定することになる」みたいに疑問を抱いたり、
と、まぁそんなことがあったんですね。

おそらく、経年劣化や不良時の「ビーーー!」とかで
どこか端の方でウーハーが剥がれているんだと思います。
目で見て探しても分からないんですけど、それが最初のうちはまだ完全に剥がれてなくて
バタバタとかビリビリとか鳴ってたんだと思います。

で、私が音を出した時には既に完全に剥がれて音が出ないから、共振ノイズすら出なくなったと。

そもそもスピーカーが端子ではなく、ハンダでがっちり固定されてるので
個別にスピーカーを切り離して音出しチェックしてみるということをしなかった、私の怠慢ですね。

「結構な音量で普通に鳴ってたし、両方鳴ってると思うよなぁ〜。分かんないよな〜」
なんて思いますが・・・

最初のチェックが甘かったということです。すいません;


で、鳴ってないんですが、厳密に言うと、単体でチェックすると小さな音は出てます。
「正常なスピーカーだとうるさいくらいの音量」 で、このスピーカーを繋ぐとかなり小さな音で鳴ります。
ゆえに、2発同時に鳴らすと完全にかき消されて全く鳴ってないのと同然という状態です。
空気が漏れてしまってウーハーが全く振動しない状態です。

つまり小さな音でも鳴るということは、断線ではなくてどこかが剥がれてるということだと思います。
ただ私はスピーカーについては「目に見える明らかな断線」しか修理できません。
コイル内の断線や、ウーハーやコーンの割れや剥がれだと私には手に負えません。

写真左が駄目なほうです。



ということで依頼主様に連絡してスピーカーを交換することにしたわけですが、
スピーカー選びもあれこれ大変でした。

「12インチ、8Ω、出力50W以上」という条件でメーカーも種類もいろいろあるんですけど、
メーカーごとに取り付けネジの穴のピッチが異なるし
スピーカーの目の前にトランスとパワーアンプ・ユニットがあるので、寸法がギリギリなのですよ。


で、やっと選んで注文したのがこれ。


どどーん。



Jensenの「C12N-8」です。
12インチ、8Ω、50W。



でもYTA-95のネジ穴のピッチが290.5mmなのに対して
Jensenのネジ穴のピッチが293.5mmなんですよ。

これでも他のピッチに比べて一番近いのですが・・・

(参考)
・YTA-95=290.5mm
・Jensen=293.5mm
・Selestion=297mm
・Eminence=294.4mm

両側で3mm、片側で1.5mmの差があるわけで

しかも普通は多少のピッチの違いにも対応出来るように長穴になってるのに



Jensenのネジ穴は融通の利かないまん丸の穴なのです!



なので、棒ヤスリで丁寧にちまちまとジーコジーコやってネジ穴を広げました。
削るのはほんのちょっとなんですけど硬かったです先生・・・

ギリギリでトランスに干渉せずに無事に取り付けられました。



あと、元々は端子がハンダ付けだったのをコネクターにしました。

しかしこのような並列配線なので  (8Ωの並列なので4Ωということですね)



裏から見て右側のスピーカーは1つの端子に1本の線ですが



左側のスピーカーは1つの端子に2本ずつの線が来てるわけです。



2本の線をまとめるとコネクター側の端子のサイズに対して太過ぎて合わないので
コネクター1個につき線1本にしたいわけです。

端子が+と−で2個ずつ付いてるので線を4本のまま端子を4つ使うのでもいいと思いますが
配線をシンプルにする為に少し手前で+と−を1本ずつにまとめました。
8Ω並列配線であることには変わりありません。



ちなみにスピーカー2発のタイプにも色々ありまして
例えばRolandのJCシリーズなんかはパワーアンプが2回路入っていて左右に分離されていて
アンプ1つに対してスピーカー1つなのでこのような並列配線にはなっていませんよね。



うーん、なかなか大掛かりな作業が続きますが、
いよいよプリアンプのユニットの中の最後の基板、出力基板です。

トランジスタ2個と電解コンデンサ4個を交換します。



うん、まぁこれは小さいし、部品も少ないし。

さっさと・・・・と思ったその矢先・・・


ネジが硬過ぎて回らず、完全に舐める。



なので慎重にネジ自体の中心に下穴を開けてから「逆タップ」を切って、取り外す。(神業)



今度は反対側もネジが硬過ぎて、折る。  (心も折れる。)



埋もれたネジを掘り出し、



木くずを削って



補修する。(神業)



ギターのエンドピンのネジ穴が緩い時とかもそうですが、
木の穴を補修する際は木くずと木工用ボンドを混ぜて詰めます。

やや山なりにしておいて乾いたらヤスリで平らにしますので
乾くまでの間、そばにあったジャックを接点復活材で綺麗にします。(息抜き)





結局ネジ4本外すのに、休憩込みで3時間くらいかかりました。



トランジスタは最初の頃にも出てきた2SC732が2個です。



チューブラ型(横置き型)コンデンサ。
元が35V/1000μFのところを50V/1000μFにしてます。



耐圧は大きい分には問題ありませんが
メーカーのアンプは全て適材適所の耐圧に分けていて
なるべく余裕を持たせないようにしていることが多いです。

ここは24Vの電圧がかかるところなので35Vあれば充分なのですが
専門書などの説明では一時的に高い電圧がかかる場合もあるので
本来の電圧の2倍の余裕を持たせた方が望ましい、みたいなことが書かれていたりします。

我々の感覚だと100μFくらいまでならかかる電圧が9Vや15Vでも
入手性などの面もあって耐圧25Vや50Vを使うのが一般的ですし余裕があって安心なのですが、
メーカーはそこを9Vのところには耐圧10V、15Vのところには耐圧16Vといったように
なるべくギリギリに合わせてきます。

電解コンデンサには「容量が大きいほど劣化の度合いも大きい」という性質があって
「耐圧が大きいほど長期間放置した場合の漏れ電流が増大する」という性質もあるので
厳密にいえばメーカーの対応は正しいのですが、
どうしても我々は「耐圧が大きいほど余裕があって安心」と考えます。

どちらも正しいと思いますし、定格電圧を超えて使うとかさえしなければ
実際には「明確にそれらが原因といえる実害」が出ることはまずないでしょうけども
自分なりによく考えて選定すべきだと思います。

例えば、現在は耐圧や容量が大きいものでも昔に比べて小型化されていますので
そもそも、わざわざここだけチューブラ型にする必要もなかったりします。



さて、

部品の交換を終えたら新しいネジを用意して



取り付けます。



これで、プリアンプ・ユニットの修理とオーバーホールは全て完了です。
この他にまだパワーアンプ・ユニットがあります。





これがパワーアンプ・ユニットです。



トランスが汚いので・・・



錆びを落として塗装します。



電解コンデンサは全て交換します。



ただ電源用パスコンの2200μFをなるべく同じ大きさにしようとあちこち探し回ったのですが
どうしてもサイズが小さくなるものしかなくて、
コンデンサの専門店で聞いてその場でメーカーに問い合わせてくれたりもしたのですが

「昔より性能も上がって小型化されてるので同じサイズのはないです。これで大丈夫です。」とのこと。

逆に、どうしても大きさだけを優先させるなら
音響用でもなんでもないデッドストック品の3万いくらもするブロック・コンデンサとかなら見つかりましたが
ベストな選択とは思えません。

ということで、 80WV/2200μF 35mm×82mm から 100V/2200μF 22mm×50mm へ交換することにしました。
径が22mmだとバンドが合わず、22mm用のバンドというのはどこの店にも無かったので
取り付け方法を工夫しなければなりません。






すると、ここらへんの作業をしていた時に、

依頼主様から追加で 「改造の依頼」 が来ました。


『ch1側の入力ジャックが「HIGH」と「LOW」の2つあるうち
上の「HIGH」を「BrightスイッチをONにしたような状態」に変更するのと、
ch2側を丸ごと取り払ってそこに「周波数帯域の異なる2種類のパラメトリック・イコライザー」を装備して、
パライコ1の周波数帯域が100Hz〜1.6kHzで
パライコ2の周波数帯域が500Hz〜8kHzで
「入力ジャックのHIGH」を「パライコ1のカーブの切り替えの選択スイッチ」に変更して
「入力ジャックのLOW」を「パライコ2のカーブの切り替えの選択スイッチ」に変更して
「VOLUME」を「パライコ1の帯域選択」に変更して、「BASS」を「パライコ1のブースト/カット」に変更して
「MIDDLE」を「パライコ2の帯域選択」に変更して、「TREBLE」を「パライコ2のブースト/カット」に変更して
「T(高域強調) / NORMAL / U(低域強調)」のトグルスイッチを
「パライコ1-ON / パライコOFF / パライコ2-ON」のトグルスイッチに変更したいのですが、出来ますか?』


といった内容でした。

しばらくメールのやりとりをしながら機能を吟味して
「パライコ1」と「パライコ2」を直列のセットにして「2パライコ」とし、トグルスイッチについては
その「2パライコ」の位置を元々の3バンド・トーンの前と後で切り替えるのと「2パライコ」をOFF、の
3通りで切り替える「pre-ON / パライコOFF / post-ON」にするということで、
だいたい上記の要望を全て叶える感じの方向性に決まりました。

オーバーホール済みのch2の基板は不要になるので依頼主様の方で「オブジェ」にすることになり(笑
ch2の基板のあった場所に新たに専用設計するパライコの基板を挿入することにしたので
ここで一旦、作業は中断して回路設計やプリント基板のパターン設計をすることになりました。

このページはこのまま修理・オーバーホールのページとしてまとめて、「改造」のページは別に設けることにします。







パワーアンプ・ユニットの続きです。

とりあえず、

こういった汚れや・・・  うへぇ。



こういった汚れを・・・



ピカピカにして・・・  おぉぉ。



ここも綺麗にして・・・



ニヤニヤしながらベーク板を加工して・・・



パッチーーーン! 取り付け!



お前たち、頼んだぞ!!  ドーン!




コンデンサは樹脂用の接着剤で固定してあるので、強引に外さない限り抜けませんが
足をこのように丸めて端子にすることでさらに抜けにくくなり、配線もしやすくなります。



「端子を丸める」というのはオーディオ・パワーアンプの製作の本で覚えました。
実用的な知恵は積極的に吸収して取り入れていきましょう。




電解コンデンサは全て交換しますが、
ここのトランジスタはレアなものばかりで代替品に交換してしまうのはもったいないものばかりなので
8個あるトランジスタのうち交換するのは1個だけにします。

見るだけ見ましょう(笑


まずこの2SC783と2SA483は交換しません。



2SC1080が2個。これも交換しません。



2SA672が2個。



これは一般的な汎用品の2SA1015が互換品で
2SA1015はウチでも常に在庫しているので今すぐにでも交換出来るものなのですが、
この2SA672はデータシートも出回ってないものなので、ありふれた2SA1015なんかに交換してしまうのは
あまりにももったいないので交換しないでおきます。

そして、その間にあるのが・・・

2SC484。
これもこのままにしておきます。見慣れないヒートシンクが付いてます。




交換するのはこの2SK30A-Yだけです。上の方でも登場してますね。新品に交換します。




交換終了です。  キラーン!



キラキラキラーン!



プリアンプ・ユニットから始まってここまで、思い返せば長い道のりでしたが、
これでパワーアンプ・ユニットも全て完了です!





最後に調整です。

基板の真ん中辺りに手で回せる半固定抵抗器がありますので
それでパワーアンプのアイドリング電流を調整します。

長方形の白い抵抗器が0.22Ωのエミッタ抵抗で、この抵抗器の足が裏側にあるのですが
うまい具合に、基板の表側でエミッタ抵抗の両端にテスターを当てられるようになっています。



このアンプは100W近くあるのでアイドリング電流を20mA〜50mA流すとして
エミッタ電圧を10mVにすれば

V=R×I

I=V÷R

I=0.01V÷0.22Ω=0.045mA(45mA)になります。


また、エミッタ電圧を5mVにすると
I=0.005V÷0.22Ω=0.023mA(23mA)になりますので、
まぁエミッタ電圧を5mV〜10mVにしておけば良いでしょう。


とりあえず10mVにしておきました。



これは温度変化に対して反比例しながら電流の量を自動調節して熱暴走を防ぐものなので
電源投入時の周囲温度等によってこのエミッタ電圧は多少変動しますが、
とりあえず2時間くらい連続使用してきちんと制御して安定していることを確認しました。



本来ならばこれで完了なのですが、今回は先述のように追加で改造の依頼がありましたので
このまま改造の作業に入ります。


続きは 「YAMAHA / YTA-95 改造」 で!!



2015.12.24 作業終了
2016.1.21 UP

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