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No.16「YAMAHA / YTA-95 修理 2台目」
なにやら大きな荷物が届きました。 えーと、こっちが前でこっちが上です。 こっ、これは! 前に修理と改造を経験したことがある機種。YAMAHAのギターアンプ、YTA-95です。 前回とは別の方からの修理の依頼で、 ビンテージの修理を謳っている業者さんにも「トランジスタ系は扱えない」と断られたりして なかなか修理してくれる業者さんが見つからないとのことで・・・ 恒例の、料金の説明から修理の方針、代替品を使うことで仕様・外観が変わる可能性や 万が一途中で修理不可能になっても往復の送料がかかる等のリスクの説明をして十分ご理解頂いた上で うちで承ることにしました。 症状は 「電源を入れるとヒューズが飛ぶ」 とのことです。 まぁこういう昔ながらのアナログなアンプであれば、部品さえあれば直せると思ってますし 古くて入手不可能な部品があってもなんとか代替品を探したり 代替品の形状等がオリジナルと異なっても工夫して取り付けたりなど、 「元通りに直すという修理以外にもとにかく使える状態にするという修理もある」 という考え方で取り組んでいますしそれなりの経験もありますので、 なんとなく 「直せるだろう・・・」 という感じでいるものの、 ここだけの話ですが・・・怖くないと言えば嘘になります。 これだけ大きな電力を扱う出力90Wの壊れたアンプをいじるのは覚悟が必要です。 でもこの恐怖と困難を乗り越えた先に、きっと何かが見えてくるはず!(遠い目) ではいきましょう! 裏側のフタを開けます。 バーン! 懐かしい・・・ この機種はとにかく大がかりな作業だったのでかなり記憶に残ってます。 お・・・ おおぉぉぉ! 凄い綿ぼこりです・・・ 自分で新品で買ってからずっと使っていたものが壊れたのではなくて 相当放置されていたものを楽器店以外のところから買うと、こういう状態だったりします。 これはクモの巣ではないでしょうか・・・ クモが大嫌いなので怖くて仕方がありません! とはいえ、ジャンクのアンプなんかだとこのくらい普通ですね。 掃除機をかけたり雑巾がけをしたりして徹底的に綺麗にすることから始めます。 本体の側面もカビ?のような?汚れ?が目立ちますので 綿の繊維を編み込んだ厚い素材に水分を含ませて、擦るようにクリーニングします。 (雑巾がけ) 基板もヘタに最初からアルコールなどを使うと余計に汚れるので まずは掃除機と筆を併用して綺麗にしていきます。 電源が入らないようですが、一応自分でも症状を確認します。 こういうジャンクのアンプの電源を入れる時は 爆音がすることや火花が飛び散ることや煙が上がることも想定して身構えて、 本当に一瞬だけ、素早く、「カチッ、カチッ!」っとスイッチを入れてすぐに切ります。 いや、「カチッ、カチッ!」じゃ遅いですね。 「カチカチッ!!」です。 そして何事も起こらなくても「おぉ〜・・・・あっ危ねぇ・・・」と言うのです。 うん。何も起こりませんでした。ウンともスンとも言いません。 そりゃそうですよ。ヒューズが切れてるわけですから。 ということでヒューズを確認。 ん? ヒューズは切れていないですね・・・。 逆に怖いですよね。 回路、すなわち内部の部品を保護する為にあるヒューズですから ヒューズが切れていないのに電源が入らないということは 「ヒューズが身代わりになってくれていない」ということです。 最悪、トランスが逝ってしまってる可能性もあるわけで 同じトランスは入手不可能だし、代替品でも高額そうだし、 まぁそれでもダイオードがブチ切れてるとか 単なる接触不良や断線の可能性もあるので、順番に調べます。 ちなみにこのアンプは本体内部の壁に予備のヒューズがあります。 さーてと・・・まず着目したのはこれです。 本体の裏にAC出力のコンセントがあります。 昔はAC電源のエフェクターも多かったみたいですし、アダプターとかも繋げられて便利ですよね。 そして・・・ 電源とパワーアンプのユニットの右側側面にもコンセントがあります。 こんなとこ普段は目にすることもありませんが・・・ 何に使うことを想定して? AC電源タイプのエフェクターを本体内に据え付けることを想定してるのかな? これらは電源プラグと導通があるはずなのでチェックします。 すると、コンセント同士は導通がありますが、電源プラグの片側だけ導通がありません。 コードをウニョウニョさせて点検すると、電源コード自体にほぼ断線状態の接触不良がありました。 まず、電源が入らない件についてはこれが原因でした。 ・・・・・・修理経験の無い人ほど 「なぁんだ、ただの接触不良か。」 「簡単じゃん。」 「俺でも直せたな。」 と思うものですが、それは答えを聞いたから簡単だと思うだけで 実は接触不良のような単純な原因を見つけることこそ、難しいものでして、 うちによく送られてくるメールで本当に多いのが 「全ての部品を交換しましたが直りません。何が原因だと思われますか?教えて頂ければと・・・」 といった内容で、そういうものほど接触不良のような単純な原因なんです。 原因なんて、分かってしまえば簡単なことなのですが、見つけるまでは本当に謎の現象なのです。 修理を経験すればするほど、謎の現象の原因が意外と単純なことだったりするということを知っているので 経験者ほど、単純な原因のことを馬鹿にしたり軽視したりしなくなると思います。 とにかくすぐに原因が見つかってよかったです・・・・・・ この時点で99%トランスは無事でしょう。 とりあえず、とりあえずでいいので電源が入ることを確認したいです。 そこで、両側がプラグの電源コードがあれば早いのですが・・・ 自分の部屋のアンプのタコ足配線を整理しようと思って買ったまま放置してあったこれと・・・ 太めのすずメッキ線を用意します。 これをここに差し込んで・・・(危険ですので真似しないでください!!) ドッキング・オーン!! ここで再び、例のカチカチ投入法で電源を入れてみます。 本当に一瞬だけ、素早く、「カチッ、カチッ!」っとスイッチを入れてすぐに切るやつです。 先生! 入りました!! さて、電源は入りますが 大きな音で「バチッ!」と鳴り、すぐに切ったにもかかわらず 大容量コンデンサに一瞬で蓄えられた電気が抜けるまでの数秒間も 「バチバチ!!ザッ!ザザァーーーーーッ!!・・・・・・バチッ!!」 って鳴り続けてます。(こえー。) いわゆる、普通のジャンク・アンプの状態ですね。 一般的には「おいおい、どうすんだよこれ・・・」って途方に暮れる状態だと思うのですが これでも私の中では 『直せる見込みのある状態』 に昇格です。 こういう症状はほとんどコンデンサやトランジスタの寿命・劣化やハンダ部分の接触不良が原因なので オーバーホールすれば直るとみています。 ただし、私は言うことが頻繁に矛盾するので気を付けて頂きたいのですが、 基本的には、安易に部品を交換してはいけないと思っています。 (まじか・・・) 修理に慣れている人と、慣れていない人では 部品を交換するべきかどうかの必要性やメリットの考え方が根本的に違います。 部品を交換すれば直る症状かどうかの見極めからして違ううえに、ハンダ付けの技術も違うので 慣れてない人が 「部品を交換すれば直るだろう」 と思って交換すると、 元々の不具合が直らないどころか、接触不良だらけになって余計ひどくなることが多いです。 端的に言うと 「全ての部品を交換しましたが直りません。何が原因だと思われますか?」 みたいに 人にメールで尋ねるような人は安易に部品を交換するべきではないということになります。 また、カットアンドトライはカットアンドトライ、オーバーホールはオーバーホールです。 もしカットアンドトライで交換してみる場合は直るまでどんどん交換していくのではなくて 一つ交換して症状を確認する度に元に戻します。 オーバーホールは不具合の原因を探す目的ではないので、一度交換したら元に戻しませんし 不具合があるのならそれはそれで別に不具合の原因を探す必要があります。 それでは電源部分を直す前にプリアンプ・ユニットも見ておきましょう。 アンプの上部に壁で囲まれている状態なので綿ぼこりは無いです。 ch1のプリアンプ基板 一番左側の可変抵抗器の真ん中から中間タップの白い配線が出てますが どこかに不具合があるとこれがハムノイズを拾ったりします。 その場合、この線に対策を施すのではなく、原因になる不具合の箇所を直すべきです。 トレモロの基板 ch2のプリアンプ基板 リバーブとワウの基板 この基板にはAN274という古いアンプICがあります。 モールドのアンプICなら無線機とかでよく使うけどやっぱメタル缶かっこいいよね。 壊れてなければいいけど・・・ 出力基板 ざっとこんな感じです。 これらの基板は後でオーバーホールすることにして 今回は電源回りの方を先にやろうと思います。 電源とパワーアンプのユニットを外します。 まず最初に、トランスがちょっと錆びてるので 綺麗にして塗装しておきます。 ひっくり返します。 電源ケーブルを交換するわけですが、ご依頼主様からのご要望で 『もし、きちんとアースを取るとノイズが少なくなるようでしたら、 電源ケーブルをアース線が付いている3Pプラグに変更してください。』 ということですので、3Pプラグの電源ケーブルを使用することにします。 長さは元の長さとほぼ同じにします。 それでですね、 『アースを取るとノイズが少なくなるようでしたら』 の部分なのですが こういうのはどこのコンセントを使用するのかによっても異なってくることなので どこの家で使うのか、どこのスタジオのどの部屋で使うのかによっても異なるものでして 一概に 「3Pプラグでアースを取ったらノイズが減りました」 というわけにはいかないのです。 また、場合によってはアンプ側のGNDとコンセント側のGNDによってループが生じてしまい 逆にノイズが増えるというようなことも考えられなくはないです。 例えばギター用のシールドやオーディオの信号ラインみたいに網線で覆ってシールドする目的なら ケーブルの片側だけGNDに接続しないでおくことでGNDループを防ぐことが出来ますが 3Pプラグでアースを取るのは洗濯機や電子レンジのアースと同じ意味ですから コンセントのアースを通じて地面に接地していることが条件だと思います。 とはいえ、オーディオ・マニアの世界でも3Pプラグにすると云々の話もありますし、 どういうやり方にするか? 3Pプラグ自体を使うかどうか? としばらく考えた結果、 たまたま私が所有しているベースアンプのTRACE ELLIOT BOXER15が3Pプラグだったので 今回はこのベースアンプの仕様を参考にしました。 このベースアンプの3Pプラグのアースは普通にアンプ側のGNDに接続されていましたので これと同じ仕様にします。 いずれにしても変換プラグを使えばいつでも普通のコンセント用にもなるので 状況に応じて選択が出来ます。 特にデメリットは無いでしょう。 交換前。 交換後。 GNDは端子でネジ留めにしました。 古いやつ。さようなら。 箱の中を綺麗に掃除して ユニットを乗せて電源を入れてみます。 全然良くなりました。 最初にあった大きな音での「バチッ!ブチッ!」っていうのがほとんど無くなったので 連続通電が可能になりました。 まだオーバーホール前だしプリアンプ・ユニットもむき出しの状態で箱の外にあるので 「サー」とか「ビー」とか「プチプチ」とかは鳴りますが、一応、とりあえずギターも弾ける状態です。 つまみのガリがひどいのであまり動かせない状態ですが、 とりあえずリバーブやトレモロも動作することは確認しました。 リバーブを上げた時のノイズが凄いです。 確かこれはリバーブの調整で、かかり具合とノイズの関係があったと思うので このへんはオーバーホールと調整でどこまで抑えられるかですね。 前の修理の時に自分で作ったサービスマニュアルを見ながら調整します。 電源自体は安定しているので、次はオーバーホール作業に移ります。 パワーアンプ基板からオーバーホールしていきますが まず、パワートランジスタ4個はどうしても交換が必要な状況でない限り交換しません。 レアで入手も困難ですし、交換するとしたら外形が変わるほどの代替品になります。 励振段増幅用の2SC783と2SA483。 最終段増幅用の2SC1080が2個。 それでは始めます。 部品を交換する前に可能な限りクリーニングします。 車でいうところの、 ボンネットを開けたらエンジンルームが綺麗で感動する状態を目指します。 まぁこんな感じで。部品交換前。 交換するコンデンサは元よりも径が大きいと隣の部品と干渉してしまう場合もありますので 容量や耐圧だけでなく、大きさにも気を使います。 耐圧は元より大きければ基本的には問題はありません。 モノによってはあまり必要以上に大き過ぎると劣化を早める場合もありますが。 自分で設計する場合などで「元」が無いときは、そこにかかる最大電圧の2倍〜3倍にします。 例えば電源電圧が9Vで電源の平滑コンデンサとして使う場合は単純計算で18V〜27Vくらい。 それで市販のものを選ぶとすると、耐圧25Vか50Vあればいいということになるでしょう。 元の耐圧や極性が分からなくても自分で決められる程度の知識があると修理にも役立ちます。 オリジナルの状態よりも自分の選択の方が正しいと思うこともしばしばあります。 また、大きな電力を要する機器の場合には瞬間的に大きな電圧がかかることもあるので 余裕をもって選択しましょう。 大きさについては、昔のものよりも最近のものの方が小型化・高性能化されていますので 同じ性能のものを現在の部品に交換する場合、小さくなることがよくあります。 そこで見栄えというものが関係してくるわけですが、そこは好みもありますよね。 「小さいとセコくなったような気がする」とか、プラシーボ的な要素もかなりありますし。 そこらへんは修理ということも考慮しながら、無駄に高価過ぎず良いものを基準に選定してます。 なお、高級パーツで揃えようと思えばいくらでも高級・高額になりますので そういう目的での改造も修理とは別に承ることが出来ます(笑 ということで、仕入れたコンデンサがちゃんと揃ってるかどうかをチェックするわけですが 同じ470uFでも数種類のコンデンサを使ったりしますので 数が合ってても使う場所を間違えてしまう可能性もなくはないですよね。 そこで、コンデンサの大きさを描いた配置図を作成します。 このように仕入れたコンデンサを乗せていけば、数も種類も大きさも同時にチェック出来ます。 こんなことをしてるから時間ばっかりかかるわけですが・・・ あと前回修理したものといくつか部品が違ったりしてます。 写真やデータを記録しておくと後で色々と役に立つんですよねぇ〜 基板に「SM-150」という表示があり、これはORIGINというメーカーのダイオードですが 前のやつはダイオードがSM-150ではなく、コンデンサはnichiconだったところ・・・ 今回のものはSM-150が付いてて、コンデンサは容量は同じですがELNAです。 出力基板やリバーブとワウの基板にもELNAが付いてました。 トレモロ基板でも、前のやつは100uFだったところが 今回のものは220uFになってたりします。他にも色々ありました。 前のやつのシリアルナンバーが5613で 今回のやつのシリアルナンバーが4719でした。 今回のやつの方が先に製造されてますね。 今回の方が発売当時の仕様に近いようです。 今回、電源とパワーアンプ基板で交換するコンデンサ。 ここに47uFの80Vというのがあるのですが 他の47uFは10Vとか50Vなのに、ここだけ80Vでして、 前回の修理ではnichikon MUZEのKZで47uF/100Vを使ったのですが 行きつけの店には在庫が無くて、他の店でも50Vまでしか置かないところが多く 入手不可能ではないのですが、個人的に流通性の良いものを使いたいので 今回はルビコンの47uF/200Vを選択しました。 この、ガムみたいな接着剤がね・・・基板側に残るとなかなか取れないのね・・・ 電子回路とはまた違った部分での格闘があるわけですが・・・ こいつの正体は無極性の(NP:ノンポーラー)です。両極性(BP:バイポーラー)でも同じです。 nichicon MUSEのバイポーラーに交換します。 あとトランジスタ類ですが ここに隠れている「Y」って表記されているのがありますよね。 これは2SK30A-YというFETで、一応うちでも在庫としてストックしてあるのですが 2SK30Aをはじめ、ほぼ全てのTO-92型トランジスタやFETは生産終了品で 特に2SK30Aの流通在庫が無くなってきているのが現状です。 「ある程度のストックを蓄えておかなければ」という意識があって 私としては出来るだけ代替品を使う方針になっています。 これは専門用語で「もったいなくて使えない」といいます・・・ それで「仕方なく代替品を探す」みたいな感じだったのですが 最近になって社会情勢の変化と共に考え方が少し変わってきました。 東芝などの国内半導体メーカーが衰退していく半面 台湾のメーカーなどによるセカンドソースが増えてきているので 仕方なく代替品を使うのではなくて、もっと新鋭的にというか、 どんどんチャレンジしていくことで未来が開けるような気がするのです。 私は何年か前から台湾のUNISONIC TECHNOLOGIES CO.,LTDというメーカーに注目していて 例えば中国ではaliexpressなどにより偽物の電子部品の販売が横行してますが このUNISONIC TECHNOLOGIES CO.,LTDというメーカーは 日本で定番だったのに廃番になってしまった電子部品のセカンドソースを 次々と発売しているんです。 偽物ではなくて、ちゃんとしたセカンドソースです。 なので、実用面の観点から見る限りもう2SC1815や2SA1015の買い溜めの意味もないですし 今までパワートランジスタ2SD288の代替品として2SD330を使ったりしていたのが もう2SD288のセカンドソースが出ているのです。 そして2SK30Aも例外ではなく、2SK303というセカンドソースが出ています。 ランクも2SK303における「V3」が、2SK30Aにおける「Y」と同じです。 端子の配列だけは異なりますがSとGを入れ替えれば済みます。 2SK303Lです。 SとG(左側の2本)を入れ替えるといっても、 このアンプの基板の端子の穴は横一直線ではなくて三角形型に配置されているので 向きを変えればよく、足を曲げて交差させる必要はありません。 これは好都合ですよね。 特性もほぼ同じ。 これが2SK30A-Yで、 これが2SK303L-V3です。 今はこの2つの特性を比較してほぼ同じであることさえ確認出来ればいいわけですが、 今これを見て気になってる人もいると思います。 データシート上のIdssはは2SK30AのYランクも2SK303LのV3ランクも1.20mA〜3.00mAのところ この簡易測定器の値はデータシートとは違う数値を指してますよね。 測定してるのがIdss(ドレイン電流)じゃないでしょこれ。 なので一応Idssを測定してみました。 2.197mAです。OKですね。 このような向きに取り付けます。 元々黄色いチューブがはめてあったので、交換後のやつにもチューブをはめて戻してますが 向きを変えたのでどの足にチューブをはめるかで少し悩みました。 チューブをはめてあるのは3本ある端子のうち1本だけなので 単に3本のうち真ん中の端子にはめているのか、それとも端子の種類で選んでいるのか、です。 まず、D(ドレイン)の端子はVcc側なのでGNDとショートさせたくないですよね。 しかし元々はめてあったのはG(ゲート)なので、単純に真ん中の足が両側と接触しないように、かと。 そうすると、交換後はS(ソース)になるかとも思ったのですが、 正面から見た位置関係の真ん中ということで、G(ゲート)の端子にはめておきました。 でも個人的には、足がグニャリと曲がってしまって他の端子と接触する可能性よりも 綿ぼこりや導通のあるゴミによるショートの可能性の方が高いと考えているので もしチューブをはめるなら?3本全てにはめないと意味がないとも思っています。 まぁ1本はめてあるだけでも丁寧な作りだなとは思いますけど。 あとはベーク板を加工して このように取り付けて 電解コンデンサを装着します。 このコンデンサの径を留めるバンドがどこの店にも無かったので。 座右の銘は 「無いものは作れ」 です。 我々人類は常に物を作ることで文明を築き・・・ こんな感じになりました。。 完璧です。 エミッタ電圧を10mVに調整します。 他のアンプに比べて非常に狭い範囲でのかなりシビアな調整を要するのですが 調整後はしっかりと安定しています。 熱暴走することはありません。 このバイアス調整が出来ないと抵抗器がメラメラと燃えて火事になりますので素人は気を付けてください。 なお、エミッタ電圧は周囲温度によっても変化しますし、計測中も常に変動します。 安定しているというのは、電圧が上がったり下がったりするのを自動修正するから安定するということなので いつ測定しても常に10.0mVで一定という意味ではありませんので。あしからず。 これで完璧ですが、今回はさらに一歩踏み込ませて頂こうと思います。 前回の修理では交換しないでおいた2SA672という2つのトランジスタのがあります。 これはパワーアンプ初段の作動増幅用です。 裏から見ると型番が見えます。 当然ながら廃番品で、簡単なデータだけならトランジスタ規格表を見れば載ってますが 肝心のデータシートそのものが見つからないほど古いもので レア過ぎて代替品に交換するのはもったいないと判断したのです。 これはトランジスタ互換表においても2SA1015が互換品ということで掲載されていますが、 もし、万が一、今後、このアンプもしくは他の何かで交換が必要になった場合に 本当に2SA1015が互換品・代替品として使えるかどうかを確認したいと思っていたのです。 2つとも hFE=227 くらいで揃ってます。 ソケットの端子番号が左から 1-2-3 なので、この測定物の端子配列は左から E-C-B である。 ということが表示されています。2SA1015の端子配列は左から E-C-B ですので合ってますね。 2SA672を取り外します。 足が酸化してしまっているような感じになってます。 左のやつが hFE=127 くらいで 右のやつが hFE=111 くらいです。 このチェッカーはどういう向きで差しても端子配列を自動認識するので ソケットの端子番号 1-2-3 に対してそれぞれ B-C-E になってます。 それはこの測定物の端子配列が左から B-C-E であることを示しています。 これは今、「A672」という型番が印字されている方を前向きにして測定しているのですが B-C-E ということは、基板に装着されていた時の向きで測定すれば E-C-B になりますので 2SA1015を普通に前向きで装着すれば端子配列は同じということになります。 ということはこれ、わざわざ後ろ向きに取り付けてあったのではなくて もともと型番の無い方が前なのかもしれませんね。 トランジスタ規格表によると2SA672の外形がSC-43になっていて何故かこの2SA672とは形が違うし やはりデータシートが無いと確認出来ないんですけど、なんかそんな気がします。 まぁどっちが前だとしても、「A672」という印字が後ろ向きになるようにすれば 2SA1015と同じ端子配列になるということが分かればそれはそれでいいのですが。 試しに「A672」という印字を後ろ向きにセットするとこのようになります。 2SA1015と同じく、 1-2-3 に対してそれぞれ E-C-B になってます。 で、この2SA672の仕様がネットに間違って掲載されてるとこがあるのです。端子配列=EBCって。 E-B-C だとどっちに向けても違いますからね。 データシートが見つからない場合は自分で測定して確認しないと駄目ですよ。 みなさん、ネットの情報に惑わされないようにしましょう。 そして今回、新品の2SA672が入荷しました! 日立のマークがかっこいいです。 左のやつが hFE=124 くらいで 右のやつが hFE=111 くらいです。元のとほとんど同じです。 実はこの2つのhFEは全く同じに揃っていることが理想です。 ただしこのアンプはこの作動増幅の2つのhFEのずれを調整出来るようになっているので なるべく元のhFEに近い状態の方が、半固定抵抗器での調整範囲内にあるということで、私は安心です。 このへんは修理や調整する人の考え方やセンスが出ますよね。 本当にちゃんとやるならこの2つのトランジスタをエポキシ系接着剤で密着させます。 hFEは周囲温度によって変化するので2つの温度を同じに保つ為です。 そう考えると、このアンプはまだまだもっと完璧に作り直すことも出来るということです。 私なら(笑 ということで、一度2SA1015-Yで動作を確認してから、新品の2SA672に交換させて頂きます! 2SA672よりもhFEが大きかったので半固定抵抗器の調整範囲から外れる可能性も想定していましたが きちんと調整出来ました。バッチリ安定していてノイズや音も全く問題ないことを確認しました。 ちなみにRoland JC-55の初段の作動増幅は2SA1015、JC-120は2SA970になっています。 どちらも汎用品なので、結局はその時代によって一般的な汎用品で良いということですね。 しかも今回初めて気が付いたのですが、 YTA-95の回路図ではなんとこれが2SA672ではなくて2SA502になってました!(さらにレア!) つまり元々は2SA502で、2SA672でさえ2SA502の代替品として採用されていたのです。 なんとも壮大な歴史を感じざるを得ません。 ということで2SA1015でも全然問題ないのですが、レアで新品の2SA672に交換します。 エミッタ電圧を10mVに再調整して完了です。 とても気持ち良いです!! 次、やっとプリアンプのユニットです! まずは汚れが気になりますので つまみを外して 綺麗にして つまみは洗剤でジャブジャブ洗います。 ガタがあるものは分解して接着し直して せっかく洗ったのに落ちなかった汚れを (落ちなかったんだ・・・) 磨いて綺麗にします。 (限界はあります・・・) プリアンプ基板で交換するトランジスタと電解コンデンサたち。 レアで高価なオールド物のコンデンサも味があっていいですけど、新品にしかない魅力もあります。 これらの部品は一つ一つ、物理的な大きさの制限も踏まえた上で 音質以外の部分も含めたトータルバランスにこだわって選んでいます。 交換前の水色の電解コンデンサもnichiconですが 交換する金色のやつとかもnichicon製です。 「ファイン・ゴールド」っていう派手な名前なんですけど、やっぱ見た目は大事ですよね。 ではch1の基板からいきます。 トランジスタと電解コンデンサは全て交換します。 3人ずつ並んで6人います。 部品を取り外すのに基板をひっくり返して裏側でハンダを除去するわけですが もうどの部品がどこにあるのか、全て丸暗記してしまっています。 見える・・・俺には見えるぞ・・・ 2SC644-Yは互換品の2SC1923-Yに交換します。 2SC732-BLは仕入の事情等によりランクを変えて2SC732-GRに交換します。 hFEのランクを元のBLに対してGRを採用することについての言い訳ですけど(苦笑 元々アバウトな分類で、GRのhFEが200〜400で、BLのhFEが350〜600ですから 350〜400の範囲はダブってるわけです。 その例として、今回外した2SC732-BLのhFEが387で これから交換する2SC732-GRのhFEが396です。 つまり、これはたまたまGRと印字されているだけで、BLと印字してBLとして扱っても同じなんです。 もっと極端な言い方をすると、これはBLなのです!! (やったー!!) 世の中こんなものなんです。 または、交換前のBLが劣化しているということも考えられます。 劣化するとhFEも下がってき、それでもトランジスタとしての動作はしますが 「チリチリ」や「サー」というノイズを引き起こす場合もあるんですよ。 しかも、劣化すると必ずノイズが出るとも限らないし、劣化の度合いすら分かりません。 そういう部分の不安や、何かの不具合の原因を探す邪魔を排除する為に、オーバーホールするのです。 交換前 交換後 交換前 交換後 ch2の基板もch1と同じです。 交換前 交換後 次はトレモロ基板。 交換前 交換後 ここで問題発生・・・ オーバーホールすれば消える予定だったノイズが消えません。 ついさっき言った、トランジスタの劣化によるノイズとは別のタイプのノイズですね。 トグルスイッチでトレモロをONにすると「ビー」というノイズが入ります。 アダプターの電圧を間違えて壊れた時のような大きな音の「ビー」ではなくて それよりも弱い「ビー」です。 ギターを繋いでも繋がなくてもVOLUMEが0でも常に「ビー」って鳴ってます。 ギターの音も出るし、ギターの音にもこのノイズにもトレモロがかかり可変出来ます。 電圧は正常、GNDの浮きも無く、トランジスタとコンデンサを交換する前からなので トランジスタとコンデンサは原因ではないです。 逆に言うと、トランジスタとコンデンサをオーバーホールしておいたことによって 「トランジスタとコンデンサは原因ではない」 ということが、まず言えるわけです。 これが、私の経験から有利に修理を進める為の手順のうちの一つということです。 が、原因は探さなければなりません。 むむぅ・・・ もう眠い時間なので・・・原因不明のまま翌日に持ち越します・・・(不安です) 症状を再確認します。 トグルスイッチでトレモロをONにすると「ビー」って鳴ります。 ギターの音もでます。トレモロも効きます。 常に鳴っている「ビー」にもトレモロがかかり、可変させることが出来ます。 ダイオードが壊れてしまった時にも「ビー」って鳴ったりしますが そういう時はもっと大きな「ビー」でギターの音も出ません。 どこか音声信号の通るラインがVccに触れてしまっているような感じの「ビー」です。 基板のあらゆる導通をチェックし、プリントパターンの隙間がちゃんと空いているか、 GNDやVccに繋がるべきところは繋がっているか、見た目、接触不良・・・ どこにも問題が見当たりません。 これは厄介な現象です。 本格的に検証していかなければなりません。 なんとなくスイッチ自体が不良のような気がするのですが 「気がする」 ではなくてちゃんと調べる必要があるところまで追い込まれている状況です。 まずはトレモロ基板に問題があるのか、スイッチに問題があるのか、 それ以外のところに問題があるのかを調べます。 ■トグルスイッチを完全に取り外し、取り外したトグルスイッチの端子の導通は正常であることを確認。 →トグルスイッチ自体には問題は無いということだ。 大きな収穫ですが、焦ります。 ■トグルスイッチを使わず配線材を直接繋いでトレモロにしたところ「ビー」って鳴る。 →トグルスイッチ以外の、トレモロ基板やトレモロ側の配線経路に問題があるということだ。 トレモロ基板はいくら確認しても問題は見つからないのに、トレモロ基板が一番怪しくなってきますが まだ基板以外の配線経路に問題がある可能性もあるので、それを検証します。 ■トレモロのINの線とトレモロのOUTの線を基板から外してそれを結線してトレモロ回路をスルーさせ、 トグルスイッチをONの位置にした時にch1の音がそのまま出るように一時的に改造したところ ノイズの無いクリーン音が出た。 →基板以外の配線経路には問題が無い。問題はトレモロ基板にあるということだ。 とても信じられません。 が、問題はトレモロ基板にあるという結果しか出ません。 何度もプリントパターンをチェックし、繋がってはいけない部分が繋がっていないか ハンダ不良や接触不良がないかチェックします。 これか? 2.2uFのタンタルコンデンサ。 基板に装着された状態だと端子間に妙な抵抗値がある。 ■取り外してチェック。 →約2uFある。壊れていないようだ。 →元に戻す。 トレモロ基板のトランジスタとコンデンサを交換する前も交換後も「ビー」って鳴ってるので トレモロ基板の中で、トランジスタとコンデンサ以外のどこかに問題があるはずだ。 と思っていたら、一部、リバーブとワウの基板にも繋がっていることが判明。 そうするとリバーブとワウの基板の影響を受けていることも考えられなくもなくはない。 これか? ダイオードが壊れてると「ビー」って鳴るぞ。 ツェナーダイオード(WZ-090、9.1V)だ! ■ワウ基板のツェナーダイオードを取り外してチェック。 →ダイオードとして測定される。順方向電圧=788mV。壊れていない。 ツェナーダイオードを元に戻すついでに、先にリバーブとワウの基板をオーバーホール。 オーバーホール完了。 今まで修理を承ったもので修理出来なかったものは無いので、「絶対に直す!」 と意気込むものの なんと、本日も原因不明のまま翌日に持ち越し・・・ 絶対に諦めないというか、直せない訳がない。 (←自分に言い聞かせてます。) ということで、もうわりと最後の手段的なもの。 (最後の手段的なものは他にもいくつかあります。) ちょっとトレモロ基板を自作してすり替えてみることにします。 ということで回路と部品を確認してみると・・・・ これ、電源電圧をそのまま使っていないのね。 エフェクターのYJM308なんかもそうだったけど、Vccからまず抵抗器を介しているのね。 YJM308の場合は100Ωだから電圧降下というより単なる保護的な(保護にもならない?)抵抗器だったけど これは2.2kだから電圧降下させてます。 回路図を見ると元の電源電圧24Vを2.2kΩの抵抗器で21Vに落としてから回路に電圧を入れてます。 しかし、この基板では2.2kΩではなく、最初から330Ωが付いていました。 電子工作をする人なら分かると思いますけど、電源電圧のVccに330Ωなんて関係ないも同然なんですよ。 特にここは電圧降下が目的なのに、です。 330Ωはこの基板の中で別のところに使っているので、間違えたのでしょう。 どう見ても改造された形跡は無く、工場出荷時の状態だと思われますが。 ちなみにこれは前に修理した方の基板。 ちゃんと2.2kΩが付いています。 再び電源電圧に加えて電圧降下させたところの電圧も確認します。 まず電源電圧が実測25.1Vあって、トランスなんかアバウトだし定電圧回路も無いので 24Vのところが25Vくらいなら問題ないと思っていましたが 電源電圧が実測25.1Vで、それが330Ω通過後で実測24.6Vになっています。 21Vであるはずのところが24.6Vです。 これが原因でした。 原因である330Ωを外して、 この原因に対して確実に対処する為、一時的にこの330Ωを5kΩの可変抵抗器に差し替えて 330Ω付近から5kΩの間で、21Vになる抵抗値を実測で探ります。 少しづつ抵抗値を上げていき、21V付近になったら「ビー」というノイズが完全に消えました!! やりましたよ先生!! 21Vになる抵抗値は実測で3kΩでした。 金属抵抗なら3kΩもありますが、一般的なE系列でいうと2.2kΩか3.3kΩのどちらかになります。 オリジナルの設計通りの2.2kΩと合っていますね。 ちなみに可変抵抗器での実験の結果、2.2kΩあたりで急にノイズが無くなり、 そのまま5kΩまでいっても音質やトレモロ効果に影響なくノイズが減っていきました。 私はこの実測データを元に、3.3kΩを選びました。 これで全くノイズが無くなり正常になりました。 このトレモロのノイズの修理は完了です。 トレモロとリバーブとワウはオーバーホール後に調整が必要ですのでさっさと済ませてから、 次は出力基板のオーバーホールです。 ぅゎー、こんなとこに電解コンデンサあったっけ?? 見落としてた。 前に修理したやつ (よく出てくるよねー) はここ電解コンじゃなかったのに。 0.47uFでした。 在庫があってよかったっす。 部品を取って こびりついたガムを必死に取って 完了。 これで全ての工程が終わりました。 あとはしばらくギターを弾いて動作確認です。 一応全てのINPUTに順番に入れて確認していきます・・・ あ。 ch2のINPUTのHIGH側だけ音が出ません先生・・・ 断線かと思い、テスターで導通チェックしましたが全て導通があります。 全て繋がっていてどこも断線していないのにHIGH側だけ音が出ません。 配線材が1芯シールドなので 皮膜が破れてシールド線(GND)が内側の信号線と接触してしまっているのだろうと思って それもチェックしましたがGNDと接触はしていませんでした。 まだ終わらないのですね・・・ 落ち着いてよく考える必要があるようです。 INPUTのHIGHとLOWの仕組みは前に改造した時にも説明しましたが このようになっていてスイッチ付きのジャックを上手く活用してます。 つまり入力直後に34kΩの抵抗を通るか、68kΩの抵抗を通るかの違いなんです。 昔はLOWなんてキーボード用の特殊な回路にでもなってるのかと思ってましたが全然違いましたね。 私は最近、HIGHより音量が下がる分VOLUMEを上げられるLOWを好んで使っています。 さて・・・この仕組みを踏まえたうえで症状を再確認します。 ・ギターをHIGHに入力した時だけ、音が出ません。 ・上の図で赤い線になっている信号経路には、接触不良は無く、全て導通があります。 ・シールドを差し込んでテスターで測定するとHIGHは約34kΩ、LOWは約68kΩで合っています。 ・LOWは普通に音が出ます。 なので、配線材に断線は無いということが分かります。 しかも、68kΩの抵抗器よりも手前の原因であることも分かります。 すると、原因は限られてしまいます。 上の図で赤い線になっている経路のうち、LOW側を除いた部分のどこかがGNDと接触してしまっているはずです。 原因はジャックの不良でした。 シールドのHOTがGNDに接触してはいけないはずの状態の時も常に接触してしまっている状態でした。 上の図のジャックの端子番号でいうと1番端子と3番端子が常に導通がある状態で 要はVOLUMEを0に絞って音声信号を全てGNDに捨ててしまっている状態ですね。 念の為、正常なLOW側のジャックも配線を外して3つの端子の導通状態を比較しました。 やはりHIGH側のジャック自体が壊れているということを確認。 これは交換するしかありません。 しかーーーし! これは国産のジャックでして、 SWITCHCRAFT製のジャックならあるのですが、国産のオープンでスイッチ付きとなるとなかなか見つかりません。 国産はミリねじ、SWITCHCRAFT製はインチねじで、SWITCHCRAFT製を取り付けるには加工が必要なのと YTA-95では特別な黒い樹脂のナットを使用していて 樹脂のナットは普通はGNDループを防止する為にシャーシと絶縁する目的で使われますが、 このアンプは金具に留めてる時点で絶縁されない仕様でして、単に全面パネルと合わせる目的のようです。 なので、国産を使わないと外観が変わってしまいます。 国産のスイッチ付きで仕入られそうなBOX型が見つかりましたが、なんとそれならうちでも常に在庫してました。 これなら樹脂ナットもそのまま使えるので外観は変わらずに交換出来ます! これはステレオプラグにもモノラルプラグにも使える仕様で端子が9個あり、様々な使い方が出来るもので エフェクターだと入力ジャックからプラグを抜いておけば乾電池が消耗しない仕様などに使います。 テスターで導通チェックして、2つの端子を結線すれば元のやつと同じ仕様として使えることを確認しました。 樹脂ナットがハンダ付けの熱で駄目にならないように金属ナットで仮留めして下ごしらえします。 配線して取り付けます。 修理完了です。 外観も変わらずに済みました。 これで全ての修理が終わり、裏のジャックの機能も含めて全ての動作を確認しました。 あとは、このアンプを修理している途中であったことなのですが 電源・パワーアンプのユニットとプリアンプのユニットがコネクターで接続されていて 基板の修理作業をしたり音を出して確認したりするのに毎回コネクターを抜き差しするのですが ある時、普通にコネクターを抜こうとしたらコネクターのカバーの一部が 「パリン」 って割れてしまいました。 ごめんなさい、全然力入れてないんですけど・・・ 古いものなので樹脂が劣化しているのでしょうか? カバー自体はネジ式で、クルクル回して外したり付けたり出来ます。 箱の内部にあるものなので外からは見えないし、コネクター自体には問題が無いので 交換する必要は無いと判断し、接着剤で補修しておきました。 まぁ電気的には関係ないし、修理する時くらいしか抜き差ししないところですので 通常使用においては全く問題はないところです。 それと、ここの革が剥がれてめくれあがっているのが気になりましたので 補修しておきました。 硬化しててゴワゴワに硬くなってました。 貼れました。 長かったですねぇ・・・ 手間がかかればかかるほど愛着が湧いてしまいます・・・ 良いアンプですよね。 低音がしっかり出て芯が太く、安定したクリーンサウンドが出ます。 別れを惜しみ、涙をこぼしながらプリアンプ・ユニットを装着して配線を固定します。 裏面のパネルを閉じて・・・ 完了です。 お疲れさまでした。 末永くご愛用下さい。 (修理後記) このYAMAHAのYTA-95というアンプを修理するのはこれで2台目ということもあって 回路的にも構造的にも知り尽くしているようなところはあったので トランスと可変抵抗器さえ無事ならなんとかなるだろうという気構えで臨んだのですが やはり今回の修理での一番の山場はトレモロ基板の「ビー」というノイズだったと思います。 「ビー」というノイズにも色々な音量やトーンの「ビー」があって、さらには どこかに指を当てた時に鳴るようなものから何もしなくても常に鳴るものとかもあるのですが 今回のは感覚的に「これはどこかVccがおかしい時の音だ」とは感じていたので その感覚だけは合ってたという自己満足的な部分はあるのですが、その反面、 そんな勘みたいな感覚があったところで、結局はその先の原因箇所の特定作業が肝心だと思いました。 どうしても、「新品の状態は正常だったはずなんだ。」 という先入観があり (それは当然なんですけど) プリントパターンのVccラインがどこか他のラインと微妙に触れているようなイメージや 束ねられている配線材のどこかで皮膜が破れてVccがどこかに触れているようなイメージしか浮かばずに そういった中古やジャンクならではの、後発的に生じた不良個所を探していたのですが、 まさかの、トレモロ基板の抵抗器が製造時点でのミスによって全然違うものが付いていたという わりと発見しにくいものが原因のノイズだったこともあって、難易度が高かったと思います。 とはいえ、時間はかかっても最終的には原因を探せる結果に辿り着くように作業を進めていたと思います。 ちなみに、他にもあった 「最後の手段的なもの」 のうちの一つは 「改造してでも、正常動作するギリギリまで電源電圧を下げる」 というもので ダイオードを挿入して0.6Vの電圧降下を利用する予定でいました。 今思うとダイオードの電圧降下を利用すると5本を直列ということになり、使える電流も限られるので 抵抗器1本に変更してたと思います。その際には当然、測定しながら最適な値を探すので、 それこそ2.2kΩ〜3.3kΩを使うことになっていたはずです。 マイナー・チェンジ的な意味で抵抗値やコンデンサの容量が変更になることはよくありますし 製造ロットによって互換品が使われていたり別物の部品が使われていることもよくありますが 今回の2.2kΩであるべきところに330Ωが付いていたというのは、製造時のミス以外にあり得ません。 24Vを21Vに落とす為に2.2kΩを入れているわけで、 そこが330Ω(ほとんど無抵抗)だったせいで21Vでなければいけないところが24.6Vだったわけで、 21Vなら「ビー」というノイズが出なくて24Vにすると「ビー」いうノイズが出ることも検証したので 信じられないかもしれませんが、そういうこともあるということです。 そういえば古い電子回路の本やアンプ製作の本なんかにはこういうこともあると書かれてあったと思います。 昔は今と違ってハンダ付けが手作業だったので、間違いがあったのです。 昔の抵抗器などにはカラーコードさえも間違っているものまであったそうです。 なので、昔の製作者は抵抗器を使う際には全てその都度、抵抗値を測定してから使ったそうです。 私はそういう話を本で読んで頭にあったので、今回の330Ωもまず抵抗値を測定しました。 330Ωというカラーコードの表示でも2.2kΩの可能性も捨てきれなかったからです。 もちろん測定しても330Ωでしたが。 現在の部品や現在の機器ではなかなかそれらの 「製造上のミス」 は無いと思いますが 昔のアンプを修理するということは、こういうことも考慮する必要が、実際にあるのだなと。 そういうことも含めて、なるべく先入観を無くして様々なことを想定して修理に臨むべきだということを 今回の修理で学べたかなと思います。 専門書を読むだけでも足りないし、製作や修理の経験を積むだけでも足りないし、 感覚や勘に頼るだけでも足りないなと。 全てを高める意識と努力と、物事を理論的に理解して論理的に説明出来るような、 いや、もっと具体的に直接的に言うと、現在の状態や症状を理論的に把握したうえで 原因の究明を論理的に詰めていけるような、性格やセンスみたいなものがもっと必要かなと。 そんなことを考えさせられた修理でした。 2017.3.20 |
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