ギターダー
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No.50「Jugg Box / Micro Jugg MJ-3 修理」


今回はJugg Boxのギターアンプ「Micro Jugg MJ-3」の修理依頼です。

前々回修理したJBX-60同様、プリアンプがソリッドでパワーアンプがチューブのハイブリッド・アンプ」です。

日本ハモンドの名機で評判も良いわりにカタログが見当たらないのですが、出力は40Wのようですね。





不具合の内容は 「ごく稀に不安定になり、音がこもったり戻ったりする。」 とのことで
ついでにオーバーホール(消耗部品である電解コンデンサとトランジスタの交換)と全てのジャックの交換です。





MASTER VOLUMEの他にVOLUME1とVOLUME2があって使い分けが難しい。

裏に「OVER DRIVE」という名のフットスイッチジャックがあってVOLUME1の設定をON/OFF出来るので
VOLUME1がOVER DRIVEということのようですが、エフェクターのOVER DRIVEとはイメージが異なり、音が割れる程度です。

まぁもともと歪まないアンプですし、その代わりに太くて暖かみのあるクリーンがとても良いですね。





うらー。





ふむふむ。品番は「MJ-3」で、
出力は40Wで消費電力が70Wですね。





リバーブタンクがあります。





背面パネルを外すと真空管が見えます。





スピーカーはオリジナルですね。





基板ユニットを引きずり出します。

グヘヘヘヘヘ!!!!





パワーアンプ基板

JBX-60と似てますね・・・と思ったら
上下が逆さまなのと回路定数が異なるだけで基板自体は同じものでした。





トランジスタはまずここに2個。2SA1015-Yです。





ここにも2個、2SA1015-Yです。





念の為、隠れている方も確認します。2SA1015-Yです。





あと2SC2534が2個。

ここはJBX-60では2SC2333でしたが、2SC2333と2SC2534は互換品なのでどっちでも可ですね。
どちらも廃番品ですけど、まだ探せば入手可能です。





電源の平滑コンデンサの基板

JBX-60より1個少ないけど基板は共用なのでポッカリとスペースが空いてますね。





これがプリアンプ基板。部品面はあとで見ましょう。





交換を依頼されているジャックはここに5個と、





入力ジャック2個。





ヘッドホンジャックは相変わらず複雑なのでよく配線を確認しないとです。







さて・・・

とりあえず不具合の症状を確認します。





20分〜30分くらい弾いてやっと症状が出て
ジャックとVOLUMEをいじってたら直って、それを2回ほど繰り返して

「ジャックかな〜?」

と思いつつもまだ原因を特定できないまま症状が出なくなってしまいました。

軽い接触不良がいじっているうちに解消されてしまった可能性もありますし、
基板の裏にホコリが結構あるので稀にショートする可能性や
基板が熱膨張して劣化したハンダが浮いてしまう可能性も考えられまが
一番怪しいのはコンデンサやトランジスタの劣化ですかね。

ということでオーバーホールします。





やっとプリアンプ基板を外します。





全てICを使っていてトランジスタは無いですね。





オーディオパワーアンプIC(プリアンプIC)のTA7136APです。





これもパワーアンプIC、BA521。リバーブのドライブ用ですね。

まぁICは交換の必要はないかと。





パワーアンプ基板からいきます。





うー。

完全には裏返せなくて作業しづらいですね。







と、そのときである・・・



カラン・・・とスペーサーが転がってきたのである。







どうやらこの真空管を押さえるバネの金具を固定するネジと基板を固定するネジを
同じスペーサーで共用していたようで、金具側のネジが無かったようです。





基板側。4本のスペーサーで基板を留めています。





ということはネジが1本足りないわけで、

果たして最初から無かったのか、バラす前の写真を確認しますが
外れているネジは奥側なのでどの写真からも見えず・・・

と!! その時である!!

ここに何かを発見!!







こっ、これは・・・!?







スピーカーのマグネットにくっ付いていました!!

ふぅ、よかった。





パワーアンプ基板から外した部品。





例によってチマチマと(無駄に)時間をかけて部品配置図を作成しました。





交換する部品が揃っていることを確認します。





2SA1015-Yは2SA1015-Yへ。





2SC2534も2SC2534へ交換します。

今回は互換品や代替品を使わずに済みました。





電解コンデンサはNichiconのFine Gold。

コロナやウクライナ侵攻などの影響で深刻な半導体不足が続いていて
いよいよ流通在庫も無くなってきました。今回はなんとかなりましたがうちの在庫も少ないです。





交換後。





お、おう・・・入力ジャックの配線材が簡単に千切れました。

もともと千切れそうになっていてそれが接触不良の原因だったのかも。





ちなみに外した47μFの電解コンデンサは劣化により51μFに肥大化していました。







続いて電源の平滑コンデンサを交換します。





うーむ。

このくらいまでしか基板を裏返せない状況でのハンダ作業です。





外しました。

松下の47μF/500V、450VとUNICONの33μF/350Vを
ドイツ製F&Tの47μF/500VとUNICONの33μF/500Vに交換します。





47μFが劣化して56.46μFに肥大化していました。





33μFが劣化して50.31μFに肥大化していました。





もう一つの47μFも劣化して51.81μFに肥大化していました。





交換後。





ここで念の為に動作確認します。

うむ。動作良好です。







続いてプリアンプ基板です。電解コンデンサを取り外しました。





取り外した電解コンデンサたち。





470μFが544μFに肥大化していました。





10μFも14μFに肥大化していました。





全てNichiconのFine Goldに交換します。

1μFと10μFはどこも在庫無しの入荷待ちですが、
今回はうちにまだ在庫があったのでなんとかなりました。





交換後。





ここでまた動作確認します。もう完璧で動作良好です。





どうもリバーブの効きが良い時とそうでない時があると思ったら
VOLUME2を上げるほどリバーブが目立たなくなるんですね。

このアンプはクリーンが良いしVOLUME2を上げてもどうせ歪まないので
VOLUME1と2はあまり上げずにリバーブの効いたクリーンを楽しむのが良いですね。







では最後に全てのジャックを交換します。
個人的には今回の山場です。





ヘッドホンジャックがえらいことになってますね。
ステレオのスイッチ付のジャックを用いて
ヘッドホンのプラグを差し込むだけで回路が切り替わるようになっています。





よく回路を解析してオリジナルのジャックの端子の機能を調べてからバラします。





抵抗器を新しいジャックに移植します。





新しいジャックもステレオのスイッチ付ですが端子配列が異なるので
配線図を描いて何度も確認して組みます。





ヘッドホンジャックを取り付ける前に
LINE OUTとスピーカーOUTジャックを交換します。





これも新しいジャックは端子配列が異なるのでよく確認しながら交換。





そしてヘッドホンジャックも取り付けます。





残りはFOOT SWのジャックですね。
OVER DRIVEとREVERBのフットスイッチ用ジャックです。





オリジナルは両方ともモノラルのスイッチ付ジャックでしたが
REVERBの方はスイッチは使われていないのでスイッチ無しのジャックでOKです。





これで背面パネルのジャック交換は完了です。





ちなみにオリジナルの平ワッシャーが特殊な分厚いやつなので





この分厚い平ワッシャーだけは流用します。





こんな感じになりますね。





続いて前面パネルの入力ジャックですね。

端子配列が異なることで配線材の長さが足りないので配線材も交換します。
下ごしらえしてから取り付けます。





交換完了しました。





1がHIGHで2がLOWです。





あとは細かいところですが、
最近はノブは洗剤でジャブジャブ洗わないようにしています。
洗剤が染み込むとシルバーの丸い部分とかが剥がれてしまったりするんですよね。


硬めの筆で溝の汚れを取るといいですね。





シルバーの部分は綿棒で綺麗にします。





あとこれ。

真空管を押さえるバネが全く効いていなかったので抜けやすい状態でしたので、





金具を内側に曲げてしっかり押さえるようにしました。

抜く時は金具を広げて抜くので、広がったらまた内側に曲げて下さい。





なお、真空管の指紋は拭き取って下さい。
油が付いている状態で高温になると、ガラスの表面温度に差が出て割れやすくなりますので。





完成です。





今回は映画を観ながら長めに動作確認しました。

小さいのに低音が効いて素晴らしいクリーンサウンドが出ます。







基板の構成は同じJugg Boxシリーズ、60WのJBX-60と似ていますが、
JBX-60よりもこのMicro Juggの方が新しいのか
前面パネルをシャーシーから剥がさなくてもよかったり
ジャックも基板取り付け型ではないので作業性の面で改良されたように感じました。

Jugg Boxのアンプは何種類か修理していますが、このMicro Juggのクリーンは最高ですね。
リバーブも昔のビチャビチャした感じのアレではなく、自然なホールリバーブなのが良くて
極上のクリーンをさらに引き立たせてくれますね。

さて、プリアンプはICを使っていますが、さほどプリで歪むわけではないので
音としてはフルチューブアンプと言っても過言ではないと思います。

チューブアンプとトランジスタアンプで音が異なるというのは違うと思っていて
同じチューブアンプでも色んな音があるし同じトランジスタアンプでも色んな音があるわけですが
特にこのMicro JuggはMarshallとは全く異なる暖かみのある音で
ジャズっぽいフレーズを弾くと心地よいと思います。

秋の夜長にお月様を見ながらポロロン・・と。

2023.9.21

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