ギターダー
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No.46「YAMAHA / J-25 オーバーホール」


今回はYAMAHAのギターアンプ「J-25」のオーバーホール依頼です。
前回と同じご依頼主様なので、今回も全てのジャックを交換します。





シンプルで使い易くて良い音がします。





1977年のカタログによるとこのアンプの出力は25Wではなくて30Wなんですね。

でも下の方には「パワーは強力50W」とも書いてありますね・・・ピークパワーかな・・・





コントロールはVOLUME、BASS、TREBLE、DISTORTION、REVERBです。





後ろー。





おう、30Wって書いてあった。 J-25で30Wです。





ジャックの名前が消えてるので調べてみたら
左側がREVERBのフットスイッチのジャックで、右側がヘッドホンのジャックでした。
さらに一番左に穴が開いているのは、J-35用のDISTORTIONのフットスイッチジャックの穴で
このJ-25では使いません。





フタをパッカーンします。





YAMAHAのスピーカー、JA3015です。





積もってます。





まずは恒例のお掃除からですね。





予備のヒューズを発見。





基板ユニットを引きずり出します。





えーと、まずトランスなんですけれども・・・





ナットが無くてグラグラ揺れていました。
重いのがグラグラ揺れていたので金具が曲がってしまっています。
あとでちゃんと固定しましょう。





いい基板ですねー。

この時代の分かりやすいディスクリート基板が一番好きです。





年季を感じざるを得ません・・・





基板のお掃除してからですね。





お掃除しました。

これはパワーアンプ基板です。





素晴らしい!!

前回のRoland GB-30は温度補償用ダイオードも熱結合されていなかったうえに
アイドリング電流を調整する半固定抵抗器も付いていなかったのですが、

これは温度補償用ダイオード(65B)が2つのパワートランジスタの間に同じ放熱器に取り付けられていて
アイドリング電流を調整する半固定抵抗器も付いています。





最終段増幅用パワートランジスタは

2SD526と、





2SB596です。





あとは、2SA561-Yと、2SC1509と2SA777がありますね。





ここにも2SC1509

全て廃番品なので代替品に交換するしかないです。





プリアンプ基板を見てみましょう。





まずはFETの2SK30A-GRですね。





そして2SC1681-GRが2個





ここにも2SC1681-GR





放熱器に取り付けられた2SD526です。REVERBのドライブ回路ですね。





2SC1681-GRがここにも。





おい!!
電源の平滑コンデンサの大きさがびっこだぞ・・・と思ったら・・・





大きい方の2200μFの方が電源の平滑コンデンサで、





小さい方の1000μFの方は出力部分のカップリングコンデンサでした。





おっとっと・・・

交換するジャックがこれまた入手不可の基板取り付け型・・・





ヘッドホンジャックも基板取り付け型です・・・

どうすんだこれ・・・





あー、ヘッドホン用の回路がここに収まっているのね。





アイドリング電流を測っておきます。

え・・・

エミッタ電圧で0.4mVしかない?? 4mVじゃなくて0.4mVです。

エミッタ抵抗が0.47Ωだから、0.0004÷0.47=0.00085 で、0.85mAしか流れていませんね。





こっちはもっと低くて0.1mVです。 0.2mAしか流れていない。





半固定をいっぱいに回してみると12.4mVまで上がります。

0.0124÷0.47=0.026 これで26mA流れますね。

このW数のアンプだとだいたい10mA〜20mA程度流すのが一般的なので
まぁ一応調整可能範囲ではありますね。





反対側(負側)の方がちょっと高い。





おっと、熱で上がってきたぞ。熱暴走するから下げてあるのかな?

まぁ最後にじっくり調整するとしよう。





とりあえず3mVで6mAくらい流す感じで安定しますね。





これなら負側もだいたい3mVの6mAを維持してますね。







では、まずトランスのグラグラからいきますか。

右にこのくらいと





左にこのくらいグラグラします。





硬くて平なものを挟んで板をかましてコンコンして鉄板を平らにしました。





これ、タップ(ネジ溝)が切られていてナットが要らないタイプだったのですが、
ネジ溝が舐めちゃったようです。

ナットで締めてグラつきが無くなりました。







はい次!!



プレートが曲がっているのが気になるので・・・





万力で挟んで直します。





このくらいで勘弁してもらおう・・・







では本番。

パワーアンプからいきます。





最終段増幅のパワートランジスタ、2SD526と2SB596は
代替品として80V、6A、30W、の2SC4511と2SA1725を選びました。





元のhFEを測定してみると・・・

2SD526が hFE=79 で、





2SB596が hFE=185 と、かなり差があります。





本当はマッチングペアで揃えた方がいいんですけど、
今まで様々なアンプを修理してきても揃っているのを見たことがありません。

「じゃぁ揃ってなくていいや。」というのもちょっとアレなんですけど、
特に今回は2SA1725が1個しか入手できなかったということと、
どのコンプリメンタリもかなり差がある状態で安定してしまっているので
これは仕方がないのかな、と思うようになりました。



ということで、2SC4511が hFE=40 で、





2SA1725が hFE=129 です。

これでアイドリング電流が正側と負側で安定してくれれば良しとして
まずは一番にそれを確認したいのでこれを一番に交換したいという訳です。





足を曲げ曲げします。





はいー。安定しましたー。 よかったよかった。





ではー

毎度お馴染みの部品配置図を作成しましたので
部品が揃っていることと、電解コンデンサの径が合っていることを確認します。





部品を外して基板を綺麗にします。





2SA561ーGRはUTCの2SA1015L-GRに交換します。





2SC1509は2SC2235に交換します。





2SA777は2SA965に交換します。

ちなみに2SC1509と2SA777はコンプリメンタリ(特性が同じの正負違い)で、
2SC2235と2SA965もコンプリメンタリです。





電解コンデンサ。





この47μFは耐圧が80Vもあるので、ニチコンのFine Goldが無くて
ルビコンの耐圧200Vにしました。
耐圧は「大は小を兼ねる」なので大丈夫です。





ヒューズが汚いです。





ヒューズを綺麗に磨くと全体が明るくなるかなって。
赤いマークは検品の印なんでしょうね。 新たにマークしておきました笑 





おおぉぉ、かっこいい!!





パワーアンプの部品を交換したのでアイドリング調整をし直します。







次はプリアンプ基板ですね。





部品を外します。

軽く言ってますけど実は意外と手間と時間がかかってます汗

RUSHのLIVEアルバム「新約・神話大全」を聴きながら作業しました。





こんな感じなのを





出来る範囲で綺麗にします。 えぇ、出来る範囲で。





交換される部品たち・・・





2SC1681-GRはUTCの2SC1815L-GRに交換します。





2SK30A-GRはUTCの2SK303L-V5に交換します。





最終段増幅でも使用している2SD526は同じく2SC4511に交換します。

2SB596の代替品2SA1725は1つしか入手出来なかったけど
2SD526の代替品2SC4511はまだ入手出来たので良かったです。 日頃の行いか笑





パワートランジスタを放熱器に取り付ける時は
放熱器との密着性を高める為に耐熱シリコングリースを塗り塗りしますよ。





先生、出来ました。





これでパワーアンプ基板とプリアンプ基板が終わりました。







次はこれです。大容量電解コンデンサ。





元のはブランド違いで日本ケミコンのとELNAでしたが、





私はNichiconで揃えました。





1000μFの方は径が35mmから30mmになったので、コンデンサバンドを新調します。





ウィーン!! ガッチャーン!!

ドドドドドドドド!!





ぜぇ、ぜぇ・・・



残すはジャックの交換です。





まずは簡単なREVERBのフットスイッチのジャックから。





菊座ワッシャーと絶縁ナットは元のを使います。





これとこれです。





これは交換するだけなのでまだいいのですが・・・

隣の基板取り付け用のヘッドホンジャックが問題で・・・





こうなっちゃってるのよねー。





こんなジャックは手に入らないので、
ご依頼主さんに承諾を得てあるので工夫して取り付けます。





こうします。





そして

耐熱1,000度Cで紫外線にも水にも強い全天候型の超強力な接着剤で基板にジャックを接着します。





よし!!
これならいいだろう!!

思っていたよりは元と見た目が変わらずに出来たと思います先生。





ちなみにこのジャックはステレオのスイッチ付きで、
プラグを差し込むだけでスピーカーへの配線がOFFになると同時に、
ステレオのヘッドホンに対応させる為にモノラルの出力を左右に分けた信号を
左右両方ともONにするという、もう本当に感心せざるを得ないシステムでして。

勉強になります。





最後にHIGHとLOWのINPUTジャックですね。





これも基板取り付け型でしたが無事に交換出来ました。





完成です!!





かっこいいですねー!!





ノブを綺麗にして取り付けます。

なんか洗剤でジャブジャブ洗うとシルバーのやつとかが剥がれちゃうので
ほどほどにした方がいいみたいです。





動作確認して終了です。

エフェクターの乗りもいいし、良い音ですねー。 お疲れ様でした。





やっぱり昔のアンプはMADE IN JAPANだからでしょうか、作りが良いですよね。
また、RolandとYAMAHAなどメーカーごとにそれぞれの特徴もあって参考になることも多いです。

箱の作りや基板ユニットの支え方や、基板の固定方法など
回路以外の部分も感心しながら作業しています。

あとはアイドリング電流を調整をして時間と温度の経過を観測しながら
熱暴走しないようにチェックすることは大事だとあらためて思います。
パワートランジスタを交換したけどすぐにまた壊れたとかっていうのをネットで見かけましたが
アイドリング調整をしていないようでしたので、それが原因だと思います。

トランジスタの代替品の選び方や電解コンデンサの耐圧、時には測定が必要であったり
メカ的な知識もかなり役に立つことが多いですし、簡単なようで意外と注意点が多いのがアンプです。

そういうことも全てひっくるめて、古いアンプを今でも使い続けられるようにするというのは
やりがいもあるし、楽しいし、嬉しいし、感動もあります。

そのうちに、昔の設計や作りを再現したトランジスタアンプを製作してみたい。
そんな気持ちになりながら作業していました。

望遠鏡で遠くの宇宙を観測すると昔の宇宙の姿が見えるのですが
昔のアンプを修理しているとタイムマシンで時代をさかのぼっていく感覚になるんですよね笑

うん。アンプは宇宙だ。

2023.04.20

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