topページ
|
_______________ |
No.34「Guyatone / GA-640 修理」
トランジスタアンプが好きである私でも、当然、真空管アンプに対する魅力は感じてます。 特に昔の小型真空管アンプは骨董品のような味わいもあって良いですね。 今まで GuyatoneのGA-200 Cupid や TEISCOのExpress6 などを入手してきましたが またまた良さげな年代物の真空管アンプを入手しました。 Guyatone の GA-640 です。カタログによると20Wです。 前から欲しかったアンプで、わりと状態の良い個体が入手出来て良かったです。 まぁ状態が良いといっても、 ・電源ランプが点かない ・リバーブが効かない ・トレモロが効かない という感じで、音は出るとのことです。 コントロールはVOLUME、BASS、TREBLE、REVERB、INTENSITY、SPEED、です。 INTENSITYとSPEEDがトレモロです。 これ、大型真空管アンプみたいにスタンバイ・スイッチがあるんですよ。 電源のパイロットランプが点かないとのことなので電球を見てみようと思い・・・ グラグラさせたら点きました!! 錆びてて接触が悪かっただけのようです。 シリアルナンバーの上に「W」の刻印。 背面パネルにはヒューズBOXと電源スイッチとコンセントと、 トレモロとリバーブのフットスイッチ用のジャックがあります。 スピーカーにはラベルがありませんでしたが見た目からして純正っぽいです。 実はTEISCOのExpress6と同じ大きさかと思っていたのですが、意外と大きかったです・・・ 高さ60cm、幅44cm、奥行き23cm でした。 ガオー!! 上空から。 内部の様子。 音は出ました。リバーブとトレモロはかからないですね。 まぁ今までの経験からして原因はまずコンデンサの劣化で、リバーブユニット自体さえ壊れていなければ 余程のことがない限り直りますので今のところ何も悩むことなく不安もないです。 ※ Express6の例もありますし、この、「リバーブユニット自体さえ壊れていなければ」 というのがミソです。 真空管は 6BQ5 × 2、6AV6 × 1、12AX7 × 2 です。 6BQ5 と 12AX7 はエレハモの現行品が入手可能ですが 6AV6 はどうも見当たらないので 今後の予備としてNationalのデッドストックを入手しておきました。 ゲッターも丸々残ってるし綺麗なので、たぶん未使用だと思います。 左がもともと付いてたやつ、右が今回仕入れたデッドストック。ゲッターの量の違いが一目瞭然です。 とりあえず基板ユニットを抜いて、各部の電源を測定したり部品を眺めてニヤニヤしたりします。 ラグ板ではなくてプリント基板でした。 ラグ板の方がレトロでかっこいいと思うんですけど、このプリント基板もレトロでかっこいいですね。 パターンが表を向いていて表からはんだ付けするというのは作業もしやすいです。 回路図が見当たらないので自分で配線を追っていくわけですが・・・ 意外なことに気付きました。 ・カソードがGNDに直結されていいること。 ・別電源(C電源)からグリッドにバイアス電圧が来ていること。 トランスのこの30VがC電源用です。 つまり、パワー管が固定バイアスなのです。 普通は真空管でこういう小型コンボアンプは自己バイアスが当たり前だと思っていたので意外でした。 固定バイアスということは、パワー管を交換する度にバイアス調整が必要になります。 ただし例外もあります。 【自己バイアス】・・・バイアス調整をする必要はありません。(小型真空管アンプなど。) 【固定バイアス(電圧固定型)】・・・バイアス調整をする必要はありません。(メサブギーなど。) 【固定バイアス(電圧可変型)】・・・バイアス調整をする必があります。(マーシャルなど。) メサブギーは固定バイアスですが、 真空管は特性の揃ったメサブギー専用のものを使うように指示されていて、ちょっと特別な感じです。 自己バイアスか固定バイアスかは回路のカソード抵抗の有無やC電源の有無で分かります。 固定バイアスの電圧固定型と電圧可変型はちょっと見分けが微妙というか、明確ではないですね。 おおよそ半固定抵抗器や可変抵抗器などが付いていれば電圧可変型というで、 半固定抵抗器や可変抵抗器などが付いていない場合は調節が出来ないものということで電圧固定型だと判断しますが アンプによっては抵抗器そのものを選別して取り付けることで調節するタイプもあるので メーカーが「これはバイアス調整の必要はありません。」と言えば電圧固定型という認識でいいと思います。 そうするとこのGA-640の場合は、半固定抵抗器や可変抵抗器などが付いていないので 電圧固定型の固定バイアス方式ということで、バイアス調整をする必要はないアンプということでいいかと。 しかしグリッド電圧がおかしいんですよねー。 プッシュプル回路なので6BQ5による増幅回路がが2つあるわけですけど 片方が−7.7Vで、もう片方が+1.1Vなんですよ。 固定バイアスのバイアス電圧はグリッドにマイナス電圧をかけるので、+1.1Vというのはおかしいです。 まぁ、バイアスがずれている、狂っている、ということです。 これはやばいことです。 トランジスタアンプのバイアス調整もそうですけど、バイアスが狂っていると 最悪の場合、熱暴走して火事になります。 少なくとも真空管が早く痛んでしまいます。 このコンデンサが原因だと思います。 これですね。 経験上、こういう古いオイルコンデンサは絶対に劣化していることが分かってます。 リバーブが効かないのもトレモロが効かないのもオイルコンデンサの劣化が原因だと思ってます。 少なくとも今までの2台(Guyatone / GA-200 と TEISCO / Express6)はそうでした。 しかもこのような古いオイルコンデンサや電解コンデサは劣化により容量が肥大しています。 容量抜けで減るのではなく、容量が肥大してしまうのです。 また、容量だけでなく内部のインピーダンス等の抵抗成分も大きくなるので、電気的に悪さをするのです。 まぁ実を言うと最初から、 「全てのコンデンサを交換する必要があり、交換すれば直る。」 と思っています。 ただしこれを文章だけで鵜呑みにして「ネットの情報」として 「コンデンサを交換すれば直るらしい。」と、端的に解釈してしまうことは危険だと思います。 他にも考えられる原因はありますし、先に直さなければ電源すら入れない方が良い場合もあるからです。 例えば、リバーブとトレモロのフットスイッチのジャックのHOTがGNDと導通してしまっていても 常にOFFの状態になってしまってエフェクトが効きません。 そういうことは最初にテスターでチェックしていますし、 当たり前過ぎてここに書いていないような確認事項や注意点も多々ありますので。 ということで、本当は全てのコンデンサを交換してしまえばいいのですが 一応、ピンポイントで「これが原因だった」という箇所を特定してみたいのと オリジナルの状態(オリジナルの部品)に価値があると思っているのでなるべく交換したくないっていうか(笑 結局は全て交換するんですけど、わざとのったらのったらやってます。 外して測定してみると、0.05μFのはずが0.12μFでした。 (テスターが「nF」表示なので分かり難いと思いますが、115.7nF = 0.1157μF です。) 先ほど言ったように、容量が肥大してます。 2倍近くになってますね。 ということで、とりあえずここだけ手持ちのフィルムコンデンサに交換しました。 このコンデンサなんですけどもね・・・ 実験や遊びで使うのに在庫として管理してない台湾製のコンデンサがいっぱいあって まだ仕分けしていないのもダンボールにどっさりあるのでどんどん使わないと。 台湾製なのでブランド志向の人には向かないかもしれませんが 工業製品として品質はしっかりしてます。 まぁ実験や自分のアンプの修理とかにしか使い道は無いんですけど・・・ 交換したら、−7.7V と +1.1V だったのが、−7.9V と −11.7V になりました。 電位がマイナスになっただけでもかなり正常になってきましたが まだ左右の(回路図でいうと上下の)バランスが取れていませんので、 もう片方のコンデンサも交換しました。 すると、両方とも −12.1V で揃いました。 さて、ここでこの真空管、6BQ5 のデータシートを見てみると・・・ プッシュプルの回路でB級動作をさせる場合のグリッド電圧は −11.6V 〜 −14.7V が最適。 というようなことが書かれてます。 なので、−12.1V になったということは正常なバイアス電圧になったということでよろしいかと。 ついでにその下に、A級シングルの場合は、カソードバイアス抵抗は270Ωが最適。 というようなことが書かれています。 さっきのはB級プッシュプルなので固定バイアスということでグリッドにバイアス電圧をかけましたが A級シングルの場合は自己バイアス(カソードバイアスとも言います。)ということで、 カソード抵抗の抵抗値によってバイアス電流を調節するということです。 これは GA-200 Cupid に当てはまります。 実際、 GA-200 のカソード抵抗は250Ωですのでだいたい合ってますね。 さて、もう全てのオイルコンデンサと電解コンデンサを交換してしまえばいいわけですが というか全てのコンデンサを交換すべきなのですが、 今度はリバーブを鳴らしたいですねー(笑 回路的には0.01μFが2個と20μFの電解コンデンサ1個が該当します。 とりあえず今は常備在庫している適当な手持ちのコンデンサを取り付けて確認だけして あとで何かもっといいやつ?にでも交換すればいいやと思っているのですが 0.01μFは最終的に手持ちの高耐圧のセラミックを取り付けたいと思っているので これが本番ということで、0.01μF / 500V を取り付けます。 他の箇所でも使うので3個必要です。 電解コンデンサは数種類の在庫があって、 本当は一番上のアキシャルリードがいいんですけど仕入れないと数が足りないので とりあえずニチコンのFine Goldにでもしとこうかと思ったんですけど、 なんか金ピカなのもいやらしいかなー、と思って汎用の電解コンデンサにしました。 取り付けてこんな感じです。 汎用の電解コンデンサの見た目が淋しいと思ったらあとで交換すればいいかなと。 おぉーぅ、 シャーシーをコンコン♪って叩くとリバーブがボワンボワンって鳴るようになりました(笑 リバーブユニット自体は壊れていないということですね。 しかし、まだ普通に弾いている時はリバーブがかかりません。 どこか他の箇所が間接的に影響しているようです。 うーむ。 でも他のコンデンサはエフェクトは関係ないノーマル音の回路部分に該当するものであって 劣化していても普通に音が出ていることから、リバーブには関係ないように思えるんですよね。 ちょっとだけ、「原因はコンデンサじゃないのかも?」という気配もしてきました。 念の為、関係ないはずですが、一応、同じ真空管の中のもう一つの回路のカソードの電解コンデンサも交換します。 交換しました。 汎用の電解コンデンサでも性能的には充分ですし、 容量や耐圧によってはニチコンのFGよりも値段が高かったりします。 逆にかっこよく思えてきませんか? まぁやはりこれは関係ないので想定通り何も変わりません。 さーて・・・ もう何も考えずにとりあえず全てのコンデンサを交換してから考えた方がいいんですけどねー(笑 何をモタモタ遊んでるんですかねー?(爆 もうちょっとモタモタしてみましょうかね・・・ 基板を追って回路図を書き起こしている途中でまだレイアウトも手直しの余地はありますが 今のところ、交換したコンデンサはこれです。 で、入力の方の12AX7のプレート電圧が実測90Vで、ちょっと低いように思うんですよ。 まず、実測218VのB電源が来ていて、リバーブのドライブ回路用の12AX7(2/2)には 220kΩの抵抗器を介して115Vのプレート電圧になってますよね。 それはいいとして、 同じく218Vから250kΩの抵抗器を介して入力の12AX7(1/2)のプレート電圧は89Vなのですが ちょっと電圧降下が多すぎる気がするんです。 可能性としては、トーン回路の、劣化しているであろうオイルコンデンサの抵抗成分が大きい場合、 本来は直流を通さないはずなのに直流が通ってしまうと、プレート電圧からGNDに向かう道が出来てしまいますので 電圧を捨ててしまっていることになるのです。 この2個です。 とりあえず交換する前に、片側だけ外して新品のコンデンサをクリップで繋いで 交換したのと同じ状態にして電圧を測ってみました。 すると、やはり新品に交換しただけで89Vだったのが95Vに上がりました。 たった6Vですが、劣化したコンデンサはこんな悪さをするということですねー。 まぁこれを交換しただけではリバーブはまだ効かないのですが 色んなところで少しづつ劣化したコンデンサの影響が積もり重なっているのだと思います。 平滑コンデンサも劣化しているであろう電解コンデンサでB電源とGNDを繋いでいるわけですし。 もうここまできたらあとはトレモロ回路に該当するコンデンサしか残っていないので 劣化しているはずの全てのオイルコンデンサを交換しました。 まず、想定通り、トレモロは直りました。 でもリバーブは効かないままなんですねー。 これは想定外ですねー。 コンデンサ以外の原因を探らなくてはなりません。 まぁまず関係ないと思うんですけど、ここの50μF/50Vは最適な手持ちが無くて交換していなかったのですが 耐圧450Vの無駄に大きい47μFならあったので、片側だけ外してクリップで仮付けして動作確認しました。 何も変わらないのでやはりここは関係ないですね。 念の為、測定してみたら66.88μFなので他のやつみたいに2倍までは肥大化してないですね。 これと大容量平滑コンデンサはリバーブの原因ではないということで、あとで仕入れて交換することにします。 こうなってくると、リバーブ本体が怪しくなってくるわけです。 シャーシーを叩いたら ボワン♪ って鳴るので壊れていないと思うのですが 今のところ、疑う順番からするとリバーブユニット本体なのです。 これが気になるかなー。 リバーブのOUT側にあるこの22kΩの抵抗器。 これは回路図で描くとこういうことになっているわけですが、ちょっと普通じゃないと思うんですよ。 可変抵抗器はハンダが邪魔でカーブが「B」しか見えなくて数値が読めないのですが実測で400kΩで、 一般的には250kの次は500kなので500kΩということでいいと思います。 リバーブの可変抵抗器としては1MΩか500kΩが一般的なのでここは500kΩで問題ないのですが、 ここに22kΩの抵抗器を入れてしまうと、合成抵抗で可変抵抗器の500kΩが21kΩになってしまうわけです。 つまり0Ω〜500kΩまで可変するところが、0Ω〜21kΩまでしか可変出来ないということです。 もっというと、つまみを全開にしても目盛りで4くらいの位置にしかならないのと同じということです。 そして、私の知るどのリバーブ回路とも異なるのです。 だいたいカップリングコンデンサが付いているということと、 信号の通り道に100kか250kの抵抗器が入っているということと、 可変抵抗器と並列に(OUTとGNDの間に)入れるならコンデンサということなど。 しかしこの22kΩの抵抗器を外そうと思っても、グルグル巻きにからげてあるので 無理に外して端子をダメにしちゃう可能性もなくはないので・・・ 外見が同じ GA-200 Cupid のリバーブユニットを繋いでみました。 先生!! リバーブがかかりました!! ということで、どうやらリバーブユニット側に問題があったようです。 うーむ。 ただどうも腑に落ちない点があるんですよね。 シャーシーを叩くと ボワンボワン♪ って鳴るので、リバーブユニットが壊れているとは思えないんですよ。 ちなみに GA-200 Cupid のリバーブユニットのOUT側の端子にも22kΩの抵抗器を仮付けしてみましたが ちょっとだけかかりが弱くなった気がする程度なだけで普通にリバーブは効きましたので 22kΩの抵抗器は関係ないということですね。 Express6の本体も使って差し替えながら比較・検証したところ、 INPUT側さえ繋がっていればシャーシーを叩いた時に ボワンボワン♪ って鳴ることが判明しました。 つまり壊れている方はOUTPUT側に信号が届いてなくて、INPUT側は繋がっているから ボワンボワン♪ って鳴ると。 うむ。 このリバーブユニットはExpress6の時に直そうとして失敗しているので嫌な思い出しかないんですけど(苦笑 線が切れている可能性があるのでカバーを開けて見てみることにします。 カバーを開けました。 やはりいつもの見慣れた 苦い思い出の リバーブユニットです。 しかしどこも線は切れてないし、テスターでチェックしても導通があるべきところは導通していて 導通してはいけないところは導通していないので、直すべき箇所がありません。 修理すべき箇所が見当たらないので修理のしようがありません。 リバーブユニット本体から基板までと、可変抵抗器まで、IN側もOUT側も導通があるし GA-200の正常なリバーブユニットを取り付けるとちゃんとリバーブがかかるということから アンプ側には問題はなくてリバーブユニット本体が壊れているということで確定です。 Express6も同じ型のリバーブユニット本体が壊れているので、 とりあえず GA-200 Cupid のリバーブユニットをコネクターで脱着可能にして共用で使っていて このリバーブユニットを搭載した部品取り用のアンプを探しているのですが このリバーブユニットを搭載した部品取り用のアンプを2台分探さなくてはならない状況になりました。 ドライブ回路を変更して市販のスプリングリバーブを取り付けるという手段もありますが、 現在入手可能なコイル式リバーブユニットだとリバーブトランスも増設する必要がありますので オリジナルの状態を維持したい私としては部品取り用の中古アンプを探す方向になりそうです。 あと、うちには他にもまだ整備していない、ACE TONE のMini Ace とMODEL 301 というアンプもあって それぞれにほぼ同じ外観のリバーブユニットが付いていてちゃんと効くんですけど 同じクリスタル式のリバーブユニットでも種類があるようで Express6らとは互換性がないようで、Express6では効かないんですよね。 コイル式はINPUTとOUTPUTの抵抗値を測定出来るのですが、 クリスタル式はIN側もOUT側も抵抗がないので確認のしようがありません。 本当にこのクリスタル式リバーブユニットには苦労させられてます。 うーむ・・・ 2019.9.18 |
_____________ |