ギターダー
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No.24「Guyatone / GA-200 Cupid 修理」


今回は数年前にヤフオクでGETしたGuyatoneのGA-200 Cupidの修理です。
5Wの真空管アンプです。オールチューブ・アンプ。




コントロールは VOLUME、TONE、REVERB、TREMOLO
















一応、音は出るんですよ。
完全に昔のアンプの音です。昔のGuyatoneのアンプの音。硬くてパッキパキの音。

私はTONEを 0 に絞ってピックアップをセンターかフロントにすることでパッキパキを回避。

基本的にクリーン・サウンドですが、ボリュームをフルにすると良い感じにドライブします。
音量も大きくなりますが、非常に心地よいドライブです。
グランド・ファンク・レイルロードのような音。

ヘヴィなサウンドは出ませんけど(笑
これはこれで心地よくて病み付きになります。

リバーブもあまりビチャビチャし過ぎず、良い感じでかかります。


ではどこを修理するのかというと・・・


VOLUMEを7か8以上にしないと音が出ないのと、トレモロが効きません。


VOLUMEを7まで上げたあたりからブツブツ、ザザザザ・・・と鳴り始めて、8以上で普通に音が出ます。
VOLUMEが6以下だと音が出ません。


このGuyatoneのCupidというアンプは検索してもあまり情報が無いんですね。
他の真空管アンプでも同じような症状でお悩みの方も多いようです。

トレモロについては、古い真空管アンプのトレモロが効かなくなることが多いようですね。
おそらく何かが劣化するとトレモロが効かなくなるのだと思います。

何とか直してみましょう。



基板を見ていきます。




なんか密集しててゴチャゴチャしてます。




うーむ・・・




出力トランスとアルニコ磁石のスピーカー。




真空管はパワー管6BQ5×1、プリ管12AX7×2です。




まずは要らない紙の裏に配線図を殴り書きで描いていき・・・




回路図を起こしていきます。

Guyatone GA-200 Cupid 回路図
ga-200_cupid_schematic.jpg

電源の平滑コンデンサには 「40.40.20uF」 と表記されていまして




端子が4つのブロックコンデンサです。




中に3つのコンデンサが入っています。

電圧を測定してみると実測でこの図で上から175V、193V、189Vでしたので
(この後の修理の過程で、実測で 245V、268V、265V、になります。)
まぁ電圧が低いのが20uFだとは思いますが
念の為どれが20uFでどれが40uFなのかを確認すべく配線を外して測定してみたところ
やはり上から27.32uF、46.87uF、46.83uF、でした。
古いコンデンサは大抵容量が大きくなってます。



図で表すとこのようになります。






さて、とりあえずVOLUMEを7か8以上にしないと音が出ないのはまず可変抵抗器を疑いましたが
抵抗値を測定するとちゃんと可変しているのでここは問題ないようです。

あとは真空管とコンデンサが怪しいですね。



真空管を新品に交換してみます。

6BQ5 は EL84 と互換性がありますので、ELECTRO HARMONIX の12AX7EH と EL84EH にしてみました。




しかし、特に症状は何も変わりません。

ひょっとしたら音質も音量も劇的に変わるかもしれないと期待していたのですが(笑
動作確認程度の比較だと、音質的にも音量的にも差はないですね。

まぁチューブ・ローリングという楽しみ方が目的で真剣に聞き比べたら
抵抗器でいうところのカーボンと金属のような違いはあるのかもしれませんが
普通に「症状」として音質も音量も何も変わらず、不具合も直りませんでした。




元々付いてたやつはNational製なのですが、新品と比べても音質・音量に差が無いということは
交換したばかりで新品に近いのかもしれません。
真空管試験機を自作したくなりました。




前の所有者が新品に交換しても症状が改善されなかったから手放したという可能性もありますね。
ELECTRO HARMONIX製 は現行品ですが、生産終了品の National製 の方は貴重なので保管しておこうかと。





原因は真空管ではないということが分かったので、コンデンサを疑います。

これと同じブロックコンデンサはなかなか見つからないので3個に分けます。
本当はこのアンプはいじくり回さずにオリジナルのままにしておきたいと思っていたので
同等品を自作する為に仕入れました。




クリップで留めて確認してみましたが、症状も電圧も何も変わりませんでした。




ちなみにこういうのは危ないので真似しないで下さいね。200Vで感電すると大変ですから。
電解コンデンサは電気を溜めてますので、電源を切ってコンセントを抜いても感電します。

基板をいじる時は必ず、電源を切ってコンセントを抜いたあと、コンデンサを放電させましょう。
放電させるにしても単にショートさせると「バチッ!!」ってなって危険なので
私は10kΩの抵抗器とLEDを介して、数秒かけてLEDが光らなくなるまで放電させてます。



ついでに自作用に仕入れたトランスに交換してみましたが、それでも症状は変わりません。
これも危ないので真似しないで下さいね。
耐圧125Vの配線材であることを承知の上で200V以上の電圧のかかる動作確認を手早く済ませてます。






原因は電源周りではないということが分かったので、他のコンデンサを診ていきます。
これは 0.02uF なのですが、片側を外して測定してみると




197.1nF になってます。uF(マイクロファラッド)ではなくて、nF(ナノファラッド)です。

つまり 0.02uF に対して、実測 0.197uF ということです。




古くて劣化したコンデンサは大抵容量が大きくなっているのですが・・・大き過ぎです。



正常な 0.022uF を仮付けしてみると 175V、193V、189V だった電源電圧が 245V、268V、265V に上がり
VOLUMEを7か8以上にしないと音が出なかったのが、5くらいから出るようになりました。




手前にある 10uF の電解コンデンサも外してみたところ




10uF のものが実測で 27.56uF もありました。

くどいようですが、古いコンデンサは大抵容量が大きくなってます。




これは全て交換か・・・



クルクルとガッチリからげてあるので外すのが大変ですが・・・




丁寧に外します。




抵抗器は問題ないのでそのまま使い、コンデンサを交換します。
見た目がショボいけどとりあえずは正常に動作させることが目的です。

0.02uF は、0.027uF、0.047uF、0.1uF、0.22uF、などに変更可です。
好みでいうと 0.1uF〜0.22uF あたりが良かったのですが、あまり冒険せず 0.027uF にしておきました。
まぁこのへんは後でいくらでも交換出来るし。




交換してこんな感じ。

この時点でVOLUME 3 くらいから音が出るようになりました。 これだけではまだトレモロは効きません。




トレモロのコンデンサと、その横の 10uF も交換します。




はんだ吸取り線を使っても足をからげてあるのでホント大変。




今度は 10uF が 32uF だ(笑




あんまりこういうことしたくないんだけどオリジナルを真似してます。
まぁラグ板の端子の数を節約出来るのと、このコンデンサと抵抗器での接触不良は起きにくいか。




どんどん外していきます。




0.02uF なのにねぇ・・・




ケタが違うんだよねぇ・・・

0.02uF のはずなのに0.22uFなんだよねぇ・・・




ここまでで外したコンデンサ。




さっき外した2つの 10uF/10V の電解コンデンサは Lily というブランドしたが
ここの 10uF/10V は RIKEN になってます。

ちょっと混み入った場所にあるので先にトレモロのコンデンサを交換してからにします。(逃げ腰・・・)




ここにも RIKEN の電解コンデンサがあります。 これだけ何故か妙に綺麗です。




とりあえずトレモロのコンデンサを交換してみます。
東信工業のメタライズド・ポリエステル・フィルム 0.022uF/630V です。
私は東信工業のコンデンサを昔から使ってますが、音も信頼性も抜群です。




クリップで仮付け。

おぉぅ! トレモロがかかりましたっ!! ポワワワワ〜ン♪




試しに 0.027uF でも確認。 かかるけど、ちょっとかかりが浅いかな? ポワワワワ〜ン♪




ということでここはオリジナル通の 0.02uF の近似値っていうか同じ 0.022uF で決定。




で、さっきの 10uF/10V の電解コンデンサも劣化してるので面倒だけど交換します。




ハンダが山盛り過ぎて酷くないですか?




取れました。

修理ではんだを外してばっかりいると、はんだ吸取り線があっという間に無くなっちゃいます。
買い置きがあるからいいけど。




分離して綺麗に足を伸ばします。




何回測っても 「これはダイオードだ」 と認識されてしまいます。 それで 33.6uF の表示です。




「まさか、測定器が壊れた!?」・・・と思って正常な電解コンデンサを測定してみると正常です。




「配線付きのワニ口クリップで伸ばしてるから浮遊容量が生じておかしくなってる!?」
と思って同じような測り方をしてみても正常です。




で、もう一度これを測ってみると 「これはダイオードだ」 と認識されてしまいます。

うむ。 やっぱりこのコンデンサは劣化してて駄目ですね。




さっさと交換しましょう。




これでさらに VOLUME の具合が良くなって正常になりました。

今回の不具合は VOLUME もトレモロもコンデンサの劣化が原因だったということですね。



さて、そしたらこれも交換ですね。 1段目の 0.001uF のカプコン。
カプコンって、バイオハザードのカプコンじゃないですよ。カップリング・コンデンサです。
絶対に劣化してるでしょう。 結局、全て交換しろってことです。




涼しい顔してるけど抵抗器2本の下にガッチリ囲まれてて、外すのが一番大変でした。




えーと、2114pF ってことは、0.002uF ってことです。 0.001uF のものが実測 0.002uF です。

このくらいじゃ驚かなくなりましたが容量が倍になってますね。




本当は自作用に仕入れたオレンジドロップの 0.001uF をクリップで仮付け。




なんと・・・!

今までよりも音がしっかり出るようになって、トレモロのかかりも凄く良くなりました。

やはり古くて劣化したコンデンサは駄目ですねー。
容量だけの問題じゃないです。


ここは音質を変えられるところなので色々と試します。

0.027uF にしてみてもなかなか良いです。




このアンプは典型的な昔のアンプで音がカン高いので 0.056uF で思いっきり音を太くしてみたら
音が太くなったのはいいけど艶が無くなってフルテン時の歪みも弱くなりました。




0.033uF まぁ普通ですね・・・ 悪くないです。




これはいいぞ!! オイルペーパーコンの Vitamin-Q です!! ヴィンテージじゃないけど!!笑

枯れた感じと湿った感じが両方出てる。いや、矛盾してるけど本当にそんな感じ。
優しく温かく枯れてるんだな。

凄くいいけどこのアンプにこれ使うのはもったいない。




こんなの持ってたよ。オリジナルのと同じようオイルコンデンサ。
でもこれは音がおかしい。 VOLUME を上げると音量が下がってしまうし、トレモロもかからない。

古くて劣化してるのと同じ音。 オイルが蒸発しちゃってるんだろうなー。




測定してみると・・・ほーら、0.047uF なのに 0.066uF になっちゃってるよ。

劣化してて使えない。
電解コンデンサだと通電させると復活したりするけど、これは復活の呪文が通用しませんでした。




こんなものあった。 松下のオイルコンデンサ 0.0047uF。 セメントで固めてあって重くて硬いです。
容量が小さい方がフルテンにした時によく歪みますね。
でもやっぱり元の 0.001uF に近いから音がカン高い。パッキパキ。 好みではないな。




どうやら 0.022uF あたりが好みの音になるようです。

ということで 0.022uF。 これ Shizuki製のはずなんだけど見た目が Shizuki じゃないかなぁ?
他の容量の Shizuki と比べてもこれだけモノが違う感じ?
だけど音は良い。 Vitamin-Q くらい良い。




これは見た目がゴージャズなペーパーコン。まぁまぁ悪くない音です。




NTK(日通工)ですね。

悪くはないけどそんなに良くもないです(笑




やっぱこれですかね・・・

SPRAGUE の(正確には SBE社製 の)オレンジドロップ 0.022uF。です。 これも良いです。
足が太いからか、しっかりとコシのある力強い音がします。 トレモロのかかりも良くなります。

もしくは単純に 0.022uF だから良いのかもしれない(笑




意外にこれも良かったです。枯れてて。 耐圧500Vのセラミックコンデンサ。




これはレアな松下のロウ漬けペーパーコンデンサ 0.02uF です。
音が小さいしトレモロもうまくかからない。 劣化しているのと同じ症状です。




測定してみるとやはり劣化してて 0.02uF のはずが 99.56nF、つまり 約 0.1uF です。
さっきから劣化してて駄目なやつはどれも ESR が 17Ω もあります。




これもレアな松下のロウ漬けペーパーコンデンサ 0.05uF です。
同じく音量が小さいです。 もう眺めるしか用途が無いかもしれません・・・




これも ESR が 17Ω もあります。 0.05uF のはずが 0.12uF です。
じゃぁ 0.12uF のコンデンサとしてなら使えるのかというと、 ESR(内部抵抗)が 17Ω もあるので厳しいです。

「俺、こんなレアなロウ漬けコンデンサを持ってるんだぜ?」 っていうだけのオブジェです。

相場1万円のBUMBLE BEEなど、ヴィンテージなコンデンサがこんな感じではないことを祈ります。






さて・・・

見た目も含めてオリジナルとほぼ同じオイルコンデンサも入手可能なのですが
デッドストックものだと未使用でも劣化している可能性が大きいです。
コンデンサを交換しても直らないという方はまずはオールドではない新品に交換することをお勧めします。


ということで・・・

様々なことを考慮して、音も良くて信頼の国産、東信工業の 0.022uF に決定しました。




修理完了です。




こんな感じ。




オリジナルのまま保存しておきたかったけど
やっぱり動作不良のオリジナルよりは正常動作する状態の方がいいですよね。
もっと高価なコンデンサがいいと思ったらあとでいくらでも交換出来ますし。



ということで・・・


結果的に、これらのコンデンサを交換したことで VOLUME とトレモロの不具合が直りました。

この GA-200 Cupid に限らず、古い真空管アンプでトレモロがかからないなど
同じような症状でお悩みの方は参考にして下さい。




電源トランスも出力トランスもスピーカーも、現在入手可能な部品でなんとか代替品が入手可能なので
オリジナルにこだわらなければまだまだ今後どう壊れても直せますね。




もちろん Fender や Marshall に比べるとこんなチャチな小っこいアンプごときでアレですが
真空管アンプ、ということで 「おぉ〜」 っていう楽しさみたいなところはあります。

回路的には Epiphone の Valve Jr. などと同じ系統ですね。
使用している真空管の種類としては Bugera の V5 も同じ系統です。

さらにこれで整流回路が 5Y3GT などの整流管なら Fender の Champ っぽくなるという感じですかね。
音じゃなくて回路的に、という話です。

このアンプの音は昔のグループ・サウンズ系やブルースっぽいものか
頑張っても70年代のハードロックあたりに用途が限られるので
現代的な歪みを出そうとエフェクターで歪ませようとしても相性が悪くて困難です。


とはいえ、これでも一応フルチューブアンプなので、トランジスタとの違いもよく分かるし
小型真空管アンプの仕組みとしても勉強になるアンプだと思います。

あとはやはり暖炉の炎や60Wの電球などの暖かみのある明かりに似た雰囲気が味わえるので
気分的な高揚があることは確かですね。

2017.11.18

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