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No.58「YAMAHA / F100-112 修理」


YAMAHAのギターアンプ、F50-112とF100-112の修理・オーバーホールの依頼を受けたうち
前回はF50-112をやったので、今回はF100-112の方です。





F100-112は初めてですが、F50-112と基板が共用のようです。
同じ機種の出力が違うアンプは共用基板のものが多いですね。
異なるのはトランスと最終段のパワートランジスタと大容量電解コンデンサとスピーカーくらいかな。
あ、あと重量がかなり重くなりますね。

何故かカタログ公表値(F50-112=18kg、F100-112=21kg)より実測の方が重いです。
特にF50-112は梱包前で20kg超えていたので140サイズでも20kg以上で160サイズになりました。
(運送会社や時期によります。)

他にもマイナーチェンジ的な相違部分があるようなのでそういうところも見ていきます。





まずは前回もざっと紹介したところから・・・



裏側です。





スピーカーはオリジナルですね。 F50-112のスピーカーよりも定格が大きいです。





基板ユニットを引きずり出します。





最終段トランジスタは2SC1586が2個です。





ほこりがあったので綺麗にしておきました。





基板側ですねー





こちらもほこりが目立つので・・・





まずはハケと掃除機で綺麗にします。





ではプリアンプ基板を見ていきます。





「LC83371」とある基板なのでF50-112と同じですね。

FETのK30A-GRです。





K30A-GRと2SC2240-GRです。

前回のF50-112では2SC2240-GRのところが2SC1681-GRでしたが
これはF50-112Fと100-112の違いというわけではなくて、
初期は2SC1681-GRだったというだけですね。





2SC2240-GRと2SC1509-R





あとはオペアンプがJRCのNJM4580DVでF50-112と同じで、





リバーブのドライブ用のアンプICがTA7220PでこれもF50-112と同じです。







電源基板です。





FETの2SK30A-GRと2SA970-GRですね。





これがここ最近、人類の存続を脅かす2SA490と2SD726ですが
セットであと数台分の在庫を確保してあります。





その手前にあるのが2SA777と2SC1509です。







そしてこれがパワーアンプ基板です。







さぁ、いきなりですが先生!!

問題はこれですよ。

FETの向きが逆なんです。





ちょっと前回やったF50-112の部品を抜いた基板で説明しますと・・・

基板にはトランジスタの種類と向きが分かるようにマークが描かれていて
白塗りがPNPトランジスタ、白枠がNPNトランジスタ、二重の白枠がFETで、

半円形のマークの形で装着する向きが示されているのです。





ちなみにF50-112ではFETは2SK30A-Yでしたが・・・





今回は逆向きに装着されているので、つまり端子配列が逆向きのFETだということです。







えぇ。



2SK127AというFETですね。

2SK30Aの端子配列がSGD(ソース、ゲート、ドレイン)であるのに対して
2SK127Aの端子配列はDGSです。





この2SK127AというFETはもう古すぎてちゃんとしたデータシートが見当たらず
「FET規格表」で限られたデータを見ることしか出来ないのですが、

2SK30Aや2SK303Lなどの一般的なFETの許容損失が100mWなのに対して
2SK127Aの許容損失は250mWありますので

パワーアンプ部分ですし、
F50-112が許容損失100mWの2SK30Aなのに対して
F100-112あえて許容損失250mWの2SK127Aを使っているのであれば
2SK30Aや2SK303Lでは足りないので、

代替品には許容損失250mW以上のNチャンネルFETということでほとんど選択の余地がないのですが
入手性もよくて許容損失450mWの2SK2880があったのでそれを使います。



これは2SA872Aで、2SA970と使い分けられているのですが
2SA872Aが-120V、-50mA、300mWであるのに対して
2SA970は-120V、-100mA、300mWということで
2SA970は2SA872Aの後継品みたいな感じなので、3つとも2SA970でいいと思います。





2SA777と





2SA1509です。
よく出てきますよね。





2SA814





2SC1624





まぁだいたいF50-112と同じですね。



それではまずガリの除去からいきましょう。





接点復活剤で端子の接点とカーボン部分をクリーニングしていきます。





ガリが無くなったことを確認してからフタを閉めます。





スイッチは大丈夫のようですが念の為、分解クリーニングしておきます。





バラバラバラ・・・





接触不良を起こしやすいグリースでベタベタしています。





綺麗にしてから防錆グリースを塗布します。





ふぅー。

何故か今回はスプリングがなかなかうまく収まらなくて閉じるのに苦労しましたが
持ち前の超能力で手で触れずにスプリングを押さえて閉じました。





動作確認です。

バッチリですね!!





部品はいくつかF50-112と異なるだけでほぼ同じなので
F50-112用に作成した部品配置図を使います。





うむ。
全部そろってるな。





プリアンプ基板からやります。





「THE CULT」のCDを聴きながら部品を外していきます。





さようならする部品たち・・・





こんにちはする電解コンデンサたち・・・





トランジスタは、

2SC2240-GRはそのまま新品の2SC2240-GRに交換します。





2SK30A-GRは代替品の2SK303L-V5に交換します。





毎度のごとくトランジスタは全て廃番品ですのでほとんど互換品や代替品を使います。

2SC1509-Rは2SC2235-Yに交換。





装着完了!!





ゴゴゴゴゴゴゴゴ!!





ことあるごとに動作確認します。

動作良好です。







次に、電源基板いきます。





部品を外すのは簡単そうですが、
プリントパターンを剥がさないようにはんだを除去したり気を遣うし
結構時間がかかるものなのです。





さようならする部品たち・・・





こんにちはする部品たち・・・





2SA970-GRはそのまま新品の2SA970-GRに交換します。





2SA777と2SC1509は2SA965-Yと2SC2235-Yに交換。

2SA965-Yと2SC2235-Yもそろそろ入手困難になってきたんですよねー・・・

うーむ。





2SK30A-GRは2SK303L-V5に交換。





2SA490-Yと2SD726-Bはもう稀少なうえに、なかなか代替品も見つからなくて
一応、代替品の候補はあるもののいまいち踏ん切りの付かないとこrがあるので
前回のF50-112同様、なんとか確保した2SA490-Yと2SD726-Bを使います。





こうなりますね。





かっこいいですねー。





えへへー。





ことあるごとに動作確認です。

動作確認です。







パワーアンプ基板です。





超能力で基板ごと取り外します。





真夜中に何も音楽を聴かずに、もの凄い集中力で部品を外していきます。





無残にも取り外されてしまった部品たち・・・





新しく仲間入りする部品たち。

なんか大きさが小さくなってショボく見えてしまいそうなのもありますが、
33μ/160Vの電解コンデンサは小型化されて小さいだけで同じ33μ/160Vです。





先ほども説明しましたが、
2SA970-GRと2SA872A-Eは全て新品の2SA970-GRに交換します。





これはもう何度も登場していますね。
2SA777と2SC1509を2SA965-Yと2SC2235-Yに交換します。





話題沸騰中のFET、2SK127AはF100-112用ということだと判断し、
許容損失100mWの2SK303Lではなく、許容損失450mWの2SK2880を使います。

熱による破壊に対して450mWまで耐えられるということです。





2SA814はサンケンの2SA1668に交換します。

サンケン電気は日本の会社ですね。





2SC1624は2SC4382に交換します。これもサンケンです。





こうなりますね。





おー、かっこいい!!





ちなみに温度補償用のダイオードを放熱器に取り付けるのですが





熱伝導率を高める為のシリコングリースを拭き取っていたのを塗り直します。





これで温度補償が効いて熱暴走を防ぎます。





調整していきます。





アイドリング電流を22.7mA流す為にエミッタ電圧を5mVに合わせます。





次に中間電位を合わせます。

F50-112の中間電位は32V±1Vに合わせますが、F100-112は45V±1Vです。

最初は52Vありました。





45Vに合わせるのがなかなか難しく、なんとか44.45Vに。
まぁ±1Vの範囲に収まっているのでOKです。

中間電位を合わせるとアイドリング電流も連動して上下するので合わせ直します。





信号の波形が上下で同じ形になるように調整します。





先生!!

調整が終わりました!!



最後に大容量電解コンデンサを交換します。





F50-112は2200μFの耐電圧100Vでしたが、F100-112は2200μFの160Vです。





耐電圧160Vを探すのが大変でした。

大きさの違いを誤魔化す為に遠近法を使って撮影してみましたが・・・





並べるとこうなります。

昔に比べて技術が進歩したので同じ2200μF/160Vでも小型化されたわけで
決して小さいからチャチだということではありません。





こうなりますね。





はい、これで完成です!!





ゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・





末永くご愛用下さい。





お疲れ様でした。







前回と今回でF50-112とF100-112の違いを比べることができたわけですが
RolamdのSPIRIT20とSPIRIT30のように、同じシリーズの出力違いのアンプというのは
共用基板にしていることが結構あるようですね。

まぁ考えてみれば出力を上げるということは電圧を上げて電流を増やすわけで
トランスやトランジスタ、コンデンサ等の定格電圧が変わるだけで回路的には変わらないし
プリアンプの動作電圧は同じままでもいいわけですからね。

また、音量的にも50Wに対して100Wだからって音の大きさが2倍になる訳ではなくて
そこはMarshallもそうですよね。

それにしても昔のトランジスタアンプは良いものが多いですね。
F50-112、F100-112も本当によく出来た創りだなと思いながら作業をしていました。
やはり昔ながらのプリント基板が私の好みに合っているというのもありますが
プリアンプ基板、電源基板、パワーアンプ基板、と明確に分かれていて
その固定方法や配線材の取り回しなども分かりやすく、回路も分かりやすいです。

進化した現在のスルーホール両面基板、表面実装のチップ部品などでは味わえないような
「目で見て楽しめる回路」の魅力が、当時のアンプにはあったと思います。

まぁ普通は演奏するのにアンプの中の基板など見ないわけですが笑

でもやっぱり基板や内部構造など、創りの見た目が良いということはとても大事なことだし
実際の音もエフェクター乗りの良い国産トランジスタアンプらしい良さがあります。

メンテナンスしながら使い続ける価値のあるアンプですね。

2024.3.23

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