ギターダー
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No.36「ACE TONE / MiniAce 修理」


だいぶ前に入手して直そう直そうと思いながら後回しにしていました。
ACE TONEのMiniAceというギターアンプです。

小さいのになかなか良い音のするトランジスタアンプですが
TREMOLOだけ効かないので、今回はそれを修理します。






CDで音楽を聴く時にオーディオアンプでスピーカーから鳴らすのと同時に
CDデッキのヘッドホン端子からこのMiniAceをサブ・スピーカーとして鳴らすと
レトロな雰囲気の音になって心が安らぎます(笑





コントロールは、VOLUME、TONE、REVERB、TREMOLO、の4つのみ。シンプルですね。





裏面です。





昔のアンプは出力が何Wなのかが書かれていないことが多いです。
トランジスタの定格からして5Wだと思います。





基板ですねー。





箱の内側にこんなのが貼ってあります。
そういえばさっきのプレートも全て英語です。 海外輸出モデルなんでしょうか?





スピーカー。
ACE TONEのオリジナルです。





古い基板を見てるだけでもうれしくなってしまいます。





トランスの2次側は20Vで0.5Aまで取り出せます。
10Wの電力を生み出すのが限界っていう感じです。





電源の平滑コンデンサは松下製の3300μF / 35V





基板上の部品を観察していきましょう。





パワートランジスタが2個。

ざっくり言うとこの2つのトランジスタで増幅しているのでトランジスタアンプと言うわけです。
あえて言うまでもないですけど(笑





型番が見えないでしょこれ!! ガオー!!





でも、もう片方が2SC1226Aですね。 見えてよかった。

これは2SA699Aとコンプリメンタリなので、型番が消えてる方は2SA699Aですね。





ここにも2SC1226A





2SC372-Y





これも2SC372-Y





これもこれも2SC372-Y。 みんな2SC372-Yです。





ここだけ2SC732-GR





そしてまた2SC372-Yが2つ。

まぁみんな汎用トランジスタですね。





プリントパターンはこんな感じ。





それでですねー

汚くて見るのも嫌なマイラーコンデンサが・・・割れてるし・・・





ここにもなんかいかにももうダメっていう感じのマイラーコンデンサ・・・





まぁ今までの経験からして
だいたいトレモロが付いてるアンプっていうのは古いアンプなわけで、
古いアンプはだいたいオイルコンデンサが使われているわけで、
オイルコンデンサというのはオイルが乾いて劣化しやすいわけで
コンデンサが劣化すると容量が変わってしまうわけで
コンデンサの容量が変わってしまうとトレモロが効かなくなってしまうわけで、

なので、だいたいトレモロが効かないのはコンデンサが劣化していることが原因です。

今回のは真空管アンプの時代よりは新しいのでマイラーコンデンサですが、
割れてしまっているほど劣化しているということで、トレモロが効かない原因はこれだと思います。



ということでコンデンサを交換します。

特に高価なものではなく、全て汎用部品です。
なんか見た目が豪華な高級オーディオ用とかじゃない方がかっこいいと思うようになりました。
まぁそのへんはアンプにもよるし気分にもよるんですけど。





棚から出し忘れて別撮りになってしまいました。これもです。





ちなみにこういう古いアンプのトランジスタは・・・
というかもうほとんどのトランジスタは廃番品なわけですが、入手困難なものは確保しておかないと。
とか何とか言いながらパワートランジスタを入手しました。



まずは2SC1226
10個仕入れたらランクQが4個とランクPが6個でした。 hFEは実測でQが66〜87でPが32〜50でした。





別の店で2SA669

綺麗ですが在庫も少ないし値段も高いので2個だけ。 ランクQで、hFEは実測で233と317でした。





hFEに差があり過ぎるのでまた別の店で2SA669を5個。
なんか直角に曲がってて自分で伸ばしたら他のと違う伸び方になりそうですが、
選ぶ余地が無いので贅沢言ってられないです。 ランクPで、hFEは実測で80〜88でした。





運も手伝ってか、未開封の袋入り2SA669をゲット。
袋には「200個」とありますが「2SA669 P 20」のスタンプが押印されていて、20個入りです。





開封したくないので未開封のまま端子だけ出してhFEを測定。 hFEは73でした。







まぁこんだけ確保しておけばいいだろう。と気が済んだところで・・・



シャーシーを引き出してみました。 すると・・・





ありゃ、こんなとこにオイルコンデンサが・・・

このアンプはTREMOLOのつまみが電源のON/OFFスイッチを兼ねていて、そこです。

見た目は綺麗だけど年数が年数だし劣化してるはず。
まぁこれは電源部分のバイパスコンデンサだと思いますのでトレモロの効きとは関係ないでしょう。





グルグル巻きになっていたのを苦労して外しました。





正常な0.01μFのコンデンサでトレモロの効き具合を試したら
つまみを最大にすると軽ーくトレモロがかかるのですが、元のオイルコンデンサでも同様でした。

やはりトレモロとは関係ないですね。





トレモロと関係ないとはいえオイルコンデンサは劣化しやすいので
KCKの耐圧500Vのセラミックコンデンサに交換しておきました。







さーて、コンデンサというコンデンサを片っ端から交換しちゃえばいいのですが、
できることならこの「コンデンサが原因だった。」ということを突き止めたいじゃないですか。

そこで、まずヒビ割れたりして見た目がダメになってる0.01μFのマイラーコンデンサ3つを交換しました。





3つとも容量は許容誤差範囲内で、トレモロの効き具合は特に改善されませんでした。







うーむ。

最初にヒビ割れたマイラーコンデンサを見たときにそれが原因だと思ったので
やや不安がよぎります(笑


本当はまずマイラーコンデンサを全て交換するつもりでいたのですが
残りのマイラーコンデンサはヒビ割れもなく、オイルコンデンサのような劣化はしにくいものなので
最終的には全て交換するとしても、後回しにします。

まぁ何も考えずにまずマイラーも電解も全てのコンデンサを交換して、
「話はそれからだ。」という感じでいいとは思いますが(笑

せっかくなので楽しませて頂きます(笑


どちらかというと消耗品にあたる電解コンデンサの方が怪しいと思いますので
電解コンデンサから攻めていきたいと思います。



トレモロの回路を追っていって、まずはこれを交換しました。





トレモロのつまみを最大にしたときのかかり方が少し強くなりました。

今のところ交換したコンデンサはこの4つです。





さらにトレモロの回路を追っていくとこれらが直接該当しますので





これらを交換しました。
10μFが劣化していたので右下の2つの10μFも交換しました。

トレモロのつまみ7くらいからかかり始めて、8以降が強くかかるようになってきました。





1μFは実測で1.182μFでしたので容量だけを見ると劣化は僅かですが、





10μFは17.69μFにまでも肥大化していて





100μFは266.8μFにまで肥大化していました。 約2.6倍です。





でもトレモロ回路に直接該当するコンデンサを交換しても、まだつまみを7以降にしないと効いてきません。




これはもしかするとコンデンサを全て交換しても満足にかかるようにならない予感?

トランジスタのhFEが低下している可能性も懸念し始めます。



一つ交換しては音を確認していき・・・



ついに全てのコンデンサを交換しました。





470μFは726.1μFにまで肥大化していました。





220μFは268.6μFに。





100μFは120.6μFに。





47μFは56.64μFに。





もう一つの47μFは69.83μFに。





ここまで交換してだいたいつまみを半分以降にするとトレモロがかかり始めますが
出来ればもっと早くからかかり始めて欲しいといった感じです。

フルにすれば満足にかかるのですが、
全体的にもっと強くかかればいいのにな、という感じです。



ということで、途中から気になっていたトランジスタをチェックします。





シルクハット型の2SC372。





貴重なトランジスタですので安易に使いたくないです。
もし交換するなら代替品かなー。





hFE=172 でした。





もう一つも全く同じ、hFE=172 です。





データシートによるとランクYのhFEは120〜240なので、172なら正常です。





オーディオ的にはhFEが正常でもザーとかのノイズの原因になるような劣化のしかたもあるので
ここまで古いトランジスタは交換した方が良いのですが、トレモロの効きの弱さとは関係ないと思うし、

念の為2SC1815-GRに交換してみましたが何も変わらなかったのでこのトランジスタはこのまま元に戻します。

劣化していなくてよかったと思う反面、もう不具合を疑うところがないです。



部品点数も少ないし、半固定抵抗器も不具合は無いし、

そうすると、過去の経験からあることが脳裏に浮かびます。


昔のギターアンプって結構マイナーチェンジや部品の付け間違いなどがありまして、
今までに見てきたアンプもそういうのだらけでした。

で、このアンプを購入した頃にネットで情報を集めていた中に
海外のオークションのページに基板の写真があるので見比べてみたら・・・


抵抗器の値が一つ違う箇所を発見しました。

ここが4.7kΩになってますが・・・





うちのは2.2kΩになっています。





トレモロ回路に直接関係ある抵抗器です。
GNDに落ちてるので抵抗値が小さいほど信号をGNDに捨てることになるので、音量などが小さくなります。





4.7kにしてみましたが特になにも変わりませんでした。





元にもどしました。







ネットを徘徊していたら、同じMiniAceを所有している人のページを見つけました。

そしたら・・・

「トレモロの効きが弱く感じるものの、新品の状態を知らないからこれが弱いのかデフォなのか分からない。」

とのことで、音源もUPされてたので聞いてみたら、トレモロのつまみがフルでうちのと同じ状態ですね。



どうやらこの、

だいたいつまみを半分以降にするとトレモロがかかり始める

というのがデフォルトのようです。






思ったんですけど、これ、電源のON/OFFとトレモロのつまみが共用なので
まずここが電源OFFの位置で、







ここが電源ONの位置なので







真ん中が真ん中ではないのですね。





さらに可変抵抗器がCカーブなので、
これを逆のAカーブにするとトレモロが効き始めるのが早くなりそうです。





というか、トレモロのON/OFFスイッチは無いので
あえて、絞った時にトレモロが効かないようにしてあるのではないかと思ったりなんかして。




ということで・・・


全く効かなかったトレモロがかかるようになったので良しとします。



スピードは固定です。

半固定抵抗器で若干スピードを調整出来ますが、ほとんど変わりません。固定です。









最後に電源の平滑コンデンサを交換します。





3300μFが4579μFになってました。





サイズ的には小さくなりますが、これは昔に比べて小型高性能化が進んだということです。





念の為、測定してみたら3300μFが3325μFでした。 許容誤差±20%のところ+0.075%なので良好です。







ガガガガガガガガ・・・



コンデンサの径が異なってコンデンサバンドが使えないので、ベーク版を加工します。





こんな感じになります先生。







これで修理は完了ですねー。

うーむ。





あとはこういうとこを





綺麗にして・・・





つまみのとこの銀のやつが取れてしまっているのを





自作してみたりして・・・







完成です。





小さいけどなかなか良い音なんですよ。
クセのないクリーンが出るので歪み系エフェクターのノリも良いです。

基板もレトロだし気に入ってます(笑

2020.2.27

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