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No.10「Maxon / GX20 解析・修理」


Maxonの20Wギターアンプ「GX20」です。

かなり以前、リバーブ・ユニットとスピーカーを目当てにハードオフでジャンクを入手したものです。
NORMAL側入力ジャックのネジ部分が割れてるだけで、音は普通に出ました。



部品取りのつもりだったのが、意外に音が良くてそのまま保存してました。
まぁ私の言うところの「音が良い」にも色々と種類がございまして
これの場合は、

「コシと張りのあるしっかりとした芯のある音でクセの無いクリアー・サウンドが出て
 低音もしっかり出てノイズがゼロ。」

という意味です。

20Wにしては小柄で、箱のサイズだけで見ると10Wアンプくらいの大きさです。
普通は箱が小さなアンプだと「中音域が持ち上がった軽いトーン」になることが多いのですが
どういうわけかこれは、ちゃんと大きな箱で鳴らしたような安定感のある音が出ます。

音だけ聴いていると、とてもこの小さなサイズだとは思えないので
もし箱の鳴りも含めて全体的にこういう音になるように設計したのであれば、感心します。
電子回路の設計だけで済ませずに、箱で鳴らして音を確認しながら改良を重ねたような印象です。

あくまでも印象ですが。

1つだけ残念というか惜しいところは
リバーブがショートディレイっぽくていわゆるドラム管サウンドなところですね。
無いよりは全然マシですけど。

あとは、いかんせん小型なので存在感がどうも乏しくてメインで使おうという気には至りません。
まぁ見た目から想像していた音よりも実際の音はとても良かったという話ですね。

回路が簡単なので解析して遊ぶには丁度いいと思います。



古いアンプにしては基板がとても綺麗な状態でした。



4桁シリアルの「JRC4558D 艶あり」



2SK30Aと2SD667



2SB647



見慣れたお決まりの部品ばかりで、特にこれといって珍しい部品はありません。
回路図を起こしておきました。とりあえずパワーアンプ部分です。



温度補償回路がトランジスタ方式ではなくダイオード方式です。勉強になりますねぇ。

エミッタ抵抗の両側がそれぞれ「CH.6」と「CH.1」のピンに該当していて
そこにテスターを当ててエミッタ電圧を測定することが出来ますので
「VR101」の半固定抵抗器でアイドリング電流の調整が出来ます。

訳があってこの写真を撮影した時は最小に絞ってあります。



回路図の「VR101」の上に直列に並んでいるダイオードがが温度補償用のダイオードです。


ところがですね、どうやら今回写真を撮影する時にやっちゃったんですよ。
温度補償用のダイオードがシャーシにネジ留めされているのですが、根元から配線がブチ切れてました。



前に撮っておいた写真がありました。
ボケてますが元々はこのように線が繋がってました。



気付いて良かったですよ。すぐに直さないとです。

両側にあるのが出力段のパワートランジスタ2SD526-Yです。
コレクタ損失30Wで、20W〜25Wのアンプの出力段に最適なトランジスタです。

こういうトランジスタは既に全体的に廃番で同じものは入手困難かと思いますが、
現在でも入手可能な2SD313や2SD880が代替品として使えますし、2SD880などのセカンドソースも出てきたので
このクラスのギターアンプの修理や製作に困ることはもうないと思います。





では・・・

本当は解析するだけのつもりだったのですが、線が切れちゃったので修理します。
根元から足がもげてしまった温度補償用ダイオードがこれです。



端子が無くて本当に根元から切れてしまっているので、もう使えません。

シャーシにネジ留め出来る便利なこのモールド表面には「22B」と表記されてますが、
データシートも見つからないし、この形のダイオード自体見つからず
どう検索しても情報が出てこないので、同じものを仕入れるのは無理というか、諦めます。

要はダイオードの温度特性を利用するだけなので、ダイオードなら何でもいいのです。
基板の印刷を見たところ3本直列っぽいです。



なんとか根元の部分にテスターを当てて測定したら右側がカソード側で順電圧が1.458Vでした。
ダイオード1本の順電圧が0.6Vだとすると2本か3本分ですね。

ということで自分でダイオードを用意するわけですが、
シャーシーにネジ留め出来るように、パワートランジスタの2SC3421を使うことにします。
トランジスタ内部の「ベース - エミッタ間」のダイオードを利用するのです。



別に2SC3421である必要はありません。
ただ単に、私は前に自分でCDを聴く用にオーディオパワーアンプを製作した時に
これと同じくダイオードによる温度補償を採用していて、たまたまその時に使ったのがこれだったので。

選んだ理由は、ネジ留めしやすいということと入手性が良かったというだけのことです。


とりあえず2個で順電圧が実測1.26Vになります。
3個だと1.8Vを超えてしまうので、様子をみて2個で制御しきれなかったら3個にします。

アロンアルファで熱接合させて、ベースとエミッタを繋ぎ、配線し易いように足の先端を丸めます。


作品名 「踊るタコ」 です。




タコをセットしました。



先ほどの半固定抵抗器の写真が最小にしてあったのはこの調整をしている時に撮影したからです。

最初にアイドル調整をする時には、いきなり電流を流し過ぎて熱暴走してしまうのを避ける為に
必ず半固定抵抗器を最小にしたところから調整します。

しかし半固定抵抗器をいっぱいに回しても電圧が全く出ません。
ギターは普通に鳴るのですが、アイドル電流が流れていないことを意味します。



音も出てるし、熱暴走もしないのでこれでいいんじゃないか?と思っちゃったりもしますが
やはりちゃんとアイドル電流を流して調整しなければなりません。

ダイオードの順電圧が1.458Vから1.26Vに下がってしまったことにより
半固定抵抗器での調整可能範囲から下側に外れてしまったということです。

すなわち、もう1本ダイオードを追加するか、抵抗値を増やすか、です。

試しにトランジスタをもう1個追加してみたところ、今度はみるみる熱暴走を始めたので
やはり3本で1.8V超えは危ないと。

で、もし3本にするなら逆に抵抗値を減らすことになるわけですが
それだと2度手間なので、抵抗器を追加することにします。

もちろんそれで制御しきれなければ3本にして抵抗値を減らすことになります。

5kΩの可変抵抗器を仮付けしてエミッタ電圧が出てくる値を調べたところ
200Ω〜260Ωあたりが丁度良かったので、220Ωの抵抗器を追加することにしました。



電圧が出てきました。



今とりあえずこれはエミッタ電圧が4.5mVですので、
0.47Ωのエミッタ抵抗が取り付けられていることから、0.0045V÷0.47Ω=0.0096A
エミッタ電流、すなわちアイドリング電流が9.6mA流れているということです。

エミッタ電流を10mA流したい場合は V=0.47×0.01 ですので、エミッタ電圧を4.7mVに設定すればよいし、
エミッタ電流を20mA流したい場合は V=0.47×0.02 ですので、エミッタ電圧を9.4mVに設定すればよい。

ということになるわけですが、電流を多く流しても熱暴走せずにちゃんと制御出来るかどうかを試します。


2mV・・・・ 安定

4mV・・・・ 安定

10mV・・・・安定

20mV・・・・2分経過で22mV、4分経過で20.9mV、5分経過で21.4mV

40mV・・・・30秒経過で41.2mV、1分経過で36.7mV、3分経過で35.8mV

80mV・・・・30秒経過で86.3mV、1分経過で87.3mV、2分で88.7mV、3分で85.4mV、4分で85.3mV、5分で85.2mV


流す電流が多くなるほど変動するものの、熱暴走はせずに安定してゆくのが分かります。
ということで全然大丈夫そうですので、エミッタ電流を10mA流すべく4.7mVに設定しておきました。

最終的にこうなりました。ダイオード2本+220Ωです。



しばらく演奏してエミッタ電圧が安定していることを確認して完了です。

2016.3.1

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