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No.39「YAMAHA / CA-X1 修理 7台目」


久しぶりにというか定期的に依頼があるというイメージになってきました。
YAMAHAのパワーアンプ「CA-X1」の修理依頼です。

当HPでCA-X1の修理をするのはこれで7台目になります。

ガリがあるのと、購入時から左側の音量がやや小さいとのことです。(新品で購入したとのことです。)
「新品購入時から」というのが気になりますが診てみましょう。





動作確認の前にどうしても確認したくなってしまうのが「合格」の印ですね。
いや、たまたま今まで全て岡本さんでしたので・・・





おーっと・・・





岡本さんです!! お疲れ様です!!





それはさておき、

今まで修理してきたCA-X1は基板が2種類ありまして、前期と後期に分類できるのですが

(前期)
No.5007
No.12960
No.21813

(後期)
No.25617
No.102199

今回のはシリアルナンバーが前期と後期の境目の 22438 なので、
実際に基板を見てみるまではどちらか分かりません。


ふたを開けます。


おおおおーーーーっと!! 前期でした!!





前期ですが・・・



見事な雪化粧です先生!!





以前にもこのような雪景色を経験してますが、
決して悪い印象はなくて、どちらかというと良い印象です。

修理する側としては改造されまくっているよりも手を付けていない方が良いのです。





もはや綺麗に見えます。





トランジスタの型番が見えません。





これだと綿ぼこりが水分を含んでいるとショートしてしまう可能性があるので
電源を入れるのは危ないですね。





リレータイマーに今までの基板には存在しなかった台座があるのが見えます。
今まで修理したものにはHOSIDEN製のリレーが付いていたのですがこれはMATSUSHITA製です。
端子が合わないのを台座で調整しているのだと思います。交換したのかな?あとで確認します。






筆と掃除機で綺麗に掃除していきます。




新しいハンドクリナーが良くて嬉しい(笑
充電式が多い中でこれはコンセント式なのでパワーもあるしバッテリーが弱まる心配もないです。
サイクロンになっていて水洗いも出来ます。





綿ぼこりを除去しました。





トランジスタの型番が見えてきました。

2SA970はこの時代のアンプにしては新しいので交換されている可能性がありますね。
あとで確認します。





完全に雪が解けました。





まだ綿ぼこりを取っただけですので、さらに綺麗にする予定です。





どうやら新しいトランジスタと古いトランジスタが混在しています。





基板の裏側を見てみます。

やはりリレーを交換した跡がありますね。





トランジスタも交換されています。





BALANCEのPOTも一度取り外されてますね。





ご依頼者様にお話ししたところ、昔にヤマハのサービスで修理したとのことでした。

あのリレーの台座はよく出来ているので納得しました。





パワートランジスタはオリジナルのまま 2SC1403 と 2SA745 です。





ステレオなのでもう一組。





このへんのトランジスタは交換されていません。
2SC1509と2SB560です。





2SC2320です。今となっては古いですが当時にしては新しいトランジスタです。

オリジナルの2SC1918から交換されていますね。





2SA999です。

オリジナルの2SA573から交換されていますね。





2SA573の代替品だと私なら一番一般的で有名な汎用トランジスタの2SA1015を選びますが
何故ヤマハさんは2SA999を選んだのでしょうか?
代替品として妥当なのでしょうか?

ちょっと気になったのでトランジスタ互換表を見てみます。

いちいちそれぞれのデータシートを調べるほどでもないような場合に役立ちます。





2SA573の代替品の中に2SA999はありません。2SA1015ならあります。





2SA999の代替品の中に2SA573はありません。2SA1015ならあります。





2SA573と2SA999はお互いに直接は互換品として掲載はされていませんが
どちらも2SA1015が共通の互換品として掲載されているのでだいたい互換品ということで(笑

まぁこの互換表はCQ出版社が独断で作ったものなので
互換品となっていても実際には定格を比べたら使えないものもありますし
逆にここに載っていなくても互換品として使えるものは沢山ありますので。

あくまでも参考程度ですね(笑



そしてこれだけはどうしても型番が見えません。

おそらくオリジナルのまま2SD234で交換されていないと思います。







結果的に以下の3種類だけ交換されていて

・2SA573 → 2SA999
・2SA763 → 2SA970
・2SC1918 → 2SC2320

2SA777、2SB560、2SC1509、2SD234、はオリジナルのままですね。





あと、はんだ割れがあったので電源を入れる前に直しておきました。







電源を入れて音を確認したところ・・・

音が全く出なかったり出たり、かなり酷いガリです。

VOLUMEのつまみとBALANCEのつまみを回すとガリが出るのですが、
よく確認すると、ガリの出るつまみの位置がランダムだったりして

物理的なガリというよりも音量に応じてガリが出るような感じです。

これはトランジスタの劣化によるガリの割合が大きいですね。

全てのトランジスタと電解コンデンサを交換します。
場合によってはICもですね。


それと、VUメーターのランプが片方点灯しません。
これも直します。





あと左側の音量がやや小さい件に関してはガリが酷いのでまだ分かりませんが

左右でアイドリング電流のバランスが取れてないですね。

左が11.5mV(52mA)で、





右が16.4mV(75mA)です。





直接の原因ではないと思いますが、間接的に影響を受けているのかもしれないですね。
調整込みでよく診ていきましょう。



普段であればVUメーターのランプは後回しにするところですが、なんと今回は先にやっちゃいます。

単にそういう気分だからというのが大きいんですけど
「左側の音量がやや小さい」というのと「左側のランプが点灯しない」という点が気になりまして
単純に「左側に何か問題があるのだろうか?」みたいなイメージです。

99%関係ないですけど(爆



実は右側も接触が悪いかのように点灯したりしなかったりするんですよねー。
配線材には断線はないことを確認しました。





電圧そのものが来ていない可能性をチェックしたところ、基板のところまでは電圧は正常に届いています。

このアンプでは交流で点灯させているのですが、点灯の有無だけなら乾電池でチェック出来ます。
点灯しないですね。





うーむ。

フィラメントが切れてますね。





新しい麦球を用意します。





配線が基板まで届かないので元の配線材を活用して結線します。

色や明るさを揃える為に両方とも交換します。





元の配線剤がプラプラしていたので束ねます。

ただし、モノによっては配線材を束ねることによってノイズが発生することもあるので
何でもかんでも束ねればよいというわけではないので注意が必要です。





点灯しました。

なんか昔ながらの暖かい明かりが心地良いですねー。

キャンプファイヤーの炎を眺めているのと同じ気分です(笑







さて、オーバーホールを始めます。



トランジスタを取り外していきます。





全部取り外していきます。





取り外したトランジスタ。





装着された状態では見えなかった型番が見えました。

やはり2SD234でした。







今回はいつもと気合が違います。

今回のアンプは綿ぼこりが酷かったせいもあってか、トランジスタの劣化によるノイズが酷く
当然ながら電解コンデンサもノイズの原因に成り得ますので、

ちまちま動作確認しながら交換していくよりも
全て交換してしまった方が余計な悩みが生じないし効率が良いと判断しました。





ということで・・・





そのままぶっ続けで電解コンデンサも取り外していきます。





全部取り外していきます。





取り外した電解コンデンサ。





焦げてすすが付いてるみたいになってるのが気になります。





測定してみたら6800μFが4318μFになってました。

今までの経験だと劣化した電解コンデンサは全て肥大化しているのでこれは珍しいです。
これが噂の「容量抜け」というやつか。





例えばこれは220μFが230μFに肥大化してます。 だいたい肥大化するんですよ。







まぁいいか。

とりあえずはこんな状態。





基板が汚いので





可能な限り綺麗にします。





ロータリースイッチのシャフトも





うーむ。







あと気になるところ・・・

足がグニャリと曲がったセラミックコンデンサ。





取り外してみました。





5pFなので容量が小さすぎていつものチェッカーでは測定出来ないので
自作の容量計で測定します。

まず、何も接続していない状態での浮遊容量が23pFです。





測定結果が28pFなので、浮遊容量23pFとの差で5pFであることが分かります。

正常でしたので元に戻します。







他にも気になるところが・・・



VUメーターの配線のうち画面右側の黒い配線材が、
前面パネルの内側に入って挟まってしまってしまっているんですね。





電気的には問題なくても気になるんですよねー。



で、つまみを外さないとパネルが外せないわけですが、





VOLUMEのつまみを外すシャフトを留めているイモネジのサイズがいつもと違います先生・・・





サイズくらいで騒ぐなと言いたいところですが、

奥まっているところにあるので普通より長いレンチじゃないと届かないのです。

普通の長さなら全てのサイズのレンチはダブるくらい揃っているのにこのサイズの長いレンチは買わないと無くて、
でも今は夜中なのでお店は開いてないし、しかし作業を中断させたくないので・・・
短いレンチをペンチで持って狭い中で限られた角度を何回も入れ直して回して苦戦の末やっと外せました。





これが挟まっていたところです先生。





開けたついでに・・・





こういうところも綺麗にします。





無事に配線材を外に出せたので、





束ねておきました。







あと、いつものこれ。アイドリング調整用の半固定抵抗器も交換します。





錆びてるとまともに調整出来ないしノイズの元にもなりますので。







いよいよトランジスタを装着していきます。





おっと、集合写真に載せ忘れました。

2SD234の代替品として使う2SD880Lです。





実はひそかに悩みの種となっている2SC2240

ただでさえ2SC1918の代替品として使っているのに、
生産終了後数年で価格も上昇して購入数制限まで設けられているので
2SC2240の代替品(代替品の代替品)を探しているのですが、チップしかないようです。
うちの在庫ももう百数十個しかないので貴重なのですが9個使います。





トランジスタを全て装着しました。





こんな感じですね。







続いて電解コンデンサを装着していきます。

容量や耐圧はもちろん、直径や高さなども全て考慮して選定しています。
全てニチコンでほとんどがFine Goldです。あとはKZと、緑色のはバイポーラです。





装着完了です。





こんな感じですね。





一発で直ればよいのですがなかなかそうは問屋が卸さないと思いつつも期待して・・・







スイッチ、オォォーーン!!







なるほど・・・







かなり改善されました。

まぁほとんど直ったと言ってもよいと思えるほどにはなりました。

しかし、

まだ、たまーにガサガサ鳴ったり音が極端に小さくなったりして
VOLUMEのつまみやBALANCEのつまみを回すと元に戻ったりします。



とはいえ・・・

ガサガサ鳴ってない時にVOLUMEやBALANCEのつまみを丹念に回して確認してみると
POTにガリはないです。





ここの判断って難しいと思います。

ガサガサ鳴ったりした時にVOLUMEやBALANCEのつまみを回すと連動してガサガサ鳴るので
慣れてないと絶対にPOTのガリだとしか思えないですよね。


でもどう確認してもPOTのガリではないのです。


まずはこれでした。

ここの辺りのはんだの劣化による接触不良がありますね。





見た目では分かりませんが、内部で接触不良になっているもよう。





抵抗器が落ちないように片側ずつ、一旦はんだを除去してから・・・





再はんだします。





こんな感じで地道に接触不良を探して直していったところ、



ついにガサガサなどの不具合がなくなりました。

これで修理完了ですね。



一つ気になることがありますね。

「新品購入時から左側の音量がやや小さい」というやつです。


まだ不具合が出ている時は確かに左側の音量がやや小さい時もありましたが
不具合が出なくなってからは左右の音量バランスも問題ないですね。

まぁ聴く音楽によってはバンドものだとレコーディングのミックスダウンの時に
各パートを若干左右に振り分けますので、
例えばベースが右側にあると右側の方が音が大きくなったりすることはなくもないですが

そういうのは感覚だけに頼るのもやや心配なので、オシロスコープで波形を観測します。



まずLチャンネルに信号を入力して波形の上下を分かり易い線に合わせます。

波形の縦の幅は電圧の大きさで、音量を表しています。





次にVOLUMEをいじらずに信号をRチャンネルに入れ替えます。

波形の上下のラインが同じ高さなので、左右で同じ音量であることが分かります。





ちなみにVOLUMEをちょっと下げると上下の幅が小さくなります。







一晩置いて翌日、冷めた状態から電源を入れて数時間動作確認し、
ガサガサ等のノイズも全く出ないことと
エミッタ電圧を左右とも12mVに設定して安定していることを確認しました。





ちなみに12mVに設定して写真は12.3mVになってますが、「安定している」というのは
アンプ内部の温度が上昇したらエミッタ電流が増え、エミッタ電流が増えたら減る方向へ働き、
自動的に変動しながら調整することで熱暴走せずにいられる状態です。



修理完了です。お疲れ様でした。



今回の修理は大きなトラブルは無かったものの、スムーズにいくかどうかやや不安はありました。

それは状態からしてトランジスタや電解コンデンサだけが原因ではないだろうということでしたが
やはりオーバーホール後もガリのようなノイズが残りましたね。

そしてそのガリのようなノイズは、本当にPOTのガリだと思ってしまうものでした。
私は過去の修理(No.37  YAMAHA / CA-X11 修理 2台目)で、同じ系統のノイズを経験したので
これはPOTのガリではないとわりと直ぐに判断出来ましたが、一般的には厄介でしょうね。


それと今回あらためて思ったのが、トランジスタの代替品の問題ですね。

ほぼ全てのTO-92パッケジーのタイプのトランジスタは数年前から生産終了ですが
それでも代替品の流通在庫がまだあったり、台湾のメーカーがセカンドソースを発売し始めたりして
現在なんとか対応出来てはいますが、いよいよ代替品の入手も怪しくなってきました。

台湾メーカーのUNISONICが頑張ってセカンドソースをどんどんリリースしてくれているのですが
やはりまだ全てのトランジスタを網羅出来ていなくて、まだ一部の主要なトランジスタだけですので
これからどんどんセカンドソースの型番が増えてくれるといいんですけどね。
でもやはり性能は落ちてますよね。まぁ体感出来るような性能の落ち方ではないのでまぁいいですけど。

もしくは、いよいよチップトランジスタをTO-92パッケジー風に変換する基板を使うなど
見た目を妥協すればまだなんとかなるといえば、なるか(苦笑

2020.12.1

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