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No.14「YAMAHA / CA-X1 修理 3台目」
つい先日、YAMAHAのパワーアンプ「CA-X1」の修理依頼を受けて直しましたが
記事をUPして早々に、その記事をご覧になった別の方から同じく「CA-X1」修理の依頼がありました。 修理のことやオーディオのことはあまりよく分からないそうで、オークションで入手したとのことです。 依頼者による状態の説明は以下の通りでした。 1.スイッチONで2秒後ぐらいに「カチ」と小さな音がします。 2.チューナーでFMラジオを聞いていると、しばらくして右側からの音が小さくなったり、元の音量に戻ったりします。 3.AUXにCDプレーヤーを繋ぎ、セレクターを切り替えたところ、チューナーと同じような症状です。 4.ボリュームを回してもほとんどザリザリいいませんが、バランスを回すと、かなりの頻度でザリザリいいます。 5.メータの針はそれほど振れませんが仕様でしょうか? 他にも不具合があると思いますが、恥ずかしながらそれ以上の事は不明です。 ということでしたので、 まず、スイッチONで2秒後ぐらいに「カチ」と小さな音が鳴るのは「リレー」という部品の正常な動作なのと メータの針はよほど大音量にしない限り、それほど振れないものである旨を説明させて頂いたうえで、 あとはおそらく「接触不良」や「ガリ」だと思いますが、診てみなければ分からないので 毎度お馴染みの、修理代金やお決まりのリスクの説明など経て、修理を承ることにしました。 これで「CA-X1」を修理するのは自分のも含めて3台目になります。 早速、届きました。 自分のと交換したいくらい綺麗です。 中を見てみます。 見慣れた風景です。 私のもそうだったのですが、コンデンサの間に配線を通してあります。 ブリッジダイオードは「5B2」ですね。 パワートランジスタは2SC1403と2AS745です。 この四角いのがリレーです。 リレーはスピーカーの配線をON/OFFします。 これがないと電源を入れた瞬間に「ボッ!」って鳴り、スピーカーを痛めます。 電源平滑用の大容量電解コンデンサに電気を貯めるときに一気に電流が流れるからです。 電解コンデンサの容量が大きいほど「ボッ!」って鳴る音も大きくなるわけですが 昔のギターアンプなんかはリレーを使ってないものが多いので、結構怖いです。 「スイッチONで2秒後ぐらいに「カチ」と小さな音がします。」とのことだったので 一応確認しましたがやはりこれは正常です。 コイルに電流が流れて電磁石になる作用を利用して、磁石の力で接点をくっ付けてONするのですが その時の磁石でくっ付く音が「カチ」です。 ちなみにこの接点も接触不良になることが多いそうで、磨く人も結構いますが 普通の接点復活剤は「リレーには使用出来ません」と明記されているので もしリレーが接触不良だったら交換が望ましいと思います。 とはいえ、同じものって廃番が多くてなかなか無いんですよね。 これもメーカー特注なのか型番すら不明です。 電圧が12Vで来ているのと端子の数と回路から、12Vの2回路C接点ですね。 5Aのパワーリレーとかでいいと思います。 などと思いながら見てたら、あることに気づきました。 リレーの右上にある、このトランジスタが今までの2台と異なります。 例えば私のはこれです。 今までの2台はこのような放熱板の付いたTO-220という形状の2SD234でした。 放熱器を付けたくなるほど熱くなるやつですよ。 例えば互換品や代替品ということで型番が異なるということなら良いのですが 放熱板が付いてるタイプと付いていないタイプとなると、 「コレクタ損失(=Pc)がかなり異なるもの」ということになってしまいますので、気になります。 足の配列も異なるので取り付けの向きも逆ですよね。まぁそれはそれで良いのですが。 ということで型番を確認します。 鏡で見てますのでアレですが、2SD400という型番でした。 反転させましょう。2SD400のランクEですね。 2SD234は コレクタ・ベース間電圧=60V、コレクタ電流=3A、コレクタ損失=25W で、 私はこれの代替品として選んでいるのが同じくTO-220の 2SD313で コレクタ・ベース間電圧=60V、コレクタ電流=3A、コレクタ損失=30W です。 それに対して 2SD400は コレクタ・ベース間電圧=25V、コレクタ電流=1A、コレクタ損失=0.9W です。 コレクタ損失というのはどれだけ電力を熱として変換させて熱くなることに耐えられるかということなので これで大丈夫なのかと気になるわけです。 ハンダ面を見ても交換された形跡は無いので、元から2SD400が取り付けられていたものと考えられます。 ネットで調べてみると、他の方のCA-X1にも2SD400が取り付けられているものがありました。 つまり、コレクタ損失=0.9Wのこれで大丈夫なわけです。 ちなみに触るとやっぱり熱くなります。 ではこのトランジスタは何に使っているのかということで、回路を追ってみると リレーの駆動に必要な電力を稼ぐ為のドライブでした。 いわゆるスイッチングですね。 リレーという部品自体がスイッチングさせる機能を持った部品ですが、 そのリレーを駆動させる為のスイッチングということです。 ちなみにこのリレーはエミッタ側に設置されています。 普通はコレクタ側に設置するのですが、リレーの場合はどちらでも同じです。 コレクタ電流が数百mAでトランジスタがONになってリレーのコイルに12Vが行きまして、 それ以上は飽和状態になり、ONになる役割はショート状態で変わらないし ここは1Aのヒューズがあるので、コレクタ電流は1A以上は流れません。 つまり、2SD234はオーバースペックということになります。 ということは、 もともとは2SD400で、途中から入手性やコストの都合で2SD234を代替品としたのではないかと思います。 コレクタ電流が1A以上で、コレクタ損失が1W程度あれば、特に2SD234にこだわる必要はないということです。 2SD400の代替品なら2SD234よりも2SC1383(30V、1A、1W)の方が妥当だと思いますし、 2016年9月現在、2SD234よりも2SC1383やオリジナルの2SD400の方が入手性がいいですね。 さて、本体のシリアルナンバーを見ますと、 2SD400が搭載されているシリアルナンバーは 5007 で 2SD234が搭載されているシリアルナンバーは 12960 でした。 以上のことから、2SD400のものは前期型で、2SD234のものが後期型ということでよろしいかと思います。 肝心の修理ですが、やはり接触不良とガリだけでした。 接点がむき出しなのでメンテナンスし易いです。 エアーでホコリを飛ばしてたらこんなものがすっ飛んできました・・・ 可変抵抗器の裏に貼ってあるシールでした。 中を綺麗にしてから貼っておきました。 カバーを開けなくても接点を磨けるところばかりです。 こことか・・・ ここも。どんどん磨いていきます。 接点復活剤ですが スプレーで プシュー ってやると周りがベタベタになってしまうので、 私は小瓶に入れて、綿棒やつまようじや筆などを使ってピンポイントで接点に塗ってから磨いてます。 ハンダ面もこのような個所があったので 直しておきました。 電源の電解コンデンサを ニチコンのKWとFGに交換して バイアス調整用の半固定抵抗器が錆びてるのがありますので ステレオなのでLとRの2か所ですね。 これが錆びてるとバチバチ鳴ってまともにバイアス調整が出来ません。 交換します。 こちらも交換します。 バイアスを調整します。 自分のは9mVに設定してありますが、これは元々20mV付近になってたので 自分のよりちょっと高めの12mVに設定しました。 エミッタ抵抗が0.22Ωですから、0.012V÷0.22Ω=0.054A ということで、エミッタ電流を54mAを流すということになります。 これはVOLUME=0で調整するわけですが、 実際には音量や駆動時間、要は周囲温度によって結構変動します。 バイアスを調整した時は長時間様子を見ながら測定し、 熱暴走せずに安定しているということを確認することが大事です。 レコードやチューナーで数時間の動作確認をして完了です。 2016.9.30 |
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