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No.17「Marshall / Lead12 比較・検証」
〜 同じアンプなのに何故こんなに音が違うのか? 〜 可変抵抗器の許容誤差が大きな個体差を生じさせることは検証出来たわけですが、それでもまだ 「WシリアルよりもSシリアルの方が中音域寄りである。」 という違いがまだ残ってますので 今度はオペアンプを交換します!! 元のオペアンプを一度外してICソケットを装着し、両方とも Texas Instruments製の MC1458P に統一します。 オペアンプのハンダ付け部分はご丁寧に足が曲げられているので、ハンダを除去してもまだくっ付いてます。 プリントパターンが剥がれないように、熱を加えながら慎重に足を起こしていきます。 W12632 の MOTOROLA製 MC1458CP1 を捕獲。 S21230 の RCA製 MC1458CP1 を捕獲。 W12632 にICソケットを取り付けて Texas Instruments製の MC1458P を装着。 S21230 にもICソケットを取り付けて Texas Instruments製の MC1458P を装着。 これで W12632 と S21230 のオペアンプが同じになりました。 音の違いを生じさせている原因がオペアンプならこれで同じ音になるはずです。 まずオペアンプの入力電圧を測定します。 それぞれ交換前と交換後でも比較してみましょう。 【W12632】
【S21230】
両方とも入力電圧が上がって、差が縮まりましたね。 やはりこれは、入力電圧がオペアンプに依存して変化するということです。 でもまだ若干S21230の方が低いですし、肝心なのはこれが音に影響するかどうかです。 音を比べてみます!! Marshall Lead12 比較・検証動画 6 WシリアルとSシリアルで音が違うままで、音の差は縮まってない? これだとオペアンプによって音が違うのかどうかが分かりづらいですね。 なので、今度は1台でオペアンプだけを差し替えて比べてみます。 Marshall Lead12 比較・検証動画 7 なんと、変わらないですよね。 MOTOROLA / MC1458CP1 でも RCA / MC1458CP1 でも音は同じです。 【 検証結果 3 】 MC1458CP1 は MOTOROLA製でも RCA製でも音は同じ。Sシリアルが中音域寄りであることの原因ではない。 そしてまだWシリアルよりもSシリアルの方が中音域寄りになっているままですので、 原因は他のところにあるということです。 念の為まだICソケット仕様にしておきますが、オペアンプは関係なかったのでそれぞれ元に戻します。 あとは、Sシリアル(=初期)とWシリアル(=中期)で異なる箇所って限られてますよね。 よく考えてみたらC11のコンデンサはハンダ付けの必要はなく、R17の抵抗器と並列に繋げばいいだけですので W12632に220pFをワニクリップで取り付けてみましたが・・・予想通り全く変化がなく、音には関係ありませんでした。 あと念の為スピーカーも、同じ型番ですが一応見た目がちょっと異なるので S21230にWシリアルのスピーカーを繋いでみましたが、これも全く変化がなく、音には関係ありませんでした。 端子の形状が異なるだけであとは同じです。(そりゃーそーだろー) うーむ・・・ あとどこだ?・・・ バイアス調整の半固定抵抗器なんてどうせ470Ω付近でランダムに個体差があるわけだし 平滑コンデンサのTAITSUの2.2uFもSシリアルの片方だけだから関係ないし・・・ あとはメインの±19Vの電源ライン用の平滑コンデンサとかか。 Wシリアルの方の電解コンデンサはロゴもメーカー名も裏側に隠れているのか?見えないです。 (あとで判明します。) Sシリアルの方は松下の電解コンです。 S21230とS18351で大きさが違うように見えましたが、大きさもモノも同じでした。 SシリアルとWシリアルで容量が異なるならまだしも・・・両方とも2200uFで耐圧も25Vですからねぇ。 オーディオ・マニアの人達は電源の平滑コンデンサで音が変わるとか言いますけど それはハイファイかどうかであって、ギターの中音域が変わるような話にも当てはまるのかどうか・・・ ここの電解コンデンサもWシリアルは統一されてますが Sシリアルはまたもやバラバラです。 S21230のこれは TAIWAN製 です。 MarshallはTAIWAN製をよく使うイメージです。TAIWAN ALPHA とか。 S18351のこれなんかメーカー名書いてあっても知らない・・・Chton ?? 何でわざわざこんなの使うんだろ・・・怖くなってきた・・・ なんと、こんなところまでSシリアルの方だけバラバラです! 驚愕!! トランスからの交流を直流に変換するブリッジダイオード。 Wシリアルは FAGOR の W005F (50V / 1.5A)で統一されてますが Sシリアルはメーカーが異なる W005 と、仕様が異なる WL005F です。 上の2つと似てますが違うものです。 W005は W005F と同じ 50V / 1.5A ですがこれは EIC かな。色々なメーカーから出てます。 WL005F は FAGOR ですが 50V / 1A バージョンです。 まぁこんなので音が変わるとは思えないけど、個性を出そうと思ってわざとやってんのかなー? 電源の平滑コンデンサを試す前に、ハンダを外さなくてもいいところを確認しておくことにします。 基板にある抵抗器を端から順番に、装着してあるまま測定してみます。
R1 が本来は 330kΩ なのに、30.3kΩ と 30.1kΩ になってますよね。 回路図の R1、R2、R3、を見てみましょう。 HIGHにプラグを差し込んでいない時にはR2の33kΩの手前側がGNDに導通しますので R1 の 330kΩ と R2 の 33kΩ の合成抵抗で、計算上 1/(1/33k+1/330k)=30.3kΩ になるということです。 R1 と R2 は合成抵抗なので、当然 R1 と R2 は同じ抵抗値になります。 同じになってますよね。 あとは許容誤差です。カラーコードが金帯なのでどちらも許容誤差は±5%になります。 HIGHにプラグを差し込んだ時はR2はGNDから離れますので、HIGH側の入力抵抗は 33kΩ になり 入力インピーダンスを決定する抵抗は 330kΩ になります。 LOWにプラグを差し込んだ時の入力抵抗は 68kΩ になり、入力インピーダンスを決定する抵抗は 30.3kΩ になります。 結果的におかしなところはなく、Sシリアルの方が中音域寄りであることの原因は抵抗値からは見えてきません。 他に原因があるということになります。 うーむ。 これは一瞬 「おぅ?」 って思ったけど セラミックコンデンサの表記が「220」と「221k」に分かれてますよね。 「220」はそのまんま「220pF」という意味で、 「221k」というのは「22 + 0が1つ(×10の1乗でも同じ)」という意味ですのでやはり「220pF」で、同じです。 「k」は許容誤差が±10%という意味です。 トランジスタのメーカーが Micro Electronics と ITT っていう違いもありますが NPNの方はシリアルに関係なくランダムなので、これも関係ないですねぇ。 あとはいよいよメインの±19Vの電源ライン用の平滑コンデンサを交換してみるようですかねぇ・・・ さっき見たこれね・・・ たまたま、ずーっと前から 2200uF / 35V が大量にあって 何年か前の某電子部品屋さんの 「お楽しみ袋 500円」 の中に入ってたやつのごく一部なんですけれどもね、 「こんなの何に使うんだよ・・・」 って思ってたんですけどこういう時に役に立つんですね。 SHOEI と書いてあります。昭栄エレクトロニクス(現在は太陽誘電)ですね。 W12632。 元のコンデンサとワニクリップで切り替えが出来るように、片側だけ外して取り付けます。 おっと、外したら裏側にメーカー名が書いてありました。 SAMHWA ?? へー、韓国の大手メーカーらしいですね。 Wシリアルは100uFや22uFの小さい電解コンデンサもこのSAMHWAが使われてます。 S21230。こちらも元のやつの片側だけ外して取り付けます。 コンデンサの容量を測定してみました。 2200uF のコンデンサですが、Wシリアルに付いてた SAMHWA は実測 2319uF で、 Sシリアルに付いてた 松下 は 1975uF でした。 ちなみに実験用に付けた SHOEI は 2282uF でした。 うむ。 この 2319uF と 1975uF の差が音の違いに関与している可能性は、あります! これで弾き比べてみます! Marshall Lead12 比較・検証動画 8 うーん・・・なかなか同じ音になりませんねぇ・・・ そしてこれも平滑コンデンサを同じもので揃えたことでどれくらい差が縮まったのかが分かりにくいですね。 同じ音にはならなくても少しは差が縮まったのであれば、 平滑コンデンサもSシリアルが中音域寄りである原因のうちの一つにはなる、と言えるので 平滑コンデンサでどれだけ音が変わるのかを確実に比べる為に、 ワニクリップで切り替えて S21230のオリジナル松下(実測 1975uF)とSHOEI(実測 2282uF)を比較してみます。 Marshall Lead12 比較・検証動画 9 やっぱり変わらないですね・・・ 平滑コンデンサを交換しても音は変わらず、WシリアルよりもSシリアルの方が中音域寄りのままです。 【 検証結果 4 】 電源の平滑コンデンサは、Sシリアルが中音域寄りであることの原因ではない。 こんなに音が違うのに、オペアンプも関係ないし電源の平滑コンデンサも関係ない、と。 可変抵抗器の許容誤差もわざわざ固定の抵抗器に置き換えて全く同じに合わせてあるのに、です。 関係なかったので電源の平滑コンデンサを元に戻します。 ちなみにジャックにはスペーサーとして使っている絶縁ワッシャーがあるのですが WシリアルとSシリアルで色が違います。 Wシリアルは黒で、Sシリアルはレンガ色です。 こうなったらもう最後の手段か・・・ 色々と部品が異なっている中で、WシリアルとSシリアルで分かれている違いはもうこれしかありません。 この R1 から R20 までの20本の抵抗器を全て同じブランドで統一させるしかないと思います! 今までの経験上、ここまで音が異なる原因が抵抗器の素材や銘柄によるものである可能性は低いと思いますが・・・ もしかしたら今回、今までの経験を塗り替えるほどの、貴重な体験をさせて頂くことになるかもしれません!! Wシリアルが2台あるので、W20127 の抵抗器を S21230 に移植して合わせようと思います。 では手術を始めます。 まず S21230 の抵抗器を外します。 この抵抗器のブランドは Beyschlag ということで合ってますかね。 全て金帯の向きを下側に統一して装着されていて、ハンダ面も手作業ならではの非常に丁寧なハンダ付けでした。 検証が終わったら同じ向きで元通りに戻しますので綺麗に並べて置いておきます。 続いて W20127 の抵抗器を外します。 そしてこの W20127 の抵抗器を・・・ S21230 に移植します!! このようになりました。 これで音を比べてみます!! Marshall Lead12 比較・検証動画 10 相変わらずWシリアルよりもSシリアルの方が中音域寄りのままです。 やはり抵抗器では音は変わりませんでした。 例えばこれがオーディオアンプで、CDを聴く場合にどこまで音が澄んでるかとかいう話なら関係あるかもしれませんが エフェクターやギターアンプでギターの中音域がどうこういう場合だと、抵抗器の種類や銘柄で音が変わるとは思えません。 やはり今までの経験を塗り替えられませんでした・・・ もちろん、いかなる抵抗器の種類や銘柄に於いても絶対に音は変わらないとまでは言いません。 私が今までに試した条件の範囲内での話です。 【 検証結果 5 】 基板上の抵抗器の種類・銘柄は、Sシリアルが中音域寄りであることの原因ではない。 まぁそれでもかなり近い音にはなっていると思うんですけどもね。 もしかしたらやっぱりこの状態でオペアンプも同じにすれば同じ音になるのかもしれない。 なんていう気持ちになってしまいます。 まだICソケット仕様になっているので、念の為、両方とも Texas Instruments製の MC1458P で揃えてみます。 Marshall Lead12 比較・検証動画 11 やはり既に検証動画 7 でも確認した通り、オペアンプは関係ないですね。 Sシリアルの方が中音域が出てます。 またオペアンプをそれぞれ元に戻します。 アンプを置く位置を左右で入れ替えてみたりもしましたが関係ありませんでした。 手の加減で中音域を強調して弾いてるわけでもありませんでした。 とりあえず20本の抵抗器は関係ないことが分かったので、元に戻します。 無駄だったとは思いません。確認が出来て有意義だったと思います。 ここまでの検証結果をまとます。 【 検証結果 1 】 同じシリアル同士で音量や音質に差がある。その原因は可変抵抗器の許容誤差によるものである。 【 検証結果 2 】 SシリアルとWシリアルで大きな音量差がある。その原因は可変抵抗器の許容誤差によるものである。 【 検証結果 3 】 MC1458CP1 は MOTOROLA製でも RCA製でも音は同じ。Sシリアルが中音域寄りであることの原因ではない。 【 検証結果 4 】 電源の平滑コンデンサは、Sシリアルが中音域寄りであることの原因ではない。 【 検証結果 5 】 基板上の抵抗器の種類・銘柄は、Sシリアルが中音域寄りであることの原因ではない。 今のところ、音に違いが生じる原因として分かっているのは可変抵抗器だけということになります。 何故、WシリアルよりもSシリアルの方が中音域寄りなのか? もう試す箇所も少なくなってきています。 |
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