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No.17「Marshall / Lead12 比較・検証」
〜 同じアンプなのに何故こんなに音が違うのか? 〜 何故、WシリアルよりもSシリアルの方が中音域寄りなのか? 試す箇所も残り少なくなってきました。 ちなみにこういう違いもあります。 Wシリアルは 6W で、Sシリアルは 5W って記載されているんですけど トランスは同じだし電圧も同じだし、回路的にも出力は同じですのでこれは関係ないですね。 念の為、TAITSU のコンデンサも試してみますかの。 オペアンプの入力電圧用に19Vの電源電圧から16Vに電圧降下させたところの平滑コンデンサです。 呼び方は「バイパスコンデンサ」でも「デカップリングコンデンサ」でも同じ意味です。 一度登場してますよね。これ。 S20127 の TAITSU と W20127 の電解コンデンサを取り外します。 S21230 に Wシリアル用の電解コンデンサを取り付けて W12632 と弾き比べましたが・・・ まー、何も変わらないですね。 2200uFの平滑コンデンサでも変わらなかったのにこんな小さいのが変わるわけないですよね。 さっさと元に戻します。 【 検証結果 6 】 オペアンプ用の電源の平滑コンデンサは、Sシリアルが中音域寄りであることの原因ではない。 はい、次っ!! ・・・これもダメもとで試しておきますかね。 これも見るだけ見ましたよね。 エミッタ抵抗。 これはSシリアルはセメント抵抗だったりERGだったりバラバラなので関係ないと思ったのですが Wシリアルは TY-OHM で統一されているので、まさかとは思いますが・・・ Sシリアルが特別なのではなくて、Wシリアルの TY-OHM が特別なのかもしれません。 つまり 「WシリアルよりもSシリアルの方が中音域寄り」 なのではなくて 「Sシリアルよりも、Wシリアルの方が TY-OHM だから低音が出る。」 という解釈です。 最初の方でも言いましたが、Sシリアルは中音域が強いというよりも 「低音が弱い」 という感じなのです。 0.33Ωの抵抗器ですが、セメント抵抗も TY-OHM 製も実測で0.9Ω〜1Ωで同じでした。 まぁ数値自体は許容誤差に加えてテスターのリード間抵抗も0.何Ωかあるのでそんなもんでしょう。 今はセメント抵抗と TY-OHM 製の抵抗値が同じであることが確認出来ればよいです。 試してみます。 W20127 の TY-OHM を S21230 へ移植します。 これで W12632 と S21230 のエミッタ抵抗が同じ TY-OHM になります。 音を比べてみます。 ん? 先生!!ありました!! こいつが犯人です!! 今まで明らかに音が違っていたのが、ほぼ同じ音、いや、同じ音になってます。 Marshall Lead12 比較・検証動画 12 もっと分かりやすく比べてみましょう。 「エミッタ抵抗交換前」 ということで、抵抗器20本を統一させた時の動画も用いて W12632 エミッタ抵抗交換後 >> S21230 エミッタ抵抗交換後 >> W12632 エミッタ抵抗交換前 >> S21230 エミッタ抵抗交換前 という順番で比べます。 この順番に並べて聞き比べることによって 特に4番目の 「S21230 エミッタ抵抗交換前」 だけがクライベイビーっぽい音になっているのが分かるかと思います。 Marshall Lead12 比較・検証動画 13 これですね。 この TY-OHM 製の抵抗器が低音が出るということです。 だから結果的に、Sシリアルの方が中音域寄りになっていたのです。 これで・・・「抵抗器ごときでは音は変わらない」 という今までの経験が塗り替えられました。 抵抗器の種類や銘柄で音は変わります。 ただし、基板上の20本を交換しても変わらなかったり、エミッタ抵抗の2本だけで変わったりするので 交換場所や抵抗器の種類や銘柄によっては変わらない場合もあるということです。 人によって「抵抗器で音は変わる」「抵抗器ごときじゃ変わらない」ってなるのもうなずけるかと。 ネットでいくつものLead12の基板の写真を見ても、Sシリアル(=初期)のエミッタ抵抗は様々なものがランダムに使われてます。 うちの2台でも異なりますし、他のSシリアルもうちの2台と異なる抵抗器が使われている可能性は大きいです。 しかし中期のエミッタ抵抗は私の知る限りどれも TY-OHM 製で、今のところ例外は見たことがありません。後期は別です。 そして、初期で TY-OHM 製というのはないですね。 Sシリアルの方が中音域寄りであることの原因は、Wシリアルのエミッタ抵抗が TY-OHM 製だからということです。 【 検証結果 7 】 WシリアルよりもSシリアルの方が中音域寄りであることの原因は、エミッタ抵抗の種類・銘柄によるものである。 ということは・・・?? 中期のLead12のエミッタ抵抗をセメント抵抗に交換すれば、Sシリアルの音になるっていうこと?? (なにぃ!?) はい。そういうことになります。 (まじか・・・) セメント抵抗に限らず、Panasonicの酸化金属のERGでもいいし、巻線抵抗が使われているSシリアルもありますね。 ということで最後の検証!! Wシリアルのエミッタ抵抗をセメント抵抗に交換してみます!!!! 今まで比較してきた W12632 と S21230 でエミッタの抵抗器を入れ替えて交換します。 交換前。 交換後。 これで音を弾き比べてみます! Marshall Lead12 比較・検証動画 14 見事に音が入れ替わって、逆にWシリアルの方がクライベイビーっぽく中音域寄りになりました。 TY-OHM の方がギラつきが抑えられています。 【 検証結果 8 】 Wシリアルのエミッタ抵抗をセメント抵抗器に交換すればSシリアルの音になる。 こうなってくると逆にこの TY-OHM 製の抵抗器が欲しくなってくるわけですが・・・ 同じものが見つからないどころか TY-OHM のHPの製品情報にもラインナップがありません。 生産終了なのかもしれません。 レア物ということで認定しました。 検証が終わったので、全ての部品を完全に元の状態に戻し、音の個体差を楽しむことにします。 ICソケットももう必要ないので元に戻してオペアンプを直接ハンダ付けして装着します。 ということで、今までずっと 「何で音が違うんだろう?」 って思ってた謎が解明されました。 安価なセメント抵抗器が2本あればSシリアル(=初期)の音が手に入ってしまうなんて レアなSシリアルの愛用者にとってはちょっとショックかもしれませんが・・・ しかしSシリアルの魅力は音ではなく 「基板の見た目」 や 「Sシリアルであること」 だと思うのは私だけでしょうか? 音には関係が無かったけどあの20本の Beyschlag の抵抗器の貫禄とか、 調整しなくてもぶっちゃけ大丈夫だけどちゃんとバイアス調整用の半固定抵抗器が付いてることとか、 同じ消費電力なのにラベルの記載は 5W になっていることとか、 ツマミの目盛りを指すところが尖っていることとか、 何よりも 「これは初期型なんです」 って言えるところとか・・・ そういうところがSシリアルの魅力だと、私は思っています。 とはいえ、WILD な Wシリアルと、SPECIAL な Sシリアル。 どちらもそれぞれ魅力がありますよね。 検証結果をまとめます。 【 検証結果 1 】 同じシリアル同士で音量や音質に差がある。その原因は可変抵抗器の許容誤差によるものである。 【 検証結果 2 】 SシリアルとWシリアルで大きな音量差がある。その原因は可変抵抗器の許容誤差によるものである。 【 検証結果 3 】 MC1458CP1 は MOTOROLA製でも RCA製でも音は同じ。Sシリアルが中音域寄りであることの原因ではない。 【 検証結果 4 】 電源の平滑コンデンサは、Sシリアルが中音域寄りであることの原因ではない。 【 検証結果 5 】 基板上の抵抗器の種類・銘柄は、Sシリアルが中音域寄りであることの原因ではない。 【 検証結果 6 】 オペアンプ用の電源の平滑コンデンサは、Sシリアルが中音域寄りであることの原因ではない。 【 検証結果 7 】 WシリアルよりもSシリアルの方が中音域寄りであることの原因は、エミッタ抵抗の種類・銘柄によるものである。 【 検証結果 8 】 Wシリアルのエミッタ抵抗をセメント抵抗器に交換すればSシリアルの音になる。 2017.4.30 |
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