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No.21「YAMAHA / CA-X1 修理 4台目」


当HPをご覧頂いた方からYAMAHAのパワーアンプ「CA-X1」の修理依頼です。

CA-X1の修理はもう4台目になりますね。



依頼主様が詳しく説明してくれた症状をまとめるとだいたい以下の通りです。

・使用中いきなり大きめなノイズが入ります
(バリバリッ、ポンッ、ボッ、ガリガリ、ガサガサ、といった類。
・スピーカーをオフにすると出ません。
・電源を入れる際一度だけスピーカーをオフにせず電源を入れたところ「ボンッ」というノイズが入りました。
・それ以降電源オンオフ時はスピーカーを切ってますが、使用中のノイズは出ます。
・アンプからの異臭や煙等はないです。
・コンデンサーでしょうか、液漏れしているように見えました。
・本体裏から見ると、短いコードでハンダ付けされているところもありました。


とのことです。

また、オークションで仕入れたそうで、最初から改造されていたとのことです。
出品者による改造箇所は以下の2点とのこと。

・左右メーターの照明を青色LEDに交換
・バランスボリュームを交換



さて・・・


毎回、修理を引き受ける前に、まずは症状から原因と対策を予想します。
もしトランスが壊れてたら修理代が高額になりますし、専用ICが使われてるものなどは
代替品が無いと分かっていればその時点で修理出来ないことが判明するからです。

今回の場合だと

ガリガリ、ガサガサ、といったノイズはトランジスタやコンデンサの劣化か、もしくは
ハンダの劣化による接触不良が疑われます。

まぁ電源の平滑コンデンサがもう年数で寿命なので要交換なのと
その他の電解コンデンサとトランジスタも劣化してますので
ほぼ全ての電解コンデンサとトランジスタを交換します。

ただし、ガサガサというノイズはこれで直らないものもあります。
その時はその時で次のステップへ移行します。


コンデンサが液漏れしているように見えるのは
おそらくコンデンサを固定しているガムのような接着剤のことではないかと思いますが
実際に見てみないと接着剤か液漏れかの判断は出来ませんね。
まぁもし液漏れだったとしてもどうせ交換するので問題ないです。


ちょっとやっかいな予感がするのが、電源を入れると「ボンッ」って鳴るやつです。
これはリレータイマーが機能していないということになります。

その、何がやっかいなのかというと、
普通に考えるとリレータイマーが機能していない、あるいは壊れているということは
音が出ないと思うんですよ。

しかしこれは音は出ているようなので、状態としては「ONしっぱなし」ということになります。

まず頭に浮かんだのは「本体裏に短いコードでハンダ付けされている」っていうやつですね。
リレータイマーがキャンセルされている可能性があるな、と。

でもわざわざリレータイマーをキャンセルする意味が思い当たりません。

可能性としては、物凄く音質にこだわる人が「音声信号がリレーの接点を通過すると音質が下がる」
ということでリレータイマーを使いたがらないというケースもあるかもしれませんが
もしリレータイマーが「ONしっぱなし」の状態だとリレーの接点を通過してるので意味がありませんし
普通は電源を入れた時に「ボッ!」って鳴らしたくないという方が大きいですよね。

すると、リレータイマーが壊れている可能性も考慮しなければなりません。

リレーが壊れているとスピーカーが外されているのと同じですから音が出ないわけです。
このアンプはいくつか改造されているということもありますし、
その対策として、リレータイマーをキャンセルさせてしまった可能性もあるということです。

こわいこわいこわいこわい。(全て憶測です)

もしそうだとするとリレータイマーを交換しなければなりませんが
このリレータイマーは同じものは入手出来そうもないので
代替品を探すしかないのですが、なかなか端子のピッチまで合うものが見つからないんです。
交換する場合にはちょっと工夫して取り付ける必要がありそうです。


まぁ何とかなるでしょ。


ってことで修理を承りました。


うーむ。



ということで早速見てみましょう。


基板はわりと綺麗です。




裏はこんな感じ。




このコンデンサの上のは汚れで下のやつは接着剤ですので、これは液漏れではないですね。



かくいう私も最初の頃はこういう接着剤を見ては「液漏れかな?」って思ってました。
液漏れの場合もありますが、液漏れだともっとサビみたいなザラザラした感じになります。

まぁここは交換するからいいとして・・・


とりあえずリレーを見てみます。


う・・・、今まで見て来たCA-X1のリレーとは見た目が違う・・・交換されてる??



今まで見て来たCA-X1のリレーはこれです。「HOSIDEN」の刻印があります。
中身の向きが違うから高さも違いますよね。



ただ、交換されているとは言い切れないんですよねー。
オリジナルの可能性もあるんですよねー。

何故かって、ふと見たら基板のレイアウトが異なってますので
結構な仕様変更がされてますね。

見てください。
PHONO回路の部分なのですが、レイアウトが違います。

今回お預かりしたやつ。



こっちは今までのやつ。なんか向きが違いますよね。




シリアルナンバーを見てみます。

今回お預かりしたやつが102199で・・・



自分のは12960でした。ケタが違いますね。



つまり、私のを「初期型」と呼ぶとすると
今回お預かりした方は「後期型」と呼べばいいでしょうか、かなり新しいですね。


さぁ、それはさておき・・・

スピーカーを繋いで動作を確認します。

ほほう。

電源スイッチを入れると直ぐにリレーがONになりますね。

普通は電源を入れてからリレーがONするまで

「カチっ・・・・・・・・カチ、」

って数秒の間隔があるのですが
(何秒でONになるかは幅があって1.5秒くらいのものもあれば4秒くらいのものもあります。)

これは 「カカチっ」 ですね。


なので、電源を入れるとほぼ同時にスピーカーもONになり、「ボンッ」って鳴るわけです。

大きなコンデンサに一気に電気を溜めることで鳴る音です。
一度「ボンッ」って鳴った状態から電源を切って、すぐに電源を入れ直した時には
既にコンデンサに電気が溜まっているので「ボンッ」っていうのは鳴りません。
でもOFFの状態のまましばらく放置しておくとコンデンサの電気が放電されてなくなるので
その状態から電源を入れるとまた「ボンッ」って鳴るということです。

ということでリレーのタイマー時間が早いだけで、壊れているわけではなさそうです。

するとやっぱり例の裏の配線か・・・


これっすね・・・ しかもイモはんだ・・・



これ。



このトランジスタ(2SC1918)のコレクタとエミッタが結線されているのですが、
左のパワートランジスタ(角度と光の加減で印字が消えてるように見えますが2SD234です)と
ダーリントン接続されているので、2SD234のベースとコレクタを結線してるのと同じです。

(ダーリントン接続=より大きなhFEを稼ぐ為にトランジスタ2個を直結する手法)

この2つのトランジスタはリレータイマーを駆動させるのに必要な電流を流す為のドライブ回路で
2SC1918のコレクタとエミッタをショートさせてしまうとダーリントン接続でなくなるどころか
ただの(トランジスタ内部にあるベース - エミッタ間の)ダイオードになってしまいます。

結果的にはリレータイマーをキャンセルしているのと同じことになってますが
何を目的としてこんなことをされているのか不可解です。

もしリレーをキャンセルしたいのであれば、
このトランジスタの下にある100kΩの抵抗器の値を変えるとタイマーの時間を操作出来ます。

抵抗値を減らしていくとONするまでの時間が早くなります。

なのでこの100kΩの両端を結線するならまだわかりますが、この結線の仕方だと・・・うーむ。


どう考えてもこの配線は意味が無いので外しました。
念の為すぐに元に戻せるように片側だけ外して基板に触れないように絶縁します。




直りました。
電源を入れてから約1.6秒でカチッとONします。

これで「ボンッ」って鳴らなくなりました。 裏の配線材は除去してしまいましょう。






直ったついでにちょっと実験してみますね。

可変抵抗器を繋げて抵抗値を変化させて、ONする時間がどう変化するのか確認します。



元の抵抗器は100kΩで、250kΩの可変抵抗器をクリップで並列に繋いで合成抵抗にします。
こうすることで基板を痛めないようにハンダを外したり付けたりせずに実験が出来ます。

抵抗値aと抵抗値bの合成抵抗は 「1 ÷( 1/a + 1/b )」 (ただしaかbが0Ωの場合は合成抵抗値も0Ω)

なので、 0Ω〜71.4kΩ まで可変させられることになります。


だいたいこのような結果になりました。

 抵抗値 
  時間 
 ノイズ 
  0Ω
 ほぼ同時
 「ボンッ」
 10kΩ
 ほぼ同時
 「ボンッ」
 25kΩ
 ほぼ同時
 「プツッ」
 40kΩ
  0.5秒
 「プッ」
 50kΩ
  0.5秒
 「プッ」
 70kΩ
   1秒
  「ッ」
100kΩ
  1.6秒
  無音

まぁ基板裏の短い配線材でショートさせなくても、この抵抗器を10kΩ以下にすれば同じことですね。
わざわざそんな改造をする意味は無いとは思いますが。

CA-X1の場合は、1秒だとほとんど鳴らないか、鳴っても気にならないような小さい音で
1.6秒あれば確実にポップノイズを回避出来ます。

この「ボンッ」というポップノイズの音量や、それを鳴らさない為のリレータイマーの時間の設定は
アンプの出力や電源の平滑コンデンサの容量によっても異なります。

ちなみにうちにあるマランツのアンプは4秒くらいかかります。



さて、リレーが直ったのでコンデンサとトランジスタを交換してオーバーホールしようと思ったのですが

その前にどうしても気になって手直ししたい箇所がありまして・・・


依頼者様がオークションで入手した時には既に出品者によって交換されていた部分で
バランスボリュームの可変抵抗器の配線です。


まず、これがオリジナルのバランスつまみの可変抵抗器です。私のです。




今回お預かりしたものはこのようになってました。




本当は修理を承る前に「既に改造されている部分は修理出来ません。」と言ってあったのですが
さすがに端子と配線材が長いので短くスッキリさせようと思ったんです。



そして作業をする為に取り外そうとしたところ・・・



つまみを抜こうとしたら軸ごとポロっと取れてしまいました。




つまみから円筒の樹脂が外れたものの、樹脂の筒から軸が外せません。




ガッチリと接着されているようです。




お湯で温めたり色々やって、なんとか取れましたが・・・




なんと、可変抵抗器は元々ストレートの軸の製品で、
その先端にローレット(ギザギザ)の軸が接着剤でくっ付けられていたのです。




接着剤のカスがこびりついてますが、ストレート軸の半月状タイプです。
ネジ留め式のつまみや半月状の穴になっているつまみ用の製品ですね。




形状としてはこれと同じタイプの軸ですね。



左下のやつは接着剤がパテのようになって固まっていた部分。




再現すると、このように付いてました。




モノが違うので色が違います。




こういうことがあるから、他人が直したものは触りたくないんですよねぇ・・・


(と言いながら私自身もよく独自の直し方をするわけですが。)


まぁなんとかするしかないですね。

しかしこれ、バランス用の可変抵抗器って特殊なんですよ。なかなか売ってないんです。
AカーブとかBカーブとかではなくて、MNカーブというやつです。

見つけても軸の長さや抵抗値が違うか、ローレットじゃないとかです。

抵抗値はまぁ200kΩに対して100kΩか250kΩなら許容範囲ですが
ローレットじゃなきゃ困るし、軸の長さも25mmないと困ります。(一般的なのは10mmか15mm)

なんとか見つけたのは100kΩの中国から取り寄せるやつと、秋葉原の店で100kΩの10mmストレート軸だけ。


一応、5通りほどの対策案を考えまして、その中で依頼主様の希望もお伺いして

100kΩの10mmストレート軸で加工するのをやってみて、それが上手くいかなかった場合は
お預かりしたやつに付いてたものを使って接着で修復する。
という方向で対処することにしました。

どちらもストレート軸をローレット軸にしなければならないので、なんとか工夫しなければなりません。

ということで、軸にタップ(ネジ溝)を切ってネジ留めでローレット軸に交換しつつ長さも延長しようかと。


やったことないので、出来るかどうかちょっと実験します。

「これは上手くいかなければマズいぞ。」 という、わりと切迫した状況で緊張感が漂ってます。



まず、ローレット軸の可変抵抗器を用意して




分解します。




このローレット軸を加工して使います。




任意の長さに切断して




ドリルで穴を開けます。

6mmシャフトですが、穴を開ける部分の軸は細くなっていて径4mmです。
そこにM3のタップを切る為の2.5mmの下穴を 1mm → 2mm → 2.5mm の順で慎重に開けます。
ちゃんとケガキをして中心にセンターポンチを打っていても、中心を出すのが難しいです。




タップを切ります。 ジコジコ、ジコジコ・・・




クルクルクル・・・M3のネジが取り付け可能になりました。




もう片方の軸も穴を開けてタップを切ってみました。
どうしても中心が出ないんですよねぇ。 ボール盤の限界か・・・




ネジも必要な長さに切断し、繋げてみます。




ボール盤の限界、もしくは試しにやってみた実験の1回目ということもあり・・・(言い訳)
中心が出てないので最後まできっちり締めると軸がずれてますが




1回転のどこかには合うところがあるので
ちょっと戻したところで固定すれば大丈夫そうです。




まぁ軸がへの字に湾曲しているわけではないので、
多少ずれててもつまみを取り付けて回す分にはさほど気にならない感じがしますけど
可能ならもっと精度を出したいですね。
卓上旋盤でもあれば余裕だと思いますが・・・うーむ。


とりあえず、軸と軸をネジで合体させることは出来そうだということは分かったので
やろうと思えばストレート軸を任意の長さのローレット軸に改造することは可能かな、と。


えーっと、これ・・・いま、アンプの修理をしてるんだよね?(笑



ちなみにこの加工は、秋葉原の店にあった100kΩの10mmストレート軸でなら出来ますが、
お預かりしたやつに付いてたこれは軸が半月状なので、穴を開けるには面積が足りないです。



ということで今度は、お預かりしたやつに付いてたものを使って接着で修復する方法をやってみます。

まぁネジで接合するのに比べると強度は落ちるとは思いますが
上手く接着すれば、お預かりした時の状態よりはマシになるのではないかと。


ということで今度は、接着面を広く取りたいので径が6mmのところで切断して使います。
すると、付け足す部分の長さは14mmになります。




全体の長さが25mmだと丁度良いのですが、可変抵抗器側の長さは15mmあるので、4mm削ります。
こうすれば接合面も6mm同士になり、長さも11mm+14mmで25mmになります。




切断したもの同士を




強力に接着!! 完璧な 25mm ローレット軸 の完成です!!




面を完全に密着させる場合はアロンアルファで良いと思いますが、今回は軸を真っすぐに微調整して接着する為、
厳密には若干の隙間が出来る部分もあるので、凸凹面にも使える超強力弾性接着剤の
セメダインスーパーXゴールドを使用しました。

普通のセメダインとは違います。 全くの別物です。
硬化するとアロンアルファ級の強度になります。


硬化したら頑丈にくっ付いていてビクともしません。かなり良いと思います。




ちなみに私のモットーは 「何でも直します。(ただし直せないものもあります。)」 です。



端子と配線材もスッキリさせました。




ふぅ・・・(直せてホッとしてます。)

多分ですけど、何事も簡単に諦めてはいけないと思います(笑





ちなみに実験により、この後でセメダインスーパーXゴールドよりももっと強力な接着剤に変更しました。
2液タイプのホーロー用の補修材で、パテに近いです。

不要な可変抵抗器で実験してみたところ、ガッチリ、カチンコチンに硬くなって
このままこれで硬い床をコンコンって叩いても折れません。





ついでに「MNカーブ」というのはどのような動きをするのか。
実際に測定して確認してみました。

200k、MNカーブです。

【 端子1 - 端子2 間 】 ・・・ 最左 0Ω → 真ん中 0Ω → 最右 170kΩ

【 端子2 - 端子3 間 】 ・・・ 最左 170kΩ → 真ん中 170kΩ → 最右 0Ω

まず実測で170kΩなのは許容誤差が±20%だとすると許容誤差の範囲内なのでこんなもんでしょう。

それぞれ、真ん中を境にして片側しか抵抗値が変化しないということです。
つまみを回してゆくと真ん中までは 0Ω のまま変化せず、真ん中を過ぎてから抵抗値が増えていきます。
それが2番端子を境に、1番端子側と3番端子側で左右対称になっていて、2連なのでそれが2個分です。

特殊なカーブです。



あとレベルメーターのLEDも青色に交換されていたのですが、絶縁が甘いのと、グラグラ動くんですよ。



出たり・・・




入ったり・・・ スルスルと動いてしまうので・・・




ハンダは外さずに外側から収縮チューブを巻いて絶縁して、インシュロックで固定しておきました。




他人が改造した部分を深追いしていじくってまた何か面倒なことになってもアレですので
ここはこのくらいにしておきましょう。


やっとここまで来ました。 残すはオーバーホールです。



頭を悩ますような修理が終わってあとはオーバーホールの作業だけになったので
ルンルン気分で依頼主様に 「あとはオーバーホールだけですよー。」 的な連絡等のやりとりをしてたら・・・


何だかんだでLEDも私のやり方で交換することになりました・・・


まぁ何となくですが、自分でもここを見て見ぬふりをしてフタをしてしまっているような気がしてたので
どうせなら自分でやり直した方がいいと思っっていたかもしれません。

考えてみたらリレーの件も、バランスボリュームの件も、改造されている部分が不具合を起こしているし
依頼主様もこの青色LEDに交換されているところが不安になってきたようです。

確かに、本来このレベルメーターのランプはプラスもマイナスも関係ないネオンランプで
それが青色LEDに交換されているのですが、LEDは直流電圧で使うものなのに
実測で約14Vの交流電圧が来ているところに抵抗器だけでLEDを装着されてます。これはよくないですね。

確かに片側に抵抗器を付けてしまえば光ることは光るのですが
やはり交流のままだと逆電圧がかかりますし、LEDを触ってみると発熱してます。




では始めます。

うーむ。

私が普段使っているLEDとは違うタイプですねぇ。
汎用品ではないというか、何かの製品から抜き取ったものでしょうか?




使い慣れてるタイプのLEDに交換します。 色はご要望通り青色です。




最初は、交流になっているのを半波整流して直流にしようと思っていたのですが
電源のランプがLEDだったので、その電圧を共用することにしました。


一応多指向性のLEDなのですが、先端を下に向けた方がよい感じに照らせたのでこのように配線し・・・




このように取り付けます。




スイッチおーーーん?


先生・・・電力が足りないみたいです。


電源のLEDだけ点灯して、レベルメーターのLEDが点灯しません。
電源のLEDを外すと、普通にレベルメーターのLEDが点灯します。

電源のLEDで電圧降下したらそのあとに回す分が足りないといった感じです。



やり直し・・・orz



やっぱりランプ用の交流を半波整流します。 (最初からそうすれば良かった・・・)

元の電圧は実測で14.73Vの交流です。




整流用ダイオードで半波整流して6.29V。




さらにコンデンサで平滑して19.79V。




LED2個分の電圧降下が約4Vで15.79Vになるから

10mA流そうと思うので

15.79V ÷ 0.01A = 1,579Ω

なので、1.6kΩの抵抗器を付ければOK。


実測で15.46V。




この半波整流の回路は元々のLEDの配線があった穴を活用して取り付けたいので




このように配線して・・・




このように取り付けました。
基板は加工していないので、オリジナルに戻そうと思えば戻せるという状態です。
なるべくオリジナルの基板を傷付けたくないという思いです。




平滑コンデンサは100μFで耐圧は電圧降下前で19.79Vあって25Vだとギリギリなので50Vにしました。

これは1.6kΩの抵抗器を付けて10mA流してますが、例えばもし抵抗器を1kΩにすると

15.79V ÷ 1,000Ω = 0.0157A で、15.7mA 流れますので、この抵抗器の消費電力を I × I × Rで求めると

0.0157A × 0.0157A × 1,000Ω = 0.246W になり、

耐圧1/4Wの抵抗器だとギリギリなので発熱します。

実際に1kΩの抵抗器にして触ってみると、すぐに熱を帯びてきます。


1.6kΩで10mAなら 0.01A × 0.01A × 1,600Ω = 0.16W

単純に 電圧×電流 で求めても 15.79V × 0.01A = 0.1579W

この抵抗器の耐圧は1/4W(0.25W)なので大丈夫ですし、明るさも充分です。




結果的にこの配線が不要になったので




こんな感じだった基板上の配線が




少しさっぱりしました。




ちなみに元々付いてたLEDには270Ωの抵抗器が付いてました。




これだと、このLEDの電圧降下が2Vだとして

(14.73V − 2V) ÷ 270Ω = 47mA 流れていて、

0.047A × 0.047A × 270Ω = 0.59W で、電圧降下が3.5Vだとしても0.45Wですか。

発熱してたのはLEDじゃなくて抵抗器だったんでしょうね。
普通に考えると定格オーバーですが、見慣れないLEDなので電圧降下がもっと大きいかもしれないし
焦げてはいないので本当に定格オーバーかどうかは分かりませんが、ここも直しておいて正解だと思います。

リレーのキャンセルとか怪しいLEDの取り付け方とか、やはり他人が改造したものは不可解なものが多いですね。

こういうことをするとメーカーが保証の対象にしません、っていうのがよく分かります。



では、今度こそオーバーホールです!
コンデンサはほとんどがニチコンのMUSEシリーズのFGとKZです。 私のCA-X1の時よりも豪華です。




まずはこの辺からいきます。 電源部分と PROTECTION 回路部分。




綿棒などを使って掃除しながらやります。




ほぼ全てのコンデンサをニチコンのFGとKZで揃えましたが、この22μFだけは大きさを揃える関係で
ルビコン製のやつを使います。 耐圧は大きい分には問題ないので 16V に対して 50V です。




2SB560 は足が黒こげでした。互換品の 2SA965 に交換します。




2SD234 は互換品の 2SD880L に交換します。
これはどうしても発熱します。 私のも結構熱くなります。




2SD234 はランクがOなのでhFEが70〜140のはずですが、劣化していて21.9しかありませんでした。




2SD880L はデータシートで100〜200のところ、119.3でした。正常です。




PROTECTION 回路のトランジスタは他のも全て足が黒こげでした。
トランジスタの足が黒こげだとノイズの原因になるという説があります。
一概には言えないと思いますが、経験上、足が黒こげのトランジスタは劣化していてhFEが小さくなってます。
hFEが小さくなってるということは性能が落ちているということなので、確かにノイズの原因になりそうです。




一番左の 2SC1918 なんかhFEが 16 程度しかありませんでした。
163 じゃなくて 16 . 3 ですよ。 ほぼ死んでます。
リレーのところで基板の裏に短い配線材でコレクタとエミッタが結線されてたやつです。




2SC1918 は 互換品の 2SC2240に交換します。




2SC2240-GR のhFEはデータシートで200〜300のところ、299でした。正常です。




交換後。こんな感じです。




続いてこっち側。
LチャンネルとメーターとRチャンネルですね。




交換する部品を先に全て取っちゃう作戦!




このダイオードがレアっぽくて気になります。 ゲルマニウム・ダイオードの 1S188 っぽいです。




あとこれも交換します。アイドリング電流を調整する半固定抵抗器です。
これが錆びてるとちゃんと調整出来ないし、ブチブチというノイズの原因にもなります。




これに交換します。東芝製の半固定抵抗器です。




2SA777 と 2SA763 は




それぞれ 2SA965 と 2SA1015 に交換します。




こぉーんな感じですね。




ゴールドとメタリック・グリーンがキラキラしてます。 私のCA-X1よりも豪華です。




いつも言ってますが、これは良いパーツに交換したから音や状態が良くなるというわけではないんです。
互換品・代替品の選び方から始まって、
一つ一つハンダ付けするごとにプリント基板と部品の足に充分な熱を加えて
ハンダが部品の足にスーッと、ピターっと吸い付くように溶け込むように丁寧に作業して
ハンダ付けした後もルーペを使ってハンダの状態をよーく確認して・・・ということが大事なのです。


ただ単に部品を交換するだけなんですけど、ただ単に部品を交換するだけじゃないんです。


素人が部品を交換すると、今まで正常動作していたものがあちこち不具合を起こします。


そのうえで、ニチコンのFGやKZを使ってます。 KZはMUSEシリーズの中でも最高級グレードです。
以前はMUSE-FXというのがあってウチにもまだ結構在庫がありますが、FXは廃番になったようです。



なお、最終段のパワートランジスタである 2SC1403 と 2SA745 は入手困難です。
もし交換するとしたら、外観が変わる代替品になってしまいます。




ご依頼主様もここは可能な限りこのまま使いたいとのことで、私もそう思います。
ここはこのまま使用します。





ちなみにこのアンプにはオーバーホールした箇所とは別のPHONO回路等に
TA7136P というアンプICが4個使われていて、これはDS-1の初期に使われていたICです。
(ギター用のエフェクターの話です。)




初期の銀ネジ仕様の中でもさらに初期、1978年の生産開始から1979年の途中までの約1年間だけが TA7136P で
それ以降のJAPAN製は銀ネジも黒ネジも TA7136AP です。 末尾が「P」か「AP」かの違いですね。

基本的には同じものですが、末尾が「P」のものが初期で「AP」の方が新しいです。



東芝の説明によると、

A : 変更管理記号
P : DIPパッケージ

ということですので、初期の「P」に何らかの変更が加えられたものが「AP」ということです。
変更といっても、性能が改善されたのかコスト軽減の為に材料や製造方法が変更になったのかは不明です。
普通に考えると「AP」の方が何かしら改良されているとは思うのですが、
私はDS-1マニアなので個人的にこの古い方の TA7136P が欲しくて
依頼主様にご承諾を頂きまして、TA7136P を無償でTA7136APの新品に交換させて頂くことになりました。

ありがとうございます!!

TA7136AP は新品で大量に在庫をストックしてあるのですが、
TA7136P は自分のCA-X1や初期DS-1に付いていた中古品しか持ってないのです。

そういえばもともと私がCA-X1を入手した動機も、この TA7136P の為だったと思います。


有難く外します(笑


こちらが取り外した TA7136P。




こちらが交換する新品の TA7136AP。 こちらもとても貴重なICなんですけどね。当然ながら廃番品です。





うちの TA7136P と比べてみます。
左側が今回外したもので、右側が私のCA-X1に付いていたものです。 見た目が違いますね。




製造年月が古い私のCA-X1に付いてたやつの方が光沢があります。 いわゆる「艶あり」ですね。
同じTA7136Pでもさらに「艶あり」と「艶なし」があるということです。




艶の有無だけでなく、形も違います。 どちらも「P」の方です。




こんなの欲しがるのなんて私しかいないかもしれません・・・眺めてるだけで幸せです(笑
ありがとうございます。



さて、オーバーホールが終わったらアイドリング電流の調整です。

エミッタ電圧を測定して調整します。 12mVに設定し、熱暴走しないことを確認しました。

本体内部の周囲温度が上昇してトランジスタのhFEが大きくなってエミッタ電圧が上昇しても
温度補償回路が効いているので自動的にエミッタ電圧が下がっていって12mV付近に補正されます。


ノイズもなく、動作良好です。




時間をかけて入念に動作確認をして完了です。


今回の修理は普段の修理とはまた違ったスリルがありました。
やはり一度他人の手でいじくってある箇所というのは色々と厄介なものなのだと痛感しました。

そういう意味ではバイクの整備に近いものがあるな、と。

あとは簡単に諦めてはいけないということですかね。
「部品が無いから出来ません。」とメーカーさんがよく言うのは、それはそれで正しいことだと思います。
「部品が無くても工夫してなんとかする」というのは、結局「一度他人の手でいじくってある状態」なので
本来の状態ではないわけです。

そう考えると、部品が無くても諦めずに工夫してなんとかしようとすればするほど
「一度他人の手でいじくってある状態」にすることになってしまうという、矛盾が生じることになります。

しかしながらそういう矛盾が生じるなかでも、やはり工夫の仕方やレベルというのはあるはずで
もし工夫して直さなければならない状況である場合に10人の修理人がいたとすると
10通りの工夫の仕方があるわけで、その中には「良い工夫」や「悪い工夫」もあると思うわけです。

だったら自分は「良い工夫」が出来る人になろう、ということを思いながら今回やってました。

出来れば工夫などせずに、壊れている部品を正常なオリジナルの部品に交換する作業で済ませたいのですが
実際には古いアンプだとそうはいかないことの方が多いですよね。

まぁ他の修理屋さんが私の修理箇所を見た時に文句が出てこないような修理の仕方っていうか
そういう目線で客観的に見ながら修理することも大事だなと思いました。

その延長線上に、「他で断られたアンプでもウチでなら修理出来る。」という感じになれれば、というか、
そういう技術が身に付けば本望ですね。

2017.10.11

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