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No.13「YAMAHA / CA-X1 修理 2台目」


以前、自分のYAMAHAのパワーアンプ「CA-X1」を修理しましたが
同じアンプをお持ちの方から修理の依頼がありました。


依頼者の説明によると、故障時の状況は以下のような経緯です。
紳士的な感じで丁寧に説明してくれたのをまとめてみました。

・倉庫を整理してたらYAMAHAのパワーアンプ「CA-X1」が出てきた
・しばらく動作していたが、基板を掃除した後で電源を入れたらヒューズが飛んだ。
・ヒューズを交換したら電源ONでまたヒューズが飛んだ。
・テスターで確認したら電源トランス二次側が接地していた。
・トランス二次側の半田を外してチエックしたところトランスは異常なし。
・AMP側の電源14Vラインが筐体と接地している。
・出力トランジスタの金属ケースも筐体と接地している。


とにかく 「電源ONでヒューズが飛ぶ」 ということで、お手上げ状態のようです。

いくつか原因の憶測は頭の中に浮かんでは来ましたが、診てみなければ分からないので
一応、修理代金やお決まりのリスクの説明など経て、修理を承ることにしまして・・・


早速、届きました。



中を見てみます。




発送する直前にトランジスタの足が浮いているのを発見したとのことで、付箋を付けてくれました。
触るとグラグラしています。  真っ先に直しますが、ハンダの浮きは拡大鏡で全て確認する予定です。




チェックの為にトランスから配線を外したとのことで、そのまま送って頂いてます。




パワートランジスタです。
最初に話を聞いた時点で、まずここをを確認する必要があると思ったところです。



このトランジスタの金属ケースが筐体と接地しているとのことで、まず 「ピーン!」 と来たのが
この金属ケースは「コレクタ」ですから本来はVcc側と繋がっているはずで、(NPNはVcc、PNPはVee)
それが筐体と接地しているということはVccとGNDがショートしているということになるのです。

写真でも見えますが、「Vccであるトランジスタの金属ケース」と「GNDである筐体(ここでは黒いアルミの放熱板)」は
接触しないように透明のシートで絶縁されています。
絶縁しなければいけない所なのです。

で、私が以前に経験したことがある事例として、
コレクタのピンが 「ピンを通す為に筐体に開けた穴の内側」 に接触(ショート)していたことがあったので
まずここをを確認する必要があると思いました。


と・・・ここであることに気づきます。


私のCA-X1のパワートランジスタはコンプリメンタリの2SC1403と2SA745なのですが



これは2SC1403ではなくて2SC1586になってました。



印字がかすれていますが、L側もR側もNPNが2SC1586になってます。



本来ここはコンプリメンタリにすべきで、オリジナルの状態では2SC1403のはずなので
例えば事情によりメーカー出荷時の時点からやむを得ず2SC1586だった可能性もなくはないですが、
おそらく修理などにより後から交換されたものではないかと思います。

2SC1403が160V、8A、70Wなのに対して、2SC1586は250V、15A、150Wです。

おそらく交換する際に2SC1403が無くて、定格が下回らないように代替品として選ばれたのだと思います。
いずれにしてもバイアス調整が出来ていれば問題ないでしょう。



ではここからチェックに入ります。

まずはこのトランジスタの金属ケースが筐体と接地している件をテスターで確認しました。

私は導通確認にはアナログテスターを使うのですが、
なるほど、確かにテスターの針が ピーン! と一番右端へ振れます。

しかし数秒後・・・

じわじわと針が左方向へゆっくりと戻り始めました。

その針の動きは、大容量電解コンデンサをテスターで簡易的にチェックする時と同じ振れ方でした。


これはどういうことかというと、

トランジスタの金属ケースはコレクタなので、Vccに繋がっています。(PNPの場合はVee)
回路によってはコレクタとVccの間に抵抗器が入りますが、この回路では直接Vccに繋がっていますので
VccとGNDにテスターを当てるのと同じことになるのですが、
VccとGNDの間には電源部分に平滑用の大容量電解コンデンサが繋がれていますので

実質的には、大容量電解コンデンサの端子の両端にテスターを当てているのと同じことになるのです。


大容量電解コンデンサの両足にテスターを当てると、一瞬最大に針が振れてからゆっくり戻っていきます。

ある程度のところ(コンデンサの内部抵抗を表す値)で針は止まりますが、
テスター棒の赤と黒を入れ替えると再び一瞬最大に針が振れてからゆっくり戻っていきます。
これが大容量電解コンデンサの導通チェックをした際の正常な針の動きです。

ただ、針が ピーン! と一番右端へ振れたあとゆっくり戻り始めるまでに時間がかかったりすることもあるので
針が戻り始めるのを確認する前にテスターを離したりすると「導通があるのと同じ動き」に見えてしまいます。

「たかが導通チェック、されど導通チェック」 です。 アナログ・テスターも侮れません。

結果的に、トランジスタの金属ケースは筐体(=GND)に接地(ショート)はしていませんでした。



つまり、このトランジスタの金属ケースは筐体と接地していたわけではないので
ヒューズが飛ぶことの直接の原因ではないということです。


ただし、このアンプは1976年発売の機種なので製造後40年近く経っていますので
大容量電解コンデンサは明らかに劣化していると考えられ、
ヒューズが飛ぶことの直接の原因ではないにしても、間接的な要因に成り得るので交換が必要だと判断します。



次に、直接の原因かどうか以前にまず直すべきところ。 足が浮いているトランジスタです。
「基板の掃除をしたらヒューズが飛ぶようになった」ということで、物理的な要因の可能性も大きいですね。

見た目では「浮いている」とは分かりませんが、触るとグラグラします。



裏のふたを外すと基板の裏がありますので、基板を取り外すことなく修理出来ます。



ハンダが割れていて足が完全に浮いてました。



一度取り外して



足を伸ばして



hFEを測定します。  hFE=85 です。



以前、自分のCA-X1を修理した時の記事にも書きましたけども
この2SC1509はランクが「Q」ですが
データシートにはランク「R(130〜220)」と「S(185〜330)」しか載っていません。

YAMAHA用に特注で作ったか、時期によっては「Q」が存在していたのか
いずれにせよ、アルファベットの順番からして「R」より低い値であることは言えると思います。
私の2SC1509-Qが当時 hFE=92 だったことと照らし合わせても許容範囲だと思います。

依頼時の話で「交換が必要なものだけ交換する」ということでしたので、そのまま付け直します。



そして、一旦ここで電源を入れてみます。


スイッチ、ON ! ! 

パチっ、、しーん・・・


ヒューズが切れました。

想定はしていましたが、どうやら原因は他にあるようです。



ヒューズを無駄にしたくないので、ここからは慎重にいきます。

自分のCA-X1と比べながらあらゆる箇所をテスターで確認し、おかしな所を探します。





これ、怪しくないですか? イモハンダによる接触不良とか。



だって自分のCA-X1はこうなってますよ先生!



これはどの部品かというと、ブリッジダイオードです。



テスターを当てると順方向電圧が出るはずのところが、正電源側だけ出ません。
ブリッジダイオードが壊れていることが判明しました。

これです。 「5B3」というやつです。



電源を投入するとトランスからの交流の29Vが直流の+29Vになると同時に
そのままGNDとショートして一気に大電流が流れてヒューズが飛ぶという状況でした。


結果的には接触不良じゃなくて内部で壊れていたのでハンダ自体は関係ないと思いますが
まずは見た目でおかしなところを探すのがセオリーですし、わりと早く原因を発見できて良かったです。



それでですね、このブリッジダイオードは「5B3」ですが、


自分のCA-X1には「5B2」が付いてます。



調べてみると、オリジナル状態では「5B2」になっているようです。
もしかしたらこれも先ほどの「2SC1586」と一緒に、修理で交換したのでしょうか?

「5B2」と「5B3」では、ちょっとだけ違いがあります。

「5B2」
・繰り返しピーク電圧(VRRM)=200V
・最大実効入力電圧(VRSM)=300V
・最大順電流(AV)=4A


「5B3」
・繰り返しピーク電圧(VRRM)=300V
・最大実効入力電圧(VRSM)=400V
・最大順電流(AV)=4A


まぁどっちでも大丈夫でしょう。


1N4007などの整流用ダイオードを4本組み合わせても代用することは出来ますが、
とりあえず手持ちのブリッジダイオードを仮付けして動作確認してみます。



「RS603」
・繰り返しピーク電圧(VRRM)=200V
・最大実効入力電圧(VRSM)=140V
・最大順電流(AV)=4A


これはスペック的にちょっと下がるので、動作確認だけにして
あとでもっといいのに交換します。


ちなみにこれ、基板の穴が長方形で・・・



足を潰して平らにしないと入りません・・・



仮付けして・・・



先生! 電源が入りました!!





レコードプレイヤーを接続して音を出すと、BALANCEのつまみにかなりガリがあったので直しました。

あとはしばらくレコードを聴いてみましたが正常に動作しています。

一応、不具合そのものの修理は完了ですね。



修理が出来たので、交換すべき部品を仕入れて来ました。
必要な個所だけを交換するということになっているので、要交換だと思われるものだけを交換します。

あと、トランスの配線が外してあったのはクリップで留めていたのですが
もう不具合の原因を直したのでハンダ付けします。


配線剤の皮膜が溶けるなどのダメージがありますので・・・



収縮チューブで保護して・・・



ハンダ付けします。 収縮チューブ大好きです。



そうそう、あと面白いと思った現象があったので一応説明させて頂こうと思います。

依頼者様の状況説明の中に、「AMP側の電源14Vラインが筐体と接地している。」というのがありましたが
これはこれで不具合ではなく、正常な状態でした。

トランスの「14V」は「0.2A」とセットでLEVEL METERのランプ(電球)と、電源のランプ(LED)用です。
「0.2A」という表記の端子は「0V」の単子で、「14V / 0.2A」という意味です。

LEVEL METERのランプは電球なので回路的にフィラメントで繋がっていて、「14V」の線と「0.2A」の線は導通します。
さらに「0.2A」の線は「0V」ですから、基板のパターンの0Vや筐体とも導通します。
したがって、「14V」の線と筐体も導通します。



簡単に言うと、乾電池に豆電球を繋いだ状態と同じです。

一見、「ここは導通してはいけない」 と思いがちな所でも、案外、導通している。 ということです。



では部品を交換します。

まず仮付けしておいたブリッジダイオードをこれに交換します。



「KBJ410」
・繰り返しピーク電圧(VRRM)=1000V
・最大実効入力電圧(VRSM)=700V
・最大順電流(AV)=4A


(VRRM)=1000Vの(VRSM)=700Vですので、かなり余裕があります。





次に電源の電解コンデンサを交換します。



ニチコンKWの6800μF/50V と、ニチコンFGの1000μF/50V です。
どちらもオーディオ用で、私のCA-X1とお揃いです。



径が若干細くなったのは昔よりも小型化・高性能化が進んでいるからです。





あとは錆びてしまっている半固定抵抗器も交換します。



2か所あります。



バイアス調整用なので大事なところです。 錆びてるとまともに調整出来ないどころか、
これが接触不良やショートを起こすと熱暴走の原因にもなります。



交換完了。





まずはエミッタ電圧を9mVちょいに設定して、暖まってきたら9.5mV付近で安定しました。



これはVOLUME=0 の状態で調整するのですが、周囲温度によってかなり変動するので
冷めた状態と暖まった状態で比べながら、熱暴走せずに安定することを確認します。



エージング中です。  いい大人がIRON MAIDENの「魔力の刻印」を聴いてます。





以上、今回は 「電源を入れるとヒューズが飛んでしまう」 という場合の修理でしたが、
本機の場合は、直接の原因はブリッジダイオードが壊れていたことでした。

ではそのブリッジダイオードが壊れるに至った間接的な原因は何かというと、
トランジスタの足が浮いていたのと、電源の電解コンデンサの劣化あたりだと思いますが
実際には 「ブリッジダイオードが壊れていた」 という事実以外は憶測なので
あまり憶測で固定観念や先入観を抱いてしまうと、今後の他の修理をする際に邪魔になるかもしれません。

知識や経験から憶測・推測することはとても重要で有効ですし、
それと同時に、実際に確認出来た事実以外は疑う余地があるものとする、
そのバランスが大事なのではないかと思います。

2016.9.16

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