ギターダー
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No.33「YAMAHA / F50-112 修理」


今回はYAMAHAのギターアンプ、F50-112の修理依頼です。

状態ですが、

・中古で購入、通電はします。
・音出し確認をしようとしたところ、音が出ず
・いろいろノブ廻してるとパラメトリックイコライザーのQのノブをいじると爆音
・(パラメトリックイコライザーのQの)可変抵抗器を新品に交換したのですがどうも音だすのが恐ろしくて

とのことです。

爆音系は私でも恐ろしいです(苦笑


毎度のことなのですが、いろいろなショップに問い合わせても
古い、部品がない、別のを購入されたら・・・などと断られ続けたとのことです。

おそらく技術的に直せるか直せないか以外の事情もあるでしょう。
時間的な効率とか、オリジナルの部品しか使わないとか。


あと
・可能であればヘッドホン端子を増設して欲しい
との追加がありました。



なお、修理代金の説明とともにあらかじめさせて頂いた様々なリスクの説明をよくご理解頂けて

・修理期間等の制約はありません。
・代替、互換品の使用で十分です。
・オリジナルの音色にはこだわりません。

とおっしゃって頂いたので、気分的に落ち着いて作業が出来ます。 助かります。

もちろん、あくまでも万が一の為の様々なリスクの説明を提示したことによって
そのようにおっしゃって頂いたのであって、
ご依頼主様が音にこだわりがないわけではないことは分かってますし
代替品に交換したからといって「音が変わってしまった。」ということは今までにもないですし
修理期間についても出来るだけ早く仕上げるように努力しています。

また、ギターアンプの音の個性を左右する可能性のある最終段パワートランジスタなどはなるべく温存し、
もし重要な部品の交換が必要な場合や、加工を要するなどの場合には
あらかじめ了解を得るなどその都度対応することにしています。


さて、それでですね・・・外回りをご自分でレストアされたとのことで
事前に購入時の写真とレストア後の写真を送って下さいました。


購入時写真1




購入時写真2




購入時写真3 (レストア前)




レストア後写真1 (凄く綺麗になってます。)




レストア後写真2 (サランネットも交換したんですね。)




素晴らしいです。
かなり綺麗になってます。 凄いなぁ、と感心したと同時に

これはなんとしてでも修理しなければ、と思いました。



届きました。

これだけのレストアをするくらいですので、さすが梱包も丁寧でした。




他の皆さんもいつも厳重に梱包して送ってくれているのですが
たまに感心するような工夫をされているものがありまして、今回その一つでした。




プロ級の梱包ですね(笑
とても守られている感じです。






あらためてご紹介します。

YAMAHAのギターアンプ、F50-112です。




AとBのチャンネルがあります。




TREBLE、MIDDLE、BASS




パラメトリック・イコライザーがこのアンプの特徴ですね。




レストアされてるので新品のように綺麗ですよ。









スピーカーがジャックで抜き差し出来て
1つ繋ぐ場合は4〜8Ωのスピーカー、2つ繋ぐ場合は8〜16Ωのスピーカーをということですね。
並列になる仕組みだということが分かります。




スピーカーはJA3066、60Wですね。




リバーブユニットには豪華なカバーが被せてありまして




ネジ留めまでされていますのでとりあえずそっとしときます(笑




ご自分で交換されたオリジナルの方の可変抵抗器を同梱して下さいました。






アンプの裏側に檻があって何者かが閉じ込められています・・・




ファイナル(最終段パワートランジスタ)だ!!

2SC898です。




コンプリメンタリじゃないタイプで、2個とも2SC898ですね。
回路図は無いのですが、これを見ればもう「C-E分割型」であることが分かりますし
SEPPアンプの回路が目に浮かびます。




ちなみにオーディオアンプとしてはコンプリメンタリ型の方が主流というか
C-E分割型よりも新しくてHiFiアンプに向いているというのはありますが
個人的にはギターアンプとしては、特にどちらの方が良いということはないと思います。

例えばうちにあるアンプだと
MarshallのLead12はMJ2501とMJ3001のコンプリメンタリ型で
JC-55も2SB1017と2SD1408のコンプリメンタリ型です。

RolandのSPIRIT20は2SD313のC-E分割型で
GuyatoneのGA-580も2SC793のC-E分割型、MaxonのGX20も2SD526のC-E分割型と
やはり古いアンプはC-E分割型であることが多いようですね。

どれも良いトランジスタアンプなので
本当にコンプリメンタリ型とC-E分割型でどちらが良いとかっていうのはないですねぇ。

あと私の好きなFenderのSidekick 10 DeluxeやSidekick Reverb 10はICアンプです(笑

やはりギターアンプはプリアンプのイコライザー回路で音が決まるのだと思います。



では基板のユニットを抜きます。

基板を固定しているこのネジと細長い金具に注目です。




ネジが思ったよりも長く、しかも金具の溝にピッタリはまりました(笑

これ絶対にネジを置く為にこういう金具にしてますよね(笑




取り出しました。




ふむふむ。




意外とサッパリしてますね。




これは電源基板とでも呼べばいいんですかね。




早く交換したい。




こっ、これは・・・珍しい。

デュアルダイオードのS5151とS5151Rによるダイオードブリッジです。




すごいすごい。




これは片方は2SA490ですけど、もう片方の型番が・・・

ちなみに2SA777も確認。




フラッシュ焚いたら見えました。 2SD726ですね。2SC1509も確認。




FETの2SK30Aが2個と2SA970




レアなデュアルダイオードは温存して
電解コンデンサとトランジスタは全て交換します。




トランス。




おぉー、このケーブルの留め方・・・懐かしい。

YTA-95と同じじゃないですか。 そういえばYAMAHAですもんね。メーカーの個性ですねー。






と、ここでもう電源を入れて状態を確認しちゃいます。

突然爆音が鳴るのとかはガリのせいなので、それ相応の対処をして慎重に鳴らします。

はいはいはい、やはりガリですね。

新品に交換してあるはずのQのガリでたまに爆音というか、鳴ったり鳴らなかったりします。
よく確認してみると、隣のLEVELのガリが関与してますね。 パライコのLEVEL。

しかしとりあえず音が出ることは確認できたので、再び基板の確認をします。



シャーシーをひっくり返して底にぶら下がっている電源の平滑コンデンサ。

100V / 2200μFです。日本ケミコン製ですね。 これも交換しますよ。




で、これは先ほど見た檻の中に2SC898が入っていたところですが




その反対側に何かのカバーがしてあります。




はいー、ここにも基板。 パワーアンプの基板です。




このアンプは基板に色々と印刷されているのでとても分かり易いんですよ。

抵抗値もコンデンサの容量と耐圧も、何の半固定抵抗器なのかまで全て書かれてます。




ドライバー段の2SC1624が2個。 トランジスタと電解コンデンサは全て交換しますよ。




あとこれ、見づらいけど2SA814ですね。




エミッタ抵抗が0.22Ωで、2SA970と2SA872A、2SA777を確認。




2SK30Aが2個。 これはもう初段の差動増幅回路がFETってことですよね。

隣にある4.7kΩの半固定抵抗器は差動増幅回路のバランス調整用です。これで中点電位も動きます。
ここは調整しないものが多いですけど、これが付いてるということは
もう一つトランジスタによる差動増幅回路があるという察しが付きます。
2SA872Aが2個あったのでそれだと思います。




ちなみにこの差動増幅回路の2つの2SK30Aは、周囲温度を同じにしたいので
IDSSを揃えることはもちろんのこと、出来ればエポキシ接着剤で貼り合わせるのがベストです。

でもこれはギターアンプだからか、あまりこだわっていないようで離れてますね。



この2SA970の後ろにある470kΩの半固定抵抗器は「C.VOLT」と書いてあるので
中点電位のゼロ調整用ということだと思いますが、どちらかというと
先ほどの差動増幅回路のバランス調整で中点電位がほぼ決まるので、こっちは微調整になります。




残る470Ωの半固定抵抗器がアイドリング電流の調整用です。親切に「IDRING」と印刷されてます。




よくあるのは1kΩですがこれは470Ωなので調整しやすいと思います。
1kΩだとちょっと動かすと結構変わっちゃって調整がシビアなんですよね。
半固定抵抗器に対して抵抗器を並列に繋いで合成抵抗にして可変幅を少なくするやり方もあります。
ただし可変幅が狭いほど調整はしやすくなりますが、調整範囲から外れてしまう場合は
前後に抵抗器を追加するなどの処置が必要になってきます。



次にプリアンプの基板を見ていきます。




基板のはんだ面も記号が印刷されていて分かり易いです。




コーティングされているのか妙に基板がテカテカしてますが
やっぱギタリストとして最初に目がいくのはこれですね。

艶有りオペアンプ4558DVです。
4桁シリアルなのでコーティングのテカテカがなくても艶があると思いますが
元々の艶なのかテカテカのコーティングなのか分かりづらいです(笑




4558のDやDDに比べると、DVの方がやや暴力的なイメージがあります。
何故そういうイメージなのかは分かりませんが。




全部で6個もありました。 レアです。

うーむ。




おぉ、専用ICか? と思ったらただのリレーでした。
A /B のチャンネルの切り替え用でしょうね。(他人事)






おぉ、今度こそ専用ICか? と思ったら(やや脚色してます。)アンプICのTA7220Pでした。
TA7240ならFender Sidekick用に大量にストックしてます。

リバーブのドライブ用です。






トランジスタを交換するのに型番を見ていきます。



2SC1509と・・・なんだこれは!? 型番が消されてる??




2SK30Aと・・・こ、こっちも型番が消されてる??




まぁべつに型番が不明でも基板に印刷されてるマークでNPNトランジスタだと分かりますし
トランジスタ・チェッカーで端子配列やNPNかPNPかを調べれられるので問題ないのですが、
消されているのではなくて、消えてしまっているだけのようです。

2SC2240という型番が薄っすらと確認出来ました。
この基板にある2SC2240は3個とも型番がほとんど消えてしまっています。

考えられるのは、過去に行って歴史を変えてしまった為に、2SC2240の存在自体が消滅してしまいそうに・・・






オーバーホール(ほぼ全ての電解コンデンサとトランジスタを交換)する前に
パライコのQのつまみのガリを直しちゃおうと思います。

どうやらこのFシリーズはパライコのつまみのガリが酷いのが特徴らしいです。

これはご依頼主様によって既に交換してあるのですが、実はこのマークに見覚えがありまして




言いづらいのですが・・・
私が回路をいじり始めた初期の頃に安いからと思って使ったらすぐに壊れたので
私の中では「壊れやすいからもう使わない。」と認定したブランドのマークなのです。

(ちなみに私は不良になった部品もなるべく捨てずに、資料として保管しています。)

同時に、たまたまかもしれないので皆さんにはこの情報を鵜呑みにしてもらいたくはないという思いもあります。
何でも自分で確認して判断することが大事だと思います。




ということで、同梱してもらったオリジナルを直して元に戻すことにします。




そんなに酷くない感じでした。




いつものように、ギターで音を出してガリを除去出来たことを確認します。




で・・・

どうもですね・・・

Qの可変抵抗器にはもうガリが無いのに、隣のLEVELの目盛りの位置によって
Qのつまみをある位置にまで回した時にガリと同じ症状が出たりと不安定なのです。

もしかすると、周波数帯域の山を調整するというパライコのQ特有の、
僅かなガリの周波数帯を持ち上げて強調してしまうような性質のせいもあるのではないかと。

なので、LEVELにもガリがあるのでそれも徹底的に除去します。




LEVELの可変抵抗器はセンタータップ付きでした。

なんかグリースが汚いので




綺麗に拭き取ってからモリブデン・グリースを塗り直しました。




このガリを徹底的に除去したらどうやらパライコ全体のガリが無くなりました。

やはりパライコの可変抵抗器同士の相互関係や、Q特有の周波数帯域の影響があったのかもしれません。
(ちなみにガリの確認作業の関係で途中でシリコングリースに塗り直しました。)






ではオーバーホールを開始します。

交換するトランジスタと




電解コンデンサ

後述しますが、電解コンデンサはこのあと、この写真のものから一部変更になります。




実は電源基板とパワーアンプ基板がはんだ付けで繋がっておりまして




奥まったところのはんだを外さなければならなくてちょっと面倒でした。




はんだを外した後のパワーアンプ基板は、
放熱器の2SC898を外せばトランジスタソケットごと外せます。




今までの他の修理記事を読むと分かると思うんですけど
放熱器に密着させる為のシリコングリースを塗り過ぎているやつが結構ありまして
ピンやソケットの穴にグリースが付着しているのとかがあるんですよ。
そうするとシリコングリースは絶縁性があるので接触不良になっちゃうんですね。
これはどうかなー?と思っていたのですが、ピンには付着していなくて大丈夫でした。




では電源基板から。

2SA490と2SD726は互換品や代替品すら入手困難で、やむを得ず同じものを仕入れました。
同じものなのに「やむを得ず」っていうのもおかしな言い方ですが、プレミアが付いて値段が高いので
安くて流通性の良い代替品があれば代替品を探す方が良いと私は思っています。

ということで2SA490と




2SD726




2SC1509はオーディオアンプの修理でもよく使う2SC2235-Y




2SA777は2SA965-Y これもよく使いますね。
よく使うので馴染み深いからか、ランクまでセットで書かないと落ち着きません。




2SA970はそのまま新品に交換して




2SK30AはUTCの2SK303Lに交換します。




交換前がこんな感じだったのが




電解コンデンサも交換してこんな感じになります。






次はパワーアンプ基板です。

2SC1624の互換品をトランジスタ互換表で調べると2SC1567Aとか2SD600Kとか載ってるのですが、
2SC1624がコレクタ損失15Wなのに対して2SC1567Aは1.2W、2SD600Kは8Wなんですよ。
他のも定格や入手性を考えると駄目で、仕方なく互換表は無視して自分で探した結果、
2SC669Aにしました。

これは個人的に歪みに使用すると良いと思っているので一応在庫はあるのですがこの機会にまた仕入れました。
まさか歪み以外で使うとは(笑




2SA814は2SA985Aにしました。




2SA872Aは2SA970に交換します。




2SC1509や2SA970は先ほどと同じで
2SK30Aも先ほどと同じくUTCの2SK303Lに交換しますが




既に説明したように、初段の差動増幅回路用のFETはIDSSを揃えます。






電解コンデンサは
33μFで160Vというのと1μFで160Vという大きな耐圧のものが金色のFine Goldには無かったので
見た目の豪華さは感じないかもしれませんが、33μFは250VにしてFine Goldと同じニチコン製




1μF/160Vもニチコン製ですので、性能的に全く遜色はありません。




また、10μで80Vというこれまた大きな耐圧のものはルビコンの10μ/200Vにしました。
これも黒いので見た目は地味かもしれませんが性能的に全く遜色はありません。




ついでにこれはNP(ノンポーラ)といって極性がありません。
これもニチコン製のBP(バイポーラ)に交換します。
NPは「極性はありません。」で、BPは「向きはどちらでもいいです。」ということですので
NPとBPは呼び方が違うだけで結果的には同じです。




交換前がこんな感じだったのが




電解コンデンサも交換してこんな感じになります。






次にプリアンプの細長い基板ですが、ここで誤算が。




なんと、10μFの1個だけがバイポーラだと思っていたら
4.7μFの3個と1μFの7個、ほとんど全てがバイポーラでした。

全て有極性のFineGoldで用意してしまったのでちょいと焦りましたが

一応、電子部品店かっていうくらい壁一面の棚に収まらないくらいの各種の在庫があるので

確認してみたら・・・ありました。

よかった。

4.7μF/50Vのバイポーラと




1μF/50Vのバイポーラは日本ケミコンのもありましたが




ニチコンのもあったので、他のに合わせてニチコンにします。




こうなりました。




こんな感じですね。




うむ。






オーバーホールしたら調整です。




差動増幅回路のバランス調整と中点電位のゼロ調整は微調整程度で済みましたが

このアンプは温度補償回路が今どき珍しいダイオード方式でして

えーと、これですね。温度補償用ダイオードが放熱器に取り付けてあります。




経験上、というか気のせいかもしれませんが
トランジスタ方式に比べるとダイオード方式の方が不安定なイメージがあるので
アイドリング電流の調整は入念に行います。

回路図もマニュアルも無いのでアイドリング電流をいくら流すのかは自分で決めます。
出力の小さなアンプなら12mAとかでもいいのですが、
このくらい大きな出力のアンプだと20mA〜40mA前後あたりが相場で、あとは安定度などを見極めて決めます。

電源投入直後と暖まってきてからでも全然変わってしまいますし
あまり小さいと安定しないし、あまり大きいと熱暴走の危険性も出てきます。
ダイオード方式ということも考慮して45mAを流すことにします。

エミッタ抵抗が0.22Ωですから、0.22×0.045=0.0099
0.9mVですので、キリのいいところで10mVにします。




実は自分の自作オーディオ・アンプがダイオード方式なので慣れてます(笑
アイドリング電流0mAから徐々に10mVを目指して上げていき、熱暴走しないことを確認したら
電源投入直後からの不安定な初動が過ぎたら、1分おきに測定していきます。

ハンディタイプのテスターだと乾電池が消耗するので据え置き型のマルチテスターがあると便利です。




10.00mV
10.02mV
10.06mV
10.75mV
11.07mV
10.84mV
9.99mV
9.71mV
12.02mV
12.47mV



12.46mV
12.38mV
12.23mV
12.14mV
12.02mV
12.19mV
12.07mV

だいたい12mV付近で安定してきたので、再度10mVに調整します。

10.00mV
9.78mV
10.33mV
9.96mV
9.98mV
9.99mV
10.02mV
10.04mV
9.99mV
9.98mV
9.96mV
9.99mV

安定してます。

これ、ずっと9.99mVだからって10mVにしようとすると、10.8mVとか11mVになりますから(笑
これでOKです。

例えばこのセッティングで、完全に冷えるまで置いてから再度測定すると
電源投入時には3.4mVくらいです。約15mAですね。

つまり、ちゃんと暖まって安定した状態でセッティングする人と
完全に暖まる前にちゃちゃっと調整して終わらせてしまう人では、調整結果も変わってしまいます。

冷えた状態と暖まった状態の両方のバランスを考慮しながら調整すると良いと思います。



さて、次はヘッドホン端子の増設も依頼されてますので
色々なやり方があるのですが、今回はRolandの SPIRIT 20 方式でいきます。

ジャックはMJ-188を使います。あと抵抗器2本。




ヘッドホンのプラグを差し込んだ時にはスピーカー出力の回路を切断してスピーカーからの音が消えて
同時にヘッドホンの回路が繋がってヘッドホンだけに最適な出力信号が流れるようにします。

その為の全てのスイッチングをジャックの配線だけでコントロールしなければならないので
ジャックの導通をテスターで確認します。

プラグをINするかしないかで端子の接続が変わります。
さらには差し込むのがノーマルプラグかステレオプラグかでも端子の接続が変わります。




自分だけしか分からないであろうメモ(笑




で、ヘッドホン端子を増設する前の出力部分の直流内部抵抗が6.8Ωで
ヘッドホン端子を増設することによって、ヘッドホンを差し込んでいない通常時に
結果的に430Ωの抵抗が直流内部抵抗と並列接続されることになるのですが

6.8Ωと430Ωの合成抵抗ですので

1÷(1÷6.8Ω+1÷430Ω)=6.71Ω

ということで6.8Ωに対して6.7Ωなので問題ないわけです。

面白いぞ、ヘッドホン回路。



でもこれ、よく理解していない人が真似して一歩間違えると
スピーカー端子の+と−をショートさせて危険な状態になる恐れがあるので
あえて回路図は載せません。
分かる人は分かるだろうし。





さて、バラックで良い感じに動作することを確認して




本体に穴を開けるわけですが、なんとここに丁度良い場所があるじゃないですか!!

なんだろうね、これ。




ここです。ここ。




形と大きさでボール盤が使えないのでハンドドリルを使いますが
最適な下穴と最適な回転数と最適な送り速度で穴を開けていきます。




一方、セメント抵抗器を接着し・・・




ジャックの配線を下ごしらえ。




うむ。




そして、取り付けて配線します。




素晴らしい。 最初からそこにヘッドホン端子があったかのようです(笑






さて、色々と無事に終わりそうなので最後にこれ。

電源の平滑コンデンサを交換します。 2200μF/100V です。




電解コンデンサって劣化すると上部が膨らんでくるんですよ。

これ、膨らんでますよね。




これもニチコンです。 コンデンサバンドも交換します。




配線してこんな感じですね。




取り付けました。




文字が書かれている方から見た方がかっこいいですよね(笑






そうそう、これどうりでリバーブが心地よいと思ってたら
ご依頼主様の話によるとaccutronics社製だとのことです。

スプリングリバーブはショートディレイのようなタイプやビチャビチャするタイプなど色々あるなかで
私はFenderのSidekick 10 DeluxeとSidekick Reverb 10のリバーブが好きで
Sidekick Reverb 10に搭載されているリバーブがaccutronics社製なのです。
10 DeluxeのFenderオリジナルリバーブも違いが分からないくらい似てて良いのですが。




ということでカバーを外して確認してみます(笑




accutronicsの刻印を確認しました(笑






最後に念の為もう一度アイドリング調整をして、しばらく弾いて動作確認をして、

修理完了です。




お疲れ様でした。






(修理後記)

終わってみれば今回の修理は自分の中では
後から追加で依頼されたヘッドホン端子の増設がテーマだったと思いました。

理屈は分かっていましたが、いざヘッドホン端子が無いアンプにヘッドホン端子を増設するとなると
意外とジャックの端子の配線が複雑で入念に確認しないと心配だったり、
今回のアンプはスピーカーの端子が2つあってスピーカーを1つだけ繋ぐか2つ繋ぐかがユーザーの自由である為に
どのような使い方をしてもヘッドホンのプラグを差し込んだらスピーカーの音が消えて
自動的にヘッドホン出力になるようにするというあたりで、一瞬ですが迷ったりしました。

あとはこのYAMAHAのFシリーズのパライコのつまみのガリは出やすいようですが
どうもパライコのQの周波数帯域を持ち上げるような特徴のせいなのか
パライコのLEVELのガリとつまみの位置が、Qのつまみのガリの症状と相互関係があるような感じでした。
ちょっとのガリでも目立つ周波数帯があるということなのでしょうか。

あと全体的に見て創りが良いですね。
随所に同じくYAMAHAのYTA-95を彷彿させる箇所が見受けられました。
基板の設置とか配線材の束ね方とか取り回しがしっかりしているんですよね。

個人的には歪ませてヘヴィなサウンドを出すにはちょっと向かないと思いますが
クリーンはとても良く、私の好みの音でした。
リバーブも良いですし。

少し前から古い真空管アンプも入手したりして良いなと思ったりしていたのですが
やっぱりトランジスタ・アンプの良さというのは絶対にありますね。

今回のアンプは、トランジスタ・アンプの良さを思い出させてくれたアンプでした。

2019.3.2

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