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No.49「Jugg Box / JBX-Jr30 修理」
今回はJugg Boxのギターアンプ「JBX-Jr30」の修理依頼です。
前回修理したJBX-60はプリアンプがソリッドでパワーアンプがチューブのハイブリッド・アンプだったのに対し、 今回のJBX-Jr30はパワーアンプがICでプリアンプにチューブが使われている「プリ・チューブ・アンプ」です。 小型アンプながら出力30Wです。 不具合の内容は 「GAINのPULLが不安定」 とのことで ついでにオーバーホール(消耗部品である電解コンデンサとトランジスタの交換)と全てのジャックの交換です。 これですね。PULLでGAINがONになります。 確認したところ接触不良の症状なので分解クリーニングで直りそうですが BRIGHTのPULLのLEDはOFFにするとパッと瞬時に消えるのに対し、 GAINのPULLのLEDはOFFの際に若干フェードアウト気味に消えるのが気になります。(あとで理由が判明します) CHは1チャンネルのみですね。 JBX-60はジャックのナットが隠れていたので大変でしたが、これはナットが表にありますね。 裏側です。 なるほど。消費電力が26Wで 出力が30Wか。 スピーカー。 基板ユニットを引きずり出します。 グヘヘヘヘヘ!! これは珍しい光景です!! スプリングリバーブがスプリングで宙吊りになっています!! 基板のあちこちから配線材が生えているので 万が一、配線材が取れてしまった場合に備えて絵を描いてメモします。 それではプリアンプ基板から見ていきましょう。 2SA733です。 基板は綺麗なんですけどやっぱり古い型番のトランジスタですね。 反対側から、2CS945です。 ここにも2SA733と、 FETの2SK30A-GRが2個。 お、街全体を見渡せば一度に確認出来ましたね。 ここにも2CS945 おっと・・・ 「REVERB」のはずが「REBERB」になってます。(粗探ししてすみません・・・) そういえば昔のBOSSのDS-1のサービスマニュアルだったか何かも 英語のスペルの間違いがありました。 まだ現在ほど英語が普及していなかったからかな? 下段のパワーアンプ基板に行きますよー おっと・・・ 邪魔だから抜いておいた真空管の写真を撮るの忘れてました・・・ 最近は修理中は写真を撮り溜めておいて、修理が終わって発送してから記事を書いているので、 撮り忘れが無いように注意していたのですが・・・撮り忘れてました。 なんとかここに写っていますね。12AX7です。 寿命やノイズ等、問題がないことは確認してあります。 2SA970-GRが2個 ほうほう、2SC1627-Yだって。 見慣れない型番ですね。 パワーアンプICが出てきました。 SANYOのSTK1035です。 4558系のオペアンプがあります。、 ちょっと気になる懸念があるので念の為交換します。 毎度お馴染みの部品配置図を描きました。 部品を置いて過不足が無いかどうかと、コンデンサの径が合っているかの確認をします。 それでは手術を始めます。 まずは基板をひっくり返しにくくて作業しづらいパワーアンプ基板から デス・エンジェルのCDを聴きながら交換する部品を全て外します。 パワーアンプ基板で交換する部品たち。 2SA970-GRは廃番品ながらもまだ市場在庫も流通しているのでそのまま2SA970-GRへ交換します。 2SC1627-Yは互換品も入手が難しいので特性から代替品として2SC2235-Yにします。 電源の平滑コンデンサ3300μFは基板取り付け型ということで 径と端子のピッチと形状にこだわり、ルビコンにしました。 こうなりました。見づらいですね。 よいしょ。 ということでパワーアンプ基板をシャーシーに固定して 次はプリアンプ基板です。 ちなみにリバーブ・ユニットをよく見たらACE TONE製ですね。 エース電子工業のブランドであるACE TONEの製造を日本ハモンドが引き継いだようで ACE TONEやその後のRolandとの関係が興味深いですね。 懐かしいメイプルストーリーのBGMを聴きながら プリアンプ基板の交換する部品を全て外します。 プリアンプ基板での交換する部品たち。 なんと、いつの間にか台湾のメーカーUTCが2SA733と2SC945のセカンドソースを生産し始めました。 もうね、どんどん頑張ってもらいたいですね。 ということで2SA733をUTC製の2SA733に交換します。 2SA945もUTC製の2SA945に交換。 FETの2SK30A-GRは以前からUTC製が出ているのでUTCの2SK303L-V5に交換します。 頑張れ台湾。 NECのC4558CをNJM(JRC)の4558DDに交換。 プリアンプ基板、交換完了しました。 このままの勢いでGAINのPULLが不安定なのを直します。 グヘヘヘヘヘ!! 分解・クリーニングします。 カシメを外すとバネの力で勢いよく パーン!! とはじけてバラバラになったりしますので この状態から元に戻す自信の無い人は分解するのは避けましょう。 クリーニングしてから導電性のグリースを塗布します。 密閉されたカバーの中で定位置にバネを押さえたまま、バネから手を離さずに部品とカバーを取り付けて バネに負けない力でカバーを押さえたままカシメを留める必要があるので 私は超能力でカバーを閉じてます。 その後、スイッチの動作確認をします。 このままの勢いでINPUTのジャックを交換します。 こうなります。 ここで一旦、動作確認をします。 GAINのPULLが不安定なのが直りました。 あと、BRIGHTのLEDに比べてLEDの消え方が若干フェードアウト気味な理由も判明しました。 BRIGHTのLEDはメカスイッチでON/OFFしているのでOFFの時に瞬時にパッと消えますが、 GAINのLEDはトランジスタ回路でスイッチングしているので、 OFFにした時に、一瞬ですが電解コンデンサに溜まった電気を放電する時間がかかるんですね。 なのでGAINのPULLのLEDの消え方が若干フェードアウト気味なのは正常です。 ちなみにLEDのON/OFFがトランジスタのスイッチングであると同時にGAINのON/OFFもFETスイッチになっています。 メカスイッチのままだとGAINをON/OFFする際に「ブチッ」って鳴るからかな。 では最後にSEND/RETURNとHEADPHONEのジャックを交換します。 これですね。 これらのジャックは回路図を起こしてスイッチング回路の確認をして適切なジャックを選び、 元のジャックと交換するジャックの端子配列の違いと配線の仕方をチェックしてから交換します。 まずはSEND/RETURNのジャックから。 HEADPHONEのジャックは下ごしらえが必要です。 取り付けました。 こうなります。 ということで・・・ 先生!!完了しました!! 動作良好です!! 小型ながらしっかりした作りでした。 部品交換の際に基板のはんだを除去する為に基板を何度もひっくり返していると YAMAHAの古い基板なんかは配線材が基板から千切れて取れてしまいがちなんですけど このアンプの配線材は基板との接続部分がかなり丈夫でビクともせず、安心感がありました。 色々と古いアンプを修理していると、音や回路とは別にそういうところも評価の対象になってきますね。 また、このアンプはパワーアンプ部分がICでプリアンプ部分が真空管の「プリチューブ」なのですが 当時「プリチューブ・アンプ」という構成はこのJBX-Jr30が初めてだったらしく 成毛茂氏がラジオ番組でベタ褒めしていたようです。 音は、最初はどうやってもトランジスタアンプに負ける音しか出なかったのが プリチューブのGAINに慣れてくると昔の歪まなかった頃のアンプの歪みっぽい音も出せたりして 機材的にも不便だった時代の試行錯誤を体験することが出来ると思いました。 成毛茂氏も、もし現在の様々なギターアンプと比べたらこのアンプをベタ褒めするかどうかは疑問ですが たまには昔のアンプでセッティングに苦労しながら試行錯誤してみるのもいいな、と。 そんなことを思わせてくれるアンプでした。 2023.6.9 |
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