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No.12「ギター・アンプ修理 Marshall / Lead12」


ふと、カーク・ハメットが使ってるこのアンプが欲しいと思いまして・・・


やっぱ凄いもんですねぇ、アーティストの影響力っていうのは。

なんならカークが座ってるその椅子も欲しいのですが。





「Marshall 小型アンプ」で画像検索して機種名を調べてみたらすぐに見つかりました。
便利な世の中ですね。


「Marshall Lead12 (5005)」 という12Wのなかなか評判の良いアンプでした。

チューブアンプで有名なあのマーシャルがトランジスタアンプで評判が良いだなんて、
なんだか面白そうじゃないですか。


マーシャル初のトランジスタアンプということで、気合を入れて製作したようです。
「キャビネットの木の材質」も「Marshallのロゴ」も大型スタックアンプと同じものを使用していて
このキャビネットの大きさにしてはいささかアンバランスなほどMarshallの文字が大きいのですが、
逆にそれがマーシャルのブランド力をアピールする形となって好まれていて
12Wにしては重量感と存在感と高級感に満ち溢れています。

基板から箱に至るまで丁寧な作りで、スピーカーはCELESTIONの10インチ「G10D-25」
製造は全て英国製というプライドで1983年から1991年まで販売され、発売当時の定価は49,000円。
(追記:1982年製のPシリアルの存在をしました。)
同じクラスの他のアンプに比べてかなり高額な価格設定で「高級品」の風格。

発売当初はあまりの高額ゆえにそれほど普及しなかったようですが、
トランジスタアンプでありながら「JCM800のマーシャルサウンドそのものの音がする」ということで
「リトルJCM800」と呼ばれて次第に話題になっていき、多くのプロからも絶賛されている名機です。

JCM800といえばNWOBHM全盛期の80年代HR/HMシーンを代表するマーシャルの代名詞的な機種で
マイケル・シェンカーをはじめ多くのギタリストが使用してきたアンプです。

生産終了となってからもその人気は衰えず、一時期はかなりの高額で取引されていたようです。
私はその「一時期の高額」というのがいくらくらいなのかは存じませんが、
2016年現在の価格相場はだいたい9,800円〜29,800円くらいで、価格に差があります。
ヤフオクより楽器店の方が高いですし、状態の良い「初期もの」などは高くなります。


製造時期によって「初期」「中期」「後期」に分かれ、基板や音が異なります。
ネットの情報では、シリアル番号にあるアルファベットによって製造年が判別出来るということで

S=1984年、T=1985年、U=1986年、V=1987年、W=1988年、X=1989年、Y=1990年、Z=1991年。

というのが一般に出回っていますが、「幻の'R'シリアル」と呼ばれているものがあって
私も何度かヤフオクでその存在を確認していますが、
内部のステッカーに記載された製造年月日にてRシリアルが83年製であることも確認しています。

(追記:1982年製のPシリアルの存在をしました。)
よって、

P=1982年、R=1983年、S=1984年、T=1985年、U=1986年、V=1987年、W=1988年、X=1989年、Y=1990年、Z=1991年。

ということになると思います。



製造時期による音の違いをネットで検索すると、

「初期」 : 中域に芯のある太いサウンド

「中期」 : ちょっとドンシャリ感が強い

「後期」 : 若干歪みが強くなっている

とのことですが、
具体的にどこまでを「初期もの」と呼ぶべきかは定かではありません。 
どうやら以前までは有名なLead12のコレクターさんがいらっしゃってHPもあったようですが
現在は閉鎖してしまっているとのことなので、色々と自分で調査するしかありません。

基板から判断するとTシリアルまでは基板上の部品が同じで、Vシリアルから基板上の部品が変わってきますので
TシリアルかUシリアルまでは「初期もの」と呼べると思いますが、
今のところUシリアルについては基板が確認出来ていないので判断しかねます。

・85年〜87年製の物(T、U、Vシリアル)はスピーカーのサランネットの色が黒から枯れ草色に退色するとの事ですが、
 全く退色していないVシリアル(87年製)も見たことがあります。
・Vシリアル以降、バイアス調整用の半固定抵抗器が470Ωの抵抗器で固定になり、抵抗器の外観が変わります。
・Wシリアルまではスピーカーの配線が端子にハンダ付けで、Xシリアル以降はファストン端子方式になります。
・Xシリアルからは基板自体が変更されて部品のレイアウトも変わり、BOX型コンデンサが全てアキシャルリードに変わり
 ヘッドホンとライン端子が別々になり、INPUTジャックのHIGHとLOWの配置が左右で逆になり、
 スピーカーのCELESTIONのラベルのデザインが変わり、若干歪みが増します。
・Zシリアルは箱の形が今までの長方形から縦に短く変更され、正方形っぽくなります。

シリアル別に分類するとこんな感じでしょうか。
ちなみにMarshallでは数字と見間違えやすい「O」や「Q」はシリアルナンバーに使われていません。

「初期」 : P、R、S、T

「初期or中期」 : U

「中期」 : V、W

「後期」 : X、Y、Z



他にも色が白の限定カラーや、Reverb付きの「Reverb12 (5205)」や
スタック・タイプ(3段積み)の「Lead12 (3005)」もあります。

ここまで調べていくとカーク・ハメットの写真のやつは 「後期型ではない」 ということが分かります。
っていうか、こんなに調べてたらコレクションしたくなっちゃうでしょ!



ということで、ネットで探してヤフオクで入手しました。 Wシリアルです。
なんかカーク・ハメットの写真を見て想像してたのよりもどっしりしていて大きいです。






これは「Wシリアルですよ」ということで撮ったのですが、



「INPUT」はHIGHとLOWの2つがあって複数形なので「S」が付いている、ということに気付きました。
確かに複数あるものなので複数形の「S」が付いてて当たり前なのですが、
国産のアンプだと複数形の「S」なんてなかなか付けないじゃないですか。



そんなところにも英国製を感じました。


消費電力は6Wです。ちなみに私が見たRシリアルの消費電力は5Wでした。




これには主電源110Vと記載されていますが、105Vと記載されているものも見かけます。

あとは 「危ない!やめろ!」 ということが書いてあります。




CELESTIONの「G10D-25」






音を出してみましたが、ガリもなく普通に音が出るものの
普段使ってるアンプのトーンコントロールとは使い勝手が極端に異なる為、
慣れてないからでしょうけどとても3バンドトーンの調整が難しく、思うように音が作れません。


この「使い勝手の悪さ」で、過去の記憶が蘇ります・・・


実は私はトランジスタアンプが好きだと言ってますが
ギターを始めてすぐの高校生の時に音楽部の部員らで共同でマーシャルの50Wの2段積みを購入して
部活動として学校でバンドの練習をしていた時はいつもマーシャルを使っていたんですね。
今思えばそれはJCM800でした。

ギターを始めてすぐにJCM800を購入して3年くらい常用していたのです。

もちろん部活動以外にもあちこちのスタジオで練習していたので
JCM800の個体差や50Wと100Wの違いなども体験していましたが、
そうやっていくうちに、JC-120をエフェクターで歪ませた方がいつでもどこでも安定して
自分の思う音が出せるということも覚えていったわけです・・・

その頃のマーシャル(JCM800)の扱いにくさっていうか、
キンキンとカン高くてトレブルを「0」にしなきゃならないような
極端なセッティングを強いられるあの使い勝手の悪さを思い出しました。

ということは、このLead12はJCM800の音が出ると言われているけど、それは本当だな、と。

ただ、「ヘヴィ・メタルをやるには歪みが足りないからブースターやオーバードライブが必要」とか
「フルにしてもクランチ程度しか歪まない」というレビューとは全然違って
GAINを8以上にするとかなり歪みます。

感覚としては、歪みが強くなったとされる「後期型」のようなイメージです。
でもその歪みはとてもブーミーで低音がボヤけるので、とても使える歪みではありません。

後期型でもないのにもしかして改造されてる? ・・・と思い、

もし改造されててもオリジナルに戻せるレベルであることを願いながら、基板を確認することにします。


ハンダ付けされているスピーカーの配線を外さないと、途中までしか引き出せません・・・




1988年製。 5月18日っていうと友達の誕生日だ。おめでとう。 あとは達筆すぎて読めません・・・




基板はいいですよ! 綺麗です! でも・・・




全て、オリジナルとは見た目からして全然違う可変抵抗器に交換されています・・・
しかもVOLUME以外は全て抵抗値も違います。



オリジナルの可変抵抗器の抵抗値は

GAIN:22k(B)、VOLUME:1M(A)、TREBLE:22k(B)、MIDDLE:4.7k(B)、BASS:22k(B)

ですが、交換されていた可変抵抗器の抵抗値は

GAIN:50k(A)、VOLUME:1M(A)、TREBLE:50k(A)、MIDDLE:10k(A)、BASS:50k(A)

でした。

まぁマーシャルのつまみはガリが出やすいと言われてますし、交換されてること自体は仕方ないとしても

これは見過ごせません。

「歪むように改造したつもり」なのか「こういう修理になってしまった」のかは定かではありませんが、
確かにGAINが50kに増えてAカーブなら後半でグーンと抵抗値が増えるので途中までは22kと変わらずに
後半部分でグーンと歪むということにはなりますよね。

ただ、私はまずノーマルの状態にしたいというのがありますし、
ちゃんとしたマーシャル用の可変抵抗器がリプレイス品で仕入れられるので


まずはノーマルに戻します。  話はそれからです。



とりあえず全てオリジナルと同じ抵抗値のマーシャル用リプレイス品を仕入れました。
すぐに別のシリアルナンバーのやつも入手する予定なので、2台分です。 コレクションする気満々です。



調べたところによると、本来オリジナルに付いてるものは「TAIWAN ALPHA製」なのですが
今回仕入れたリプレイス品はTAIWAN表記のない「ALPHA製」と、4.7k(B)だけ「DIYA製」になります。

まぁこれなら形状も抵抗値もオリジナルと同じなので全然OKです。



交換しました。 これがオリジナルの状態です。



基板にピッタリ合ってます。



本来あるべき姿に戻りました。





次に、私にとって音と同じくらい興味があるトランジスタや回路を見ていきましょう。

最終段のパワートランジスタはNPNのMJ3001とPNPのMJ2501でコンプリメンタリです。
最大定格=80V、コレクタ損失=150Wですね。 エミッタ抵抗が0.33Ωであることも確認できます。



他はTR1がBC184



TR2もBC184



TR3がBC212で



TR6はまたBC184ですが、意図的に放熱器の柱のそばに設置されています。



わざわざプリントパターンを伸ばして人里離れた田舎にポツンと置かれているのがお分かりかと思います。



初期ものは温度補償の目的でこの柱に収縮チューブで巻かれて包まれているのです。「熱結合」ですね。
パワートランジスタの温度の上昇を放熱器を通じてTR6伝える為になるべく密着させようという意図です。

でもこれは収縮チューブで包まれてないですよね。

そうなんです。 この写真の左上に「RV1」というのがありますが、元々ここはバイアス調整用の半固定抵抗器だった所で
中期以降はTR6の収縮チュ−ブが無くなると同時に、この半固定抵抗器も470Ωの抵抗器で固定になってます。

ネットで可能な限り写真で複数の基板を確認したところ、どの基板も470Ωになっていました。
1台1台微調整するのをやめて470Ωの固定にして、収縮チュ−ブ(熱結合)も外したのです。

要するに「熱暴走せずに安定しているのだからこれで大丈夫だ。」ということなのでしょうけれども、
やっぱりエミッタ電圧を調整しないということは、音の面でも個体差が生じると思います。


プリアンプ部分に使われているMOTOROLA製のMC1458です。単なる汎用2回路入りオペアンプです。
これでGAINを稼いでます。





ネットではスタックタイプの3005の回路図が入手出来ますが、
手元のWシリアルの基板でパターンを追っていくと・・・





3005の回路図とは、かなり異なってます。





抵抗器やコンデンサの部品番号や値が変更されています。
もともと5005で存在していた「R5」が3005では除去されて、抵抗値も色々と変更されていて
部品番号もずれて、結果的に「R6」という部品番号が3005の回路図には無くなっています。

これらを比較すると、
製造時期は5005が先で、スタックタイプの3005は5005に変更を加えたものであるということが分かります。


GAINの増幅率を見てみると、

5005のWシリアルは2回路あるうちの前段で20.8倍の増幅、後段で5.5倍〜1472倍の可変増幅になっていて
スタックの3005は前段で18.5倍の増幅、後段で11倍〜1001倍の可変増幅になっています。
これは数値だけでいうと5005よりも3005の方がクリアーになり切らず、歪みの最大値が弱いように見えますが
「早い段階から歪みを感じるようにしつつ、フルにした時に音が潰れてしまうのを抑えた。」
という風にも考えられますので、聴感上は3005の方が歪むように感じるかもしれません。

こうなってくると「初期」や、歪みが若干増したとされる「後期」の回路も気になります。
入手して解析するしかないですね。



可変抵抗器を交換し終わって再び音出し確認すると、歪みもトーンもかなり良い感じの状態になりました。
よく言われている通り、GAIN=8〜9の間で丁度良い歪みが得られます。

ここでいう「丁度良い歪み」というのは80年代HR/HMのリフの音とかですね。
私のイメージだと、THE CULTの「ELECTRIC」というアルバムがドンピシャです。

あと、マーシャルの特徴というよりはクランチよりちょっと歪む程度の音の特徴ですが
手の加減によってかなり歪みの強さや音色が変わります。

このアンプに限らず、手の加減によって歪みの強さを変えられるようなアンプは他にも色々ありますが
昔のアンプは今のアンプのような深い歪みは得られなかったので、
「自分の手で歪ませなければならない」という必要に迫られて、ピッキングコントロールが鍛えられたと思います。
ちなみに私は Fender Sidekick10 Deluxe というアンプで鍛えられました。

近年のDFXなどのアンプは使ってて楽しいですが、苦労しなくても歪んでしまうので、
ピッキングコントロールを鍛えたい人は、このような昔のアンプを使って練習すると良いと思います。


Marshall Lead12 Wシリアル



リフだけなら手で歪ませてDEF LEPPARD、IRON MAIDEN、Michael Schenkerあたりもまぁいけますが
それ以降のヘヴィ・メタルやもっと今風の歪みを出すにはこのアンプ直では足りないので
ブースターを繋いだり、アンプ側をクリーンにしてエフェクターで歪ませたりする必要がありますね。

このアンプはこのアンプで、これからどんどん好きになるかもしれないです。

2016.4.7
2017.4.30 追記

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