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No.43「YAMAHA / YTA-15 修理 2台目」
今回はYAMAHAのギターアンプ「YTA-15」の修理依頼です。
色々と修理先を探しても全て断られて、検索してやっとうちを見つけたとのことです。 修理内容はINPUTのHIGHの音が出ないのと、オーバーホールです。 アンプの梱包は人それぞれで、たまにヤフオクやメルカリで梱包が薄くて不安なこともあるので リスクの説明をした後に 「下記住所までお送り下さい。」 と書く時に その時の気分で 「なるべく厳重に梱包して頂き」 というのを添えたりするのですが・・・ なんと、今回はダンボールの中にさらにダンボールがっ!! YTAシリーズは今までにTYA-95、TYA-25、TYA-15を修理してきたので アンプの構造や基板、回路等についてはだいたい把握しているので慣れていますが それと同時に、修理するにあたってネガティブな部分や注意しなければならない点も把握しているので 「慣れているから簡単さ。」という感じではなく、ある程度の緊張感があります。 昔のアンプは高級感がありますねー。 というか本当に高級だと思います。うん。 オリジナリティ溢れるノブです。 コントロールは、VOLUME、BASS、TREBLE、BLEND、REVERB、とシンプルで使い易いです。 BLENDは歪みですね。 これが音が出ないHIGHです。 INPUTのHIGHとLOWの仕組みについてはアンプによって若干異なりますが、 これはYTA-95の時に解析したのと同じかな。意外と感心するシステムなんですよね。 うらー。 フットスイッチのジャックとヒューズソケットがあります。 シリアルナンバーは5538です。 以前に修理したYTA-15は5286でしたので、まぁ近いといえば近い製造時期ですね。 それでは中を見てみましょう。 スピーカーはYAMAHA JA3015ですね。オリジナルだと思います。 綿ぼこりが凄いので掃除機をかけて綺麗にします!! 例のごとくキャビネット内部に予備のヒューズがあります。2Aが2本ですね。 「この袋の中には 2A と 2A のヒューズが入っておりますから」 という違和感満載の文章が気になりましたが・・・ ちょっと背面パネルを振り返ってみましょう。 AC100〜125Vは2.0Aで、AC220〜240Vは1.5Aとあります。 日本のコンセントはAC100Vなので2.0Aのヒューズが2本というわけですね。 おぉ、なるほど、 つまりこの謎のフタは、海外向けに電圧を切り替える為のあれ用かな? YTA-25 にはソケットを差し替えて電圧を切り替える仕組みがあったので、 海外輸出仕様と兼用のシャーシーにしてあって これを取り付ける用の穴が開いているのではないかと。 いや、もしそうだとしたら・・・ 電圧を切り替えられないこの個体に 「AC220〜240V 1.5A」 と表示したら このままAC220〜240Vでも使えるかのように捉えられてしまい危ないのではないだろうか? 妄想と余計なお世話はこのくらいにして・・・ はいー。 いよいよ基板ユニットを取り出しますよー。 ではオーバーホールより先に、HIGHの音が出ないのを直しちゃいましょう。 まず前面パネルを外します。 このパネルを外すと必然的に基板が配線材で繋がっているだけのグラグラ状態になり、 配線材が基板の根本から千切れやすくなるので、細心の注意を払う必要があります。 ちなみに外したパネルが汚いので・・・ オイルを使ってクリーニングしてみましたが、かなり頑固な汚れで文字消えも不安なので あとで落ち着いてやりましょう。 これが問題のハイジャック犯・・・いや、HIGHのジャックですね。 なるほど。割れてて金具が抜けちゃうのね。 金具は差し込めば入るのですが、 緩いのでプラグを差すと抜けてしまうようです。 ということでジャックを交換します。 ジャックにも色々な種類があって構造が異なります。 左から、モノラル、モノラル(スイッチ付)、ステレオ、ステレオ(スイッチ付) 大は小を兼ねるというか、 ステレオはモノラルとしても使えるし、スイッチ付きはスイッチ無しにも使えます。 一番右のやつはステレオでスイッチ付きなので万能です。何にでも使えます 流通の関係や価格の関係でオーバースペックのものを使うこともあります。 以前YTA-95の修理の時には在庫の関係で一番右の万能型ステレオ・スイッチ付きを使いましたが 今回使うのはこれです。 オリジナルと同じ仕様のモノラル・スイッチ付きです。 かっこいいですねー笑 今までもYTA-95の修理の時に既に2回ほど説明しているのですが、 また説明する機会が訪れました・・・入力のHIGHとLOWの仕組みは下図のようになっています。 最初に考えた人は天才だと思います。 つまり、HIGHとLOWの違いは入力抵抗の抵抗値の違いだけということです。 下準備をします。 取り付けました。 うむ。 動作確認します。 正常に音が出るようになりました。 ホッとしたのもつかの間・・・ POTを分解してクリーニングしないと直りそうもないガリがあります。 POTを外す為にはさらにこのパネルを外す必要があり、 今まで以上に基板がグラグラと不安定になるので慎重に作業しないとです・・・ ちょっと息抜きでトランジスタの型番をチェックします。 YTA-15は以前にも修理したことがあるので全ての部品は分かっているのですが マイナーチェンジでトランジスタの型番が変更になっていることもざらにあります。 まずは2SC732-BLと2SC644ですね。 2SC644 ここも2SC644 ここも2SC644 トランジスタは変更ないですね。 まぁシリアルナンバーも近いですからね。 パワーアンプIC。 SANYOのSTK032です。 文字が見えづらいですけど、これはMATSUSHITAのAN274です。 リバーブのドライブ回路のアンプICです。 POTのクリーニング作業開始。 カバーを閉じる前にガリが取れたことを確認します。 全てのPOTでガリが出ないことを確認したらパネルを元に戻します。 そうそう、後回しにしていた頑固な汚れ・・・ 可能な限り綺麗にしました。 あとこれ、気になってたんですよねー。 傷かと思ってたらシールを剥がしたような跡でした。 綺麗に落ちました。 シャーシーとパネルを元通りに組んで基板も固定されて安定性が戻りました。 ふぅ・・・ここまでくれば一安心。 あとはいよいよオーバーホールです!! それでは、手術を始めます。 まずは全ての電解コンデンサとトランジスタを取り外します。 いつもよりはんだの融点が高いような感じではんだが溶けにくかったのでコテの温度を上げました。 取り外した電解コンデンサとトランジスタたち。 さようなら・・・ 電源の平滑コンデンサを取り外します。 配線材が短くて奥で作業しなければならないのでちょっとした難関です。 これ一つ外すのに40分もかかった(汗 外すのも大変でしたが、今回は交換するこのコンデンサを探すのも大変でした。 コロナのせいなのかウクライナ情勢のせいなのか、とにかくどこにも在庫が無いのです。 オーバースペックの耐圧200Vでやっと見つけました。 コンデンサバンドに合うように直径を重視しました。元のと同じNichicon製です。 いつものように部品配置図を用意します。 容量や型番を間違えていないかを確認するのもそうですが 電解コンデンサの直径が元より大きいと物理的に装着出来ないことがあるので 大きさの確認をすることが大事です。 昔のTO-3パッケージのトランジスタは全てとっくに廃番なので年々入手が困難になってきてますが 特に2SC732は価格が上がってきたのでうちに在庫はあるものの、代替品にするか悩みました。 でもまぁまだ100個以上あるし2SC732にしておきます。ただしランクはGRです。 2SC644は代替品の2SC1923-Yです。 2SC1923も在庫が減ってきたなぁ・・・ トランジスタを並べるときにいつも思うんですけど 古いトランジスタはどうやっても真っすぐ上を向いてくれないことがあります。 内部で電子が偏っているんだと思います・・・ ちがうか。 電解コンデンサはほぼ全て Nichicon の MUSE FG か MUSE KZ です。 一部だけMUSEではないのを使います。 まず220μF/16Vは普通に相当品を選ぶとあまりにも細くて小さくなってしまうので なるべく径を合わせる為にRubyconの耐圧35Vにしました。 なかなか判断が難しいところなんですけど 昔に比べて現在の方が製造技術が進歩しているので、同じ仕様のものが小型化されていて まぁ性能の面でいえば小さくても何ら問題ないわけですが、 やっぱり見た目がしょぼくなってしまうことが気になってしまうんですよね。 でも場合によっては小さくなっても「小型化・高性能化しているんだ。」と思えたり 小型のものしか入手出来なかったり、ケースバイケースなんですよね。 私はエフェクターの基板とかも見た目のかっこ良さは大きいと思っているので このへんは人によって考え方がそれぞれになってくるところだと思います。 誰が製作するか、誰が修理するかによって、完成形が変わってくるんですよね。 そこがまた面白いところであるとも思いますね。 そして今度は、これは元のが4.7μF/63Vなんですけど 4.7μFで耐圧63V以上だとMUSEでは入手性が悪いので、ELNAの耐圧100Vにします。 このELNAの耐圧100Vはうちの在庫も残り1つだし、探してもなかなか見つからないので ちょっと探して仕入れておかないとなぁ・・・ トランジスタから植え付けていきます。 1箇所はんだ付けしたら基板をひっくり返して向きを揃えて残りのはんだ付けをします。 IRON MAIDENのアルバム「魔力の刻印」を聴きながら電解コンデンサも全て取り付けました。 はい。 これで修理とオーバーホールの完了です!! 写真だと分かりにくいですけどノブがくすんでいたのを磨いたら輝きを取り戻しました。 動作確認したところ、オーバーホール前に小さく鳴っていた電源のノイズが消えました。 このアンプは電源スイッチのONが上にも下にも入るようになっていて ノイズが出る場合はスイッチの上下を逆にすると対策出来るようになっているのですが (コンセントの向きを入れ替えるのと同じ原理です。) オーバーホール前は私の部屋の環境ではスイッチを上にすると小さくノイズが鳴っていて 下に切り替えるとノイズが止む感じだったのが、オーバーホール後は上下ともにノイズレスになりました。 音もコシや張りが出て良い音になりました。 しばらくフルチューブアンプばかり使っていたのですが、やっぱりトランジスタアンプも良いですね。 気のせいなのか、特に昔のアンプは暖かい音がします。 おそらくその時代その時代によって求められる音の周波数というか、年代による特徴があると思います。 それは、MarshallならチューブでもトランジスタでもエフェクターでもMarshallの音が出るのと同じで 昔のソリッドアンプの中で、トランジスタかパワーアンプICかという差は無いですね。 設計次第であるところは大きいと思います。 さて、そんな昔のアンプは可能な限りメンテナンスやリペアをして長持ちさせたいですよね。 レアなアンプになってくるとオリジナルの部品に価値を感じてしまいますが、 電解コンデンサは消耗品ですし、トランジスタも教科書では半永久部品とされていても実際には劣化しますので 交換が必要になってくるわけですが、互換品や代替品でさえ年々入手困難になりつつあります。 さらに今回は、新型コロナやウクライナ情勢の影響もあってか、汎用のコンデンサでも品薄になってたりします。 今回もうちに在庫があったから良かったというものもありました。 また、モノによっては入手が困難どころか不可能なPOTやスイッチがあったりもするので、 そういったものの対処の仕方を工夫することも日頃から研究していかなければ、と思いました。 まぁ、修理が終わると気分が解放されてそんなこと忘れて遊んでしまうんですけどね笑 2023.03.16 |
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