ギターダー
topページ
_______________
No.57「YAMAHA / F50-112 修理 3台目」


今回はYAMAHAのギターアンプ、F50-112とF100-112の修理・オーバーホールの依頼を受けました。
ガリがあるのとPUSH-PULLのスイッチが反応しないなどの不具合があるとのことです。

F50-112を修理をするのはこれで3台目ですが、F100-112は初めてです。



ふむふむ、外観と大きさは同じなんですね。



えっ!?

手前のF100-112の方が大きいじゃないか!? って?





いやいや、実は遠近法で手前の方が大きく見えるだけで

同じ大きさなのです。

怖いですねー・・・



これでもまだ手前の方が大きく見えるか・・・





おぅ!!

今度は上に乗せたF50-112の方が大きく見えるぞ!!







同じ大きさです。





かっこいいですねー





どこが違うのかちょっと確認してみましょう。





コントロールも同じですね。





F50-112の裏側





F100-112の裏側

まずはF100-112の方がスピーカーが大きいですね。





F50-112のスピーカー

定格出力=60W
最大入力=180W





F100-112のスピーカー

定格出力=100W
最大入力=300W







ちなみに、F50-112の背面パネルの右上のネジを外す時にどうも妙に空回りするなーと思ったら・・・

ネジ部分が切れて中に埋まっていました。
見た目は留まっているように見えますが、ネジの頭は引っ張れば抜ける状態です。





自分のアンプだったらイチかバチか埋まっているネジに下穴を開けて逆ネジで外すことに挑戦して
市販のネジに交換するような感じだと思いますが
逆に何もしない方がオリジナルのネジの頭で景観を保てるような気がするので、
私の方ではへたにいじらずそっとしておきますね。



それでは基板を見てみましょう。



F50-112の基板ユニット





F100-112の基板ユニット

パッと見たところ同じですが、F100-112の方が明らかに重いです。
トランスが重いんですね。







F50-112のトランス  100V 54V 80VA





F100-112のトランス  100V 76V 140VA









ひっくり返します。



F50-112





F100-112

電解コンデンサが大きいのと、
こっちの方が放熱器の高さがありますね。





F50-112





F100-112





放熱器に最終段トランジスタが取り付けられています。
ここはよほど劣化していない限り交換はしませんが、カバーを外して型番を確認しましょう。





F50-112





F50-112は今まで2台修理したのと同じです。2SC898が2個です。
VCBO=150V、Ic=7A、Pc=80W のトランジスタです。





F100-112はどうでしょうか。





ほこりで汚れているのはあとで掃除するとして・・・

2SC1586が2個ですね。
VCBO=250V、Ic=15A、Pc=150W のトランジスタです。





ということで、細かいところはあとでそれぞれ見ていきましょう。

今回はF50-112をやります。



では見ていきます。

F50-112です。





電源基板からいきましょう。





まずはこれ。

2SA490-Yと2SD726-Bです。

とても悩みの種となるトランジスタです。
詳しくは後ほど・・・





2SA777と2SC1509です。





そして2SA970-GRと、FETの2SK30A-GRです。

まぁどれも過去に修理したF50-112と同じですね。





ここにパワーアンプ基板があります。





カバーを外しました。





2SA814





2SC1624が2つ





2SC1509





2SA777





2SA872Aと2SA970ですね。





FETの2SK30A-Yです。





ちなみにこれは温度補償用のダイオードです。





続いてプリアンプ基板ですね。





FETの2SK30A-GR





おっと、今までのF50-112では2SC2240-GRだったところに2SC1681-GRですね。





ここもですね。





ここもです。





つまり2SC2240だったところが2SC2240よりも古い2SC1681になっているということは
今回のやつは今まで修理した2台よりも前に製造された個体だということですね。

念の為、確認します。

修理した1台目のシリアルナンバーが3682で
2台目が7664で、





今回のは2738なので一番初期に近い個体ですね。





はい。

あとは消耗品ではないので交換しませんが見ておきましょう。


リバーブのドライブ用のパワーアンプIC、TA7220Pと、





オペアンプの4558DV艶あり4桁シリアルが6個とかあります。







ではオーバーホールする前に、不具合を直しておきましょう。

可変抵抗器のガリやスイッチの接点不良を直していきます。



症状は・・・

・VOLUME:結構ガリがある
・GAIN:ほとんどガリ無し、SW正常
・MASTER VOLUME:わりと酷いガリがある
・TREBRE:ガリ無し、SW正常か?不安定か?
・MIDDLE:ガリ微量
・BASS:0〜3付近に普通のガリがある
・LEVEL:わりと酷いガリがある
・Q:バチバチ系のガリがある
・FREQUENC:ガリ無し
・REVERB:ガリなし

という感じです。



可変抵抗器からやります。





結構酷かったガリも綺麗に直りますね。
ふたを閉める前に入念にチェックします。





PUSH-PULLのスイッチが反応しない件ですが

確かにTREBLEをPULLにするとBRIGHTになるはずが反応しないように思ったんですけど
変化が僅かだから分かりにくいだけだったようで
何回も試しているうちに、正常にBRIGHTがON-OFF出来ることが確認出来ました。

でも最初のうちは効かなかったような気もしてなんかモヤモヤするので
一応分解クリーニングしておきます。





ケースを開ける前に中のバネがどこにどのようにはまっているかを知る必要があるのと
手を使わずに密閉されたケースの中のバネを動かしたり抑えたりする必要があり、
メカに弱い人は元に戻せなくなる可能性大なので注意して下さい。





この部品も上下はもちろん左右にも向きがあって、逆向きだと正常に動作しません。





このグリースが古くなると誤動作を招く原因になります。





接点復活剤で綺麗にして防錆グリースを塗布します。





スイッチが正常に機能することを確認します。





動作確認をします。

おー、全てのガリが無くなっていい感じですねー







あとはオーバーホールなんですけど
一応、アイドリング電流を測定しておきます。





最初の頃は回路図もサービスマニュアルも無かったので
自分でだいたい相場のアイドリング電流に調整していたのですが
今は回路図とサービスマニュアルがあってエミッタ抵抗で5mVとあるので
アイドリング電流を22.7mAを流していることが判明していますが、
(0.005A÷0.22Ω=0.227A)

アンプが暖まって安定した状態でも実測3.61mVですね。
今は冬でエアコンを付けていますが現在の部屋の温度が20度Cなので
トランジスタの動作基準温度=25度Cよりも低いからかな。





半固定抵抗器をちょっと回しただけで4,9mVか5.6mVかになって
なかなか合わせづらいのですが一応5mVに合わせてみました。





中間点電位も32V±1Vが基準のところ34Vくらいあったので32Vに合わせましたが
まぁどうせオーバーホール後に調整するので今は現状の確認ということで。



それではオーバーホールします。

今まで手描きだったF50-112の部品配置図を作成しました。
ここんとこ白い紙がどう補正しても写りが悪いです・・・





部品を並べてちゃんと揃っていることを確認します。





古い廃番部品も入手困難になって新たに代替品を探したりしますし
現行品も廃番予定になって入手困難になったりしているので
以前に同じ機種を修理・OHした時とは部品のブランド等は変わったりします。





今まで無極性の電解コンデンサはなるべくNichiconのMUSE ES(緑色)を使っていましたが
コロナやウクライナ情勢の影響で?入手困難になったので
在庫に余裕の無い1uFはRubicon製(黒色)にしました。

べつにグレードダウンしたわけではなくて、
NichiconとRubiconの関係をギタリストに分かり易く例えると
FenderとGibson、もしくはBOSSとMaxonのようなものです。





では始めます。





ジョー・サトリアーニのLIVE版を聴きながら、交換する部品を全て外します。





さようならする部品たち・・・





こんにちはする電解コンデンサたち・・・





トランジスタは全て廃番品なので互換品や代替品に交換します。

2SC1509-Rを2SC2235-Yに交換します。





2SC1681-GRは2SC2240-GRに交換。





FETの2SK30A-GRは2SK303L-V5に交換します。
UTC製は写真に撮ると型番が見えにくいんですよね・・・





ムキになって光の加減を調整して撮り直すとこうなります





2SK30Aの端子配列はS-G-Dで、2SK303Lの端子配列はG-S-Dなので
忘れずにSとGを入れ替えます。





装着後、故意に曲げたり捻じったりしない限り端子間は接触しませんが
念の為に収縮チューブで絶縁しています。





交換完了。





とりあえずこの時点で動作確認します。

動作良好です。







続いて電源基板です。





部品を外していきます。





さようならする部品たち・・・





こんにちはする部品たち・・・





もうお馴染みですね。
2SC1509を2SC2235-Yに交換します。





2SA777を2SA965-Yに交換。





2SA970-GRはそのまま2SA970-GRに交換。





FETの2SK30A-GRは2SK303L-V5に交換。





そして今回とても悩んだのが2SA490-Yと2SD726-Bです。

どちらもとっくに廃番品なのですが、それでも今までは普通に入手可能だったのです。
それがだんだん入手が難しくなってきまして、
代替品もなかなか適切なのが見当たらず・・・

というのも、2SA490(-50V、-3A、25W)は−15Vの定電圧化回路に使っていて
+15の定電圧回路には2SA490のコンプリメンタリの2SC790(50V、3A、25W)を使えばいいのに
わざわざコンプリメンタリでないオーバースペックの2SD726(100V、4A、40W)を使っていて
定格がVcbo=100V、Ic=4A、Pc=40Wでなければならない理由が見当たらないのです。

許容損失(Pc)が20Wや30Wならわりと種類があるんですけどね、
40Wになってコレクタ-ベース間電圧が100Vだとかなり見つけづらくなります。

私は正側も負側も2SA490(-50V、-3A、25W)の定格に合わせて
2SB834(-60V、-3A、30W)と2SD880L(60V、3A、30W)でいいと思っていて
それで問題ないと思っているのですが

わざわざコンプリメンタリでないオーバースペックの2SD726が使われているのが気になって
根負けしてオリジナルと同じ2SA490-Yと2SD726-Bを入手しました。

今回1セット使って残り5セット(5台分)です。





まぁそんなこんなで・・・

交換しました。





Fine Goldの金色が眩しいですねー





完璧です。





ことあるごとに動作確認です。

はい!! 動作良好!!







最後にパワーアンプ基板です。





これは基板が取り外せるので作業がし易いです。





交換する部品を外します。





さようならする部品たち・・・





こんにちはする部品たち・・・





ちょっと耐圧が大きいので探すのが難しい耐圧160Vの33μF

大きさが小さくなっているのは昔より現在の方が小型高性能化されているからです。
元が日本ケミコンに対してNichoconです。





2SC1509と2SA777は2SC2235-Yと2SA965-Yに交換。





2SA970と2SA872Aは全て2SA970-GRに交換。





2SK30A-Yは2SK303L-V3に交換します。

プリアンプと電源基板の2SK30AはランクがGRでパワーアンプの2SK30AだけランクがYなんですね。
なので2SK303LのランクもV5とV3で使い分けます。
まぁあまり気にしなくても大丈夫ですけどね。





2SA814は今まで代替品として2SA985Aを使っていましたが
だんだん流通性の低下とともに価格にプレミアが付いてきてしまったので
流通性も考慮して2SA1668にします。





2SC1624の代替品も今までは2SD669Aを使っていましたが
2SC4382にします。

もう昔のトランジスタがどんどんどんどん入手しづらくなっていきますね。





交換しました。





いい感じですね。





取り付けます。

ガッチャーン!!





アイドリング調整をします。 エミッタ電圧を5mVに合わせてエミッタ電流を22.7mA流します。





実際には合わせたあと常に変動していますので
アンプが暖まった状態で熱暴走しないかどうかを確認します。





上がってきましたが・・・





自動的に下がっていき、5V付近に戻ろうとします。

つまり、温度補償回路が正常に働いているということで
ちゃんと熱暴走を防いでいるということです。





次に中間電位を調整します。

サービスマニュアルによるとF100-112は45V±1V、F50-112は32V±1Vとありますが
今のところ30Vですので、





32Vに合わせます。





中間電位を上げるとエミッタ電圧も上がるので調整し直します。





最後に波形が上下で対称になるように調整します。





これで調整が終わりました。



残すは大容量電解コンデンサです。
1つは電源の平滑コンデンサで、もう一つは出力のカップリングコンデンサです。





劣化してくると上部が膨れてくるんです。





膨れています。





昔より現在の方が小型高性能化されているので小さくなりますが
どちらも2200μFの耐圧100Vです。





こう並べれば大きさの違いは気にならないですね!笑





交換しました。





これで完了ですね!!





愛着が湧いてしまっています・・・





いい感じですね。





動作良好です!!

お疲れ様でした!!







このアンプはPOTのガリが出やすいんですよね。
そして、だいたいグリーニングで直るんですけど、 たまにカーボンが激しく摩耗してしまっていてガリが取れないものがあるので
ガリが取れるかどうかが運命の分かれ道ですね。
今回はクリーニングで取れたので良かったです。

特にスイッチ付のPOTとセンタークリック付きのPOTは同じものが見つからないので
本当にそこだけがこのアンプの修理で怖いところです。

あとはトランジスタの代替品があるかどうかですね。

以前は普通に入手出来ていた代替品でも最近は続々と入手困難になってきていますので
もう本当にその都度その都度、適した代替品を探さないとっていう感じになってきています。

そういう意味では、以前のように「トランジスタ互換表」を見て探す時代は終わったかなと。

互換表に載っているトランジスタはもう全滅に近くなってきているので
台湾製などの新しいセカンドソースからデータシートを見て探さないと、
型番だけで探すのは限界がありますね。

あと、私の修理記事も含めて、ネットの記事を読んで
「この人がこの互換品にこれを使ってるからこれでいいだろう。」
と判断するのも危ないですね。

同じトランジスタでも回路での使い方によって互換品になるかならないかが変わってきますし
適切なマージンが取れているのか、ギリギリになるのか、
分かっていないと危ないですよね。

逆に、自分で互換品や代替品を選定出来る人にとっては
修理のしがいがあって面白いかもしれないですね。

あと、稀少なトランジスタほど中国製の偽物が出回っていて最近は見分けるのも困難なので
あまり稀少なトランジスタにこだわらず、なるべく新しいメーカーの部品を使う方がいいと思います。

まぁトランジスタ選びは趣味と修理でもまた変わってくるか・・・

2024.3.13

_____________



Copyright (C) 2004 GUITARDER All Rights Reserved.