ギターダー
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No.52「Walter Woods / MI-100-4 オーバーホール」


今回はWalter Woodsのベースアンプ・ヘッドのオーバーホール依頼です。





最初は、ブリッジアースが取れていない時のような「ジー」というノイズがあるということで
修理の依頼だったのですが、チェックしてもなかなかそのような症状が現れず
ご依頼主様のお話でものベース本体、シールド、スピーカーケーブル、スピーカーに原因が無いようで
アンプが暖まることで基板が膨張してはんだ割れする可能性や、
トランジスタが劣化すると暖まった時にノイズが出たりもするのでその可能性など
あらゆる可能性を考慮して時間をかけて入念にチェックしたのですが
「ジー」というノイズどころか他のノイズも全く無くて、症状は確認出来ませんでした。

まぁ可能性としては、
長期間使用していなかった場合に電解コンデンサの中が空っぽになることで
使い始めてしばらくは動作が不安定でノイズが出たりして、使っているうちに正常に動作するようになる
なども考えられますし、

入力ジャック等の接触不良で入力信号のGNDが浮いてしまって「ビー」と鳴ったりして
それが使っているうちに接触不良が直ってしまったとかの類もあるかもしれません。


あとは、
「INPUT VOLUME」と「MIDDLES」をフルにするなどの極端なセッティングにすると
その周波数帯域が持ち上げられて「ジー」という音が鳴ったりはしますが、
それはトーンコントロールによって特定の周波数帯域が持ち上げられて出る音なので
不具合とは違いますよね。


ただ一つ、ノイズとは別に、INPUTジャックのスイッチ端子に接触不良があって
INPUTの「LOUD」と「SOFT」(HIGHとLOWですね)が切り替わらず
どちらに入力しても同じ音量(おそらくLOUD側の音量)になってしまっているというのがありました。
これは端子のクリーニングで直ると思います。


ということで、不具合は無いものと判断し、
ジャックのクリーニングだけしてそのままご返却を打診したところ
オーバーホールをするということになりました。





後ろに放熱フィンと、縦置き用の足かな。





コンパクトなヘッドですね。





小型ながら出力は100Wです。
スピーカーは合計4Ωまでですので、4Ωのスピーカーを1つか、8Ωのスピーカーを2つ繋ぐ感じです。





入力は「LOUD」と「SOFT」、いわゆる「HIGH」と「LOW」ですね。
コントロールは5つと、ブーストスイッチみたいのがあります。

つまみを全て真ん中にセッティングしても文句の無い良い音が出ますし
ベースにとって必要なコントロールが操作出来るので、とても使い易いです。

使っているうちに欲しくなりました笑





蓋を開けて見ます。

おーっと、アース線が繋がっているのね。





おおぉぉぉぉ!!
なんかレトロでかっこいいですね!!

しかし蓋を開けるまではあまり気付かなかったのですが
こうしてみると前面パネルがかなり歪んでいますね。直せるかなぁ。





うん。2つのスピーカー端子は並列になっているので
4Ωのスピーカーを1つ繋ぐか、8Ωのスピーカーを2つ繋ぐということでいいですね。







おや? 紙?





こっ、これは・・・!?





回路図でした!!

昔のアンプって回路図が付いてるのが普通だったんですよね。





スキャンしました。





手描きはいいんだけど、読みづらい・・・





さて、

交換する電解コンデンサはまずこれ。

海外製の部品の中に、松下の電解コンデンサが使われています。(左側の2個)
そういえばMarshallのLead12にも松下の電解コンデンサが使われてる個体がありました。
右側の2個はSPRAGUEです。





そしてこれ。容量が何μFなのか分かりにくい。





SPRAGUEでした。
「μF」という単位が記載されていないので分かりにくいですけど
「200 - 200DC」という表記なので200μF/200Vです。





これはファイナル、最終段パワートランジスタですが・・・
型番が消されていて「HANDS」と「OFF」って書かれています。

どうも回路図に載っていないようで? 型番が分かりません。
まぁこれはよほど劣化して駄目にならない限り交換しなくていいかな。





あと、このへんに放熱器に取り付けられているのは
TIP32C、TIP35Cというパワートランジスタで、これも壊れない限り交換しなくていいかな。





消耗品として交換するトランジスタはこういう小信号用トランジスタ。

これは2N5088ですね。Motorola製です。

最初にノイズをチェックしている時に端子にホコリが付いてるので気になりましたが、
テスターで確認してもショートしていませんでした。





そしてこれはMotorola製の2N5210と・・・
どうやらFETの2SK2835なんですけど、2SK2835は東芝なのに見た目とロゴが東芝ではないですね。
セカンドソースか。「S」ってどこだ? SANYOでもサンケンでも新電元でもSTマイクロでもないし
印字が斜めなのは中国製の偽物に多い特徴だけど。





そもそも他のは海外製の「2N」型番なのに何故これは国産の「2SK」型番なのか。
しかも回路図では2N5953というFETだし、2SK2835だとかなりオーバースペックです。
交換されたのかな? 謎は深まるばかりです。



この2N5210と2SK2835の組み合わせが4セットあります。全て交換します。







とりあえず、INPUTジャックの接触不良のクリーングからやりましょう。



これはスイッチ付のジャックで、ここがスイッチになっています。





プラグを差し込むと端子が離れてOFFになり、プラグを抜くと導通してONになります。





これが付属の回路図です。





見にくいので描き直しました。

これがジャックのスイッチを使った「LOUD」と「SOFT」の切替の仕組みです。
プラグを「SOFT」に差した方が音量が小さくなります。





そして今回は「LOUD」ジャックのスイッチに接触不良があるので、





プラグを「SOFT」に差した時に入力インピーダンス決定抵抗の100kΩがGNDに落ちず、
音量が下がりきらないのです。





ということで・・・


スイッチの接点をクリーニングするわけですが、


実は点で動作するスイッチの端子には接点復活剤を使ってはいけないのです。


プラグを差し込むところの端子のように、摩擦が生じる箇所は接点復活剤が有効ですが
摩擦が生じない点での動作箇所では、かえって不具合が生じると接点復活剤の説明書きにあります。
なのでリレーのスイッチ端子にも接点復活剤は使えません。


そこで、細長い紙にCRCを染み込ませて





その紙を接点の端子に挟んで、抜きます。
これを何度も繰り返します。

数回で直りましたが、入念に何度もやっておきました。







さーて、ここからが問題です。

基板の外し方が難しいというか、普通に外そうとしてもドライバーが入りません。





このネジを外しただけでは駄目で、





シャーシーもバラさなくてはならないし・・・

(備忘録としての記録も兼ねています。)





ここのはんだも外す必要がありますね。





とりあえずこうなりますね・・・





そしてこの茶色い棒がネジなんんですね。





パワートランジスタを放熱器に固定させるネジです。これを外します。





ふぅー。

ここまでバラせば作業出来るかな?





この、あとから追加したかのような電解コンデンサからいきます。





ビヨーンと足の長い47μF/35V





nichiconのFine Goldに交換します。





元と同じように足を伸ばして装着するので収縮チューブを被せます。





こうやって取り付けて、





元と同じようにセットします。





次はこの金色のやつ。金色ですけどFine Goldじゃないですよ。





これはバイポーラでといって極性が無いやつなので
nichiconのバイポーラ、MUSE-ESに交換します。





こうなります。





表側から見た時に文字が見える向きにしました。
思いっきりトランジスタが前に出て目立ってますが。





えぇ。では今度はそのトランジスタを交換しちゃいましょう。





海外トランジスタ。Motorola製の2N5087です。





国産トランジスタとは端子配列が異なります。

おぅ、端子配列が刻印されているぞ。EBC(左からエミッタ、ベース、コレクタ)です。





うん。EBCですね。





まぁ一般的なPNP汎用トランジスタなので、国産の2SA1015でも全然問題ないんですけど、
せっかくなので海外トランジスタを使います。

元と同じ2N5087に交換します。ON-semi製です。





こうなりますね。





ここらで動作確認しておきましょう。

絶好調ですね!!







ちょっと一休み・・・



丈夫なパワートランジスタはよほど劣化しない限り交換しなくてもいいと思うし
重要なパワーアンプ部分をごっそり変えてしまって別のアンプになってもあれなので
今回は交換しませんが、見るだけ見ておきましょう。





回路図ではTIP31CとTIP35Cになっているところが





TIP31BとTIP35Bですのでちょっとだけ回路図と違いますね。





ここにもTIP31B





2N6397です。 これは回路図に載ってないなぁ。







少し前から薄々気付いていたのですが、

これは添付されていた回路図と現物が違いますね。





特に、あとでやるプリアンプ基板は回路図だとオペアンプが4回路分ありますが





基板のどこにもオペアンプが見当たらないんですよね。

つまりこのアンプは、私の大好きなオール・ディスクリート・アンプですよ。







では作業を再開します。



電源の整流回路部分の平滑コンデンサです。





200μF/200Vなんですけど、容量も色も大きさも同じものは入手が難しいです。





ほとんど選択の余地が無くて、近似値の220μFで耐電圧は余裕の400Vです。
日本ケミコン製ですので信頼性はバッチリです。





ちなみに200μFも220μFも実質的には同じですから。
実際に測定してみても219.6μFあるわけですし。
劣化して肥大化してる可能性があるとしてもです。





ちなみにこっちの新品はどうかというと、220μFが実測で181μFですね。
心配しないで下さい。
メーカー公表の許容誤差が±20%なので176μF〜264μFまでなら正常なのです。
むしろ、これから使っていくうちに肥大化してゆくことを考えると余裕があります。





こうなります。





表側から見た時に文字が見える向きにしてあります。





なお、たまに出てくる「表側」というのは、上の蓋を開けた時に見える側のことで
私の個人的な感覚で表現しております笑





さぁ!!

これでパワーアンプ基板は完了ですのでまた動作確認します。

先生、絶好調です!!







次はこの4本。プラスマイナスの両電源部分の平滑コンデンサです。





松下の1000μF/16VとSPRAGUEの100μF/50Vを
UNICONの1000μF/16Vと100μF/100Vに交換します。
本当は大きさも合わせたいのですが、時代が進めば小型高性能化してゆくものだし、
チューブラ型(端子が両側から出ているタイプ)はあまり選択の余地がないです。





こうなります。
数値が見えやすい向きに取り付けました。





ここでまた動作確認します。

絶好調ですね!!







次はいよいよプリアンプ基板です。

前面パネルの曲がりがすごい・・・





ガッチャーン!! 外します。





トランジスタ8個を交換します。





前面パネルを外したついでに気になる曲がりを矯正しておきましょう。





端の方も曲がってますね。





万力で地道に矯正していきます。





かなり真っすぐになりましたね!!





スケールを当てても真っすぐですね!!





それではトランジスタを交換していくわけですが・・・





2N5210の取り付けの向きが気になりますね。
ECBの端子配列になっている基板にEBCの端子配列を横向きに取り付けているような感じです。

それべつに構わないのですが、端子配列をよく確認する必要がありますね。





端子配列を惑わされないようにしないとです笑





とりあえず1セットを外しました。
トランジスタの2N5210とFETの2SK2835です。





ソケットの端子番号が左から1-2-3なので
2N5210の端子配列は左からE-B-Cです。





2SK2835の端子配列は左からD-S-Gです。





ということで、

2N5210を2N3904に交換して、2SK2835を2N5457に交換します。





トランジスタを全て外します。





4セット、8個を交換します。





交換完了。





元通りに組んでいきます!!





おぅ、シャーシーに組んだらまた全面パネルが反ってきたような?





元に比べればましですが、若干曲がってますね。
元からこういう作りなんですね。





前面パネルが曲がってしまう原因の一つに
どうもこのスイッチの部分の間隔が短いというのがあると思います。
ネジの留め方ではこれ以上長く出来ないので根本のはんだ部分で調整するしかないのですが
他にもPOTの部分の間隔やシャーシーの留めネジと基板のネジ穴のピッチも関係しているようなので
元より改善されているし、このくらいにしておきましょう。





最終動作確認です。

絶好調です!!





最後に回路図を元の位置に格納します。





完了です。お疲れ様でした。





今回は久しぶりにベースアンプでした。
ちょうどベースを弾きたかったので良い機会でした。
しかも本当に音が良くて、全て真ん中にセッティングしても既に良い音が出るし
コントロールの効きが良いので音作りがし易いですね。

海外製ということでほとんどの部品が海外製でしたが
一部の電解コンデンサが松下製でした。
日本の電子部品が世界に認められているということなので嬉しくなったりして。

それにしても今回のアンプは音も良いけど作りもオリジナリティがあって良かったです。

見た目も良くて音も良い。
欲しくなっちゃいましたがレアで入手困難ですね。

ICを使わず、全てディスクリートで構成されているところも本当に私の好みで
こういう古いアンプはずっと残していきたいですね。

ずっとRUSHのLIVEアルバムを聴きながら作業をしていたので
ゲディ・リーのようにベースを弾けるようになりたいという思いが高まりました笑

うむ。練習しないとです。

2023.10.28

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