ギターダー
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No.26「Marshall / Lead12 修理 (V19846)」


よくいらっしゃるのはアンプの修理で検索してうちのHPに辿り着いて修理を依頼して下さるパターンですが
今回のご依頼主様はうちのYoutubeの動画を見て Marshall Lead12 が欲しくなっちゃったそうで(笑
ヤフオクで入手したとのことです(笑

私はLead12は今のところ5台持ってるのですが、一応RシリアルやPシリアルが出品された時の為に
リマインダーを設定してLead12が出品されたものは全てチェックしていますので
調べたらこれもチェックしていまして、私の誕生日に落札されてました(笑


いっそのこと落札されたLead12は全てうちを経由するシステムにするとか・・・(ぇ


依頼内容はガリの修理です。
POTを交換ということで承ったので、他に問題が無ければスムーズにいくと思います。


ということで届きました。




ご依頼主様は「梱包が雑ですみません。」と謙遜されてましたが、丁寧で良い梱包でしたよ。
使い回しのダンボールでも良い梱包は出来るのだという好例だと思います。
たっぷりのプチプチに包まれていたので倒れても大丈夫だと思えるほどの安心感がありました。




モクモクモクモク・・・




どーん!! Marshall Lead12




束ねて中に入れてある電源コードが運送中にスピーカーのコーンを傷付けないようになってます。
丁寧な梱包だとホっとします。




パネルは汚れていますが、シンナー等でこの模様を落とそうとすると文字まで消えそうなので
ヘタに何かするよりは実用重視で考えた方がいいかも。良いアンプですからね。




おぉぅ!Vシリアルでした。 特にVシリアルがレアというわけではないんですけど
Vシリアルは基板の写真などの資料が少ないのでじっくりと舐めるように拝見させて頂こうと思います。
舐めませんけど。





とりあえず動作チェックしたところ、やはりガリがかなり酷いです。
音が出るポイントの方が少ないくらいなので、まともに使えない状態です。

でもガリ以外は大丈夫そうですね。

ここまで酷いガリだと分解・洗浄してもガリが取り切れなかったり、再発の可能性がありますが
今回はPOTを交換ということで承っているので安心です。

POTを交換すれば完璧な状態になって末永く安心して使えると思います。


あと、あらかじめ聞いていましたが、ハンドルの横のネジが片方ありません。
これは基板のユニット(シャーシ)を本体に固定するネジなので、無いと前面パネルがグラグラします。




黒が無くてステンレスですがとりあえず代替品を用意しました。

オリジナルのネジの頭は厳密にはプラスではなく、ポジドライブという規格なんですけど
全く同じものを探すのは困難なので一般的なプラス(フィリップス規格)の皿ネジで代用させて頂きます。

オリジナルのポジドライブ(左)と、代替品のフィリップス(右)。




ネジ溝のピッチや径はM6というサイズで同じですので大丈夫です。




あとは長さが違いますが大丈夫であることを確認します。




まず、シャーシのネジ溝側は樹脂で受けてました。




うちのはSシリアルもWシリアルも全て、5台とも金具です。
マニアの方は金具バージョンと樹脂バージョンの両方を揃えましょう!




で、ネジ溝側の深さは約10mmで




本体からネジが下に10mmは出ているので、長さは問題ないですよ、と。
こういう寸法の確認って電気的な修理と比べると地味な作業ですねー(笑
ちなみに木がバリのようにささくれているのは元々の仕様ですので。




まぁこんな感じでしっかりと固定されました。
あとはご自身で完璧を求める場合は、 「ポジドライブ 皿ネジ M6 黒」 で探して下さい。






では基板を見てみましょう!!




おおおおぉぉ!! 豪華!!




JAPAN輸出用。 87年6月26日製です。




オペアンプはWシリアル以降と同じMotorolaのMC1458CP1ですね。
SシリアルだとRCAのMC1458CP1になります。
あと私が見たことのあるVシリアルよりもかっこいい抵抗器が付いてます。




コンデンサは IskraのKEUシリーズのメタライズド・ポリエステル・フィルムで全て赤。
このコンデンサは赤と白があって(黄色もあったかな?)個体によって組み合わせがバラバラなのね。
どちらかというと初期に近いほど赤の割合が多いような気がするんだけど、気のせいか(笑
Vシリアルは私の分類では「中期型」ですが、このVシリアルは初期型寄りの中期型ってとこでしょうか。






このBOX型コンデンサの色の組み合わせが異なるのは一体何故なのか?って気になりますが
うちのWシリアルやSシリアルと比べても同じ色の組み合わせは無いんですね(笑





私が初期型と中期型を区別しているのはBIAS調整用の半固定抵抗器か固定の抵抗器かです。
これは中期型なので固定の抵抗器です。




トランジスタはWシリアルと同じですね。
TR1がMicro Electronics製のBC184




TR2もBC184




TR3がBC212です。




TR4とTR5は最終出力段のパワートランジスタでMJ3001とMJ2501です。




そしてTR6が・・・

放熱器に収縮チューブで巻かれているので見えません (ノ∀`*)アイタ




どう頑張っても見えません (ノ∀`*)アイタ




ちなみにWシリアルのTR6はBC184だったので、同じくBC184だと思います。
Sシリアルも収縮チューブがあるので、VシリアルまではTR6が放熱器に収縮チューブで巻かれていて
Wシリアルから収縮チューブが無くなったという感じですかね。






それでは・・・手術を始めます。




はんだは綺麗に除去出来ても、はんだのヤニがなかなか取れないので




裏技を使って・・・




綺麗にします。





ちなみに、このLead12の可変抵抗器は頑強な端子をわざわざねじってあって
プリントパターン面に密着させるように曲げてはんだ付けされていますので
パターン面に密着させてある端子を起こすにも、かなりの熟練の技術がないとパターンを剥がしてしまうと思います。




今までにもはんだ付けの重要性については何度も言ってきましたが
自分が使うはんだの融点の把握とコテの温度管理や、イモはんだや天ぷらはんだの理解、はんだ付け後の確認など
はんだ付けを行う際の知識と技術も、それはそれで重要ですが
もっと重要なのは 「はんだを除去する技術」 であるということです。

自信のない方はプロに任せましょうね。
うちでは、もし銅箔のパターンが剥がれてちぎれて無くなってしまった場合でも修復出来ます。(宣伝)


ということで・・・



はい、さようなら。




はい、こんにちは。





(`・ω・´) シャキーーーーン!! 取り付け完了!!




動作良好です。

完璧なMarshallの音。


あのJCM800を彷彿させる、Marshallの音です。


Lead12は音に個体差がありまして、とは言ってもどれもLead12の音の中での個体差なので
ネットでよく言われている

「Sシリアルは部品も良いし他のに比べて音がいいんだ。」

という評価を鵜呑みにするのはあまりお勧め出来ませんが、実際に複数のLead12を弾き比べると
本当に個体差があるんですよ。

なので実際に音の個体差の原因を探って検証してみたところ、
No.17「Marshall / Lead12 比較・検証」 で明らかになりましたが、Lead12のサウンドの肝は エミッタ抵抗 です。

音量の個体差は可変抵抗器の許容誤差によるものでしたのでシリアルによらず個体差が生じますが
音質的な個体差はエミッタ抵抗による部分が大きいのです。


そして、このVシリアルのエミッタ抵抗はWシリアル以降と同じ TY-OHM製 でした。




Sシリアルは中音域寄りで、それに比べるとこちらはやや低音が出ますが
どちらもLead12の音であることには変わりないので、シリアルによる優劣は付け難いですね。



あとは外装をちょっと掃除します。

なんか白のラッカースプレーが飛び散ったような跡があって気になったので・・・




こういうところも。




なので出来るだけ綺麗に落としてみました。




うむ。




キャビネット内を掃除機かけたりスピーカーの鉄の部分などを拭いたりして・・・




完了です。






可変抵抗器(POT)にガリが出た場合、酷くなければ分解・洗浄で直せるんですけど
程度によっては分解・洗浄だとガリが再発したりすることも多いようなので
やっぱり代替品があるならオリジナルのままにこだわらず新品に交換したほうがいいと思いました。
よく考えてみたら消耗品ですからね。

ただし昔のアンプだと、機種によってはどうしても代替品が無いようなアンプもありますので
そういうものは分解・洗浄で対処するしかないので、分解・洗浄の腕も上げるよう鍛錬しないとですね。

全ての技術を向上させ、不具合を発見する勘を養い、さらに修理経験を積んでノウハウを蓄積し、
互換品や代替品を選定するセンス、代替回路やオリジナル回路を設計するセンスを磨き、
それらをアンプやエフェクターの設計・製作に役立てるように精進する、と。

うーむ。

2018.5.16

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