ギターダー
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No.41「Marshall / Lead12 3005 Yシリアル 修理 (Y25329)」


ギターアンプの修理依頼をお受けしました。
当HPでは何台もの Marshall Lead12 を修理してきましたが・・・

ついにLead12 3005 3段積みスタックの登場です!!

ヘッドのみのお預かりです。





症状は、GAINが9までは変化がなくて、9以上にすると急激に歪むとのことです。

もともとLead12は8か9辺りで急激に歪むポイントがあるのですが
明らかにそれとは違って9までは変化がないとのことです。

あとはVOLUMEのガリと、IN / OUTの接触が怪しいとのことです。



Yシリアルなので1990年製ですね。





コントロ−ルはコンボの5005と同じです。





Wシルアルまでは左がHIGHで右がLOWなんですけど
Xシリアル以降は左がLOWで右がHIGHになりました。コンボの5005もそうなっています。





Xシリアル以降はDIRECTOUTとHEADPHONEが分かれてます。
Wシルアルまでは共用でした。





背面です。





スピーカーは1×8Ωか2×16Ωです。これについてはまた後で述べます。





背面パネルを外すと基板が見えます。





洞窟の中に古代遺跡が存在している・・・そんな雰囲気です。





シャーシーを外すネジが5005コンボは上にありましたが、3005のネジは底面にあります。





先生!!基板を引き出しました!!





かっこいい・・・





うーむ、読めないなぁ・・・ 90年の8月1日製ですね。





オペアンプはMOTOROLAのMC1458CP1です。





トランジスタを見ていきます。

TR1はMicro Electronics製のBC184





TR2もBC184





TR3はBC212





TR4がMJ3001で、TR5がMJ2501。MOTOROLA製です。





ちなみにこれが重要。エミッタ抵抗がTY-OHM製です。
このエミッタ抵抗がLead12の後期型のの音を決める要となっています。低音が出ます。

詳しくは No.17「Marshall / Lead12 比較・検証」 で解説しています。





そしてTR6がまたBC184





コンデンサはMURATA製のアキシャルリード型です。積層セラミックでしょうかね。





電源の平滑コンデンサは韓国のSAMHWA製です。







・・・ということで、基板と部品自体は5005コンボの後期型と同じですね。
うちにあるXシリアルと同じです。



とりあえず症状を確認したいと思います。

お預かりしたのがヘッドだけなので
うちのIbanezの3段積みスタックアンプ、IBZ528のスピーカーキャビネットで鳴らします。





ちなみに冒頭で述べたように、
このLead12 3005のスピーカーは1×8Ωか2×16Ωを繋ぐ仕様になっているのですが、
IbanezのIBZ528のスピーカーは8Ωが2個です。
つまりLead12 3005のスピーカーは16Ωが2個で、IbanezのIBZ528のスピーカーは8Ωが2個です。

なので、IbanezのIBZ528のスピーカーを2個ともLead12 3005に繋ぐのは駄目です。

どういうことかというと・・・

Lead12 3005のスピーカー接続ジャック2個は並列に繋がっています。





なので、スピーカーを一つだけ繋ぐ場合はもう片方のジャックは無いものとして無視できるので
5005コンボタイプと同じ8Ω仕様になります。

そしてスピーカーを2個繋ぐ場合は、単に並列合成抵抗で抵抗値が2分の1になりますので
16Ωのスピーカー2個を繋ぐことで並列合成抵抗で半分の8Ωになります。

単純な仕組みですねー。

もし8Ωのスピーカーを2個繋ぐと半分の4Ωになってしまうので、それは良くないということです。

何故良くないのかというと、抵抗値が半分になると最大出力は2倍になってしまうので、
12Wの仕様のままでは24Wに耐えられない部品や条件が出てくるからです。

ある条件を超えると、過電流で熱を持ち、しまいには壊れる箇所が出てくるというわけです。

逆に言うと、最大出力を出さずに半分以下に抑えた音量で使っている分には
4Ωでもすぐに壊れることはないともいえます。(自己責任ですね。)
ただし音量と出力とVOLUMEの目盛りは比例しないので、半分以下なら大丈夫というと語弊があります。

なのでメーカーとしては「1×8Ωか2×16Ω」を守って下さいとしています。



つまり5005と3005はどちらも8Ω仕様で回路的にも同じであり、
3段積み用にどこか回路を変更しているわけではないということですね。



ということでIbanezのIBZ528のスピーカーは1個だけ繋ぎます。
左右どちらのスピーカージャックに繋いでも同じですし、16Ωを2個繋いだ場合と出力も音量も同じで
スピーカーを1つしか繋がないからってパワーが半分になるということはありません。

ただし、Marshallの3005用の16Ωのスピーカーを1つしか繋がない場合は
壊れはしませんが、8Ωの指定に対して16Ωなので最大出力が半分に落ちて音量が半分になります。



尚、これらの説明はこのアンプが8Ω出力で2個のジャックが並列に繋がっている仕様だから、であって、
スピーカーを2個繋ぐタイプでも何Ωのスピーカーをどう繋ぐかはそれぞれ決まっていますので
アンプごとに決まっているスピーカーの抵抗値には気を付けましょう。



ということで症状を確認すると・・・

ご依頼主様のおっしゃる通り、GAINは9までは変化が無くて9以上で急に歪みます。
POTのクリーニングだけでは無理そうなので、VOLUMEのガリも合わせてPOTを交換ですね。

接触不良はほんの僅かですのでクリーニングだけで大丈夫そうです。



それでですね、GAINをフルにした状態の音は正常のようですが、凄く音が良いです先生!!

うちのXシリアルと同じ基板なのに、同じセッティングにするとうちのXシリアルはこもりがちで
この3005は抜けが良いです。

まぁうちのXシリアルは床に置いてあって、この3005はスピーカーが高い位置にあるのでその違いだとは思いますが
あとで検証してみたいと思います。





ではシャーシーから基板を外していきます。





綺麗な基板ですねー。





JMP24A・・・





左が外したほうで、右が新品。





TAIWAN ALPHAから互換品のALPHAへ交換します。





交換しました。





5005コンボのスピーカーで動作確認をしてGAINも含めて動作良好。絶好調です。
ジャックの接触が怪しかったのも症状は軽かったのでクリーニングで直りました。





うちのXシリアルと同じ基板なのに3005の方が良い音に感じるのですが、動作確認を兼ねて
キャビネットやスピーカーの床からの高さが異なるので、同じ条件にして比べてみます。

Lead12は、Rシリアル1台、Sシリアル3台、Wシリアル2台、Xシリアル1台の合計7台ありまして
真ん中の一番下がXシリアルです。
(写真の写り方で縦横の比率が崩れて見えるだけで全て同じ大きさ形です。)





まずは基板上の部品を比べてみましょう。



上が3005のYシリアル、下が5005のXシリアル。
シャーシー内のトランスの配置等が異なるだけで基板自体は同じです。





オペアンプも同じ、抵抗値も全て同じです。





C4の電解コンデンサの大きさが異なるだけであとは抵抗値も同じです。





ちなみに3005のC4は2.2μFと確認出来ますが、5005のC4は容量の数値が見えません。
ちょっと気になりますけど多分3005の方は耐圧が100Vと大きいから大きさも大きいだけで
5005も耐圧25Vくらいの2.2μFだと思います。ハンダを外してまでは確認しません・・・





あとは抵抗値もみんな同じですねー。





エミッタ抵抗も同じTY-OHM製です。





それでですね・・・

抵抗値を全てチェックして、
お預かりした3005のYシリアルとうち5005のXシリアルは全て同じ抵抗値であることを確認したのですが
ネットに出回っているこのLead12 3005の回路図と全然違うんですね。

lead12_3005_schematic.jpg

この回路図は3005でも中期型(U、V、とWシリアルの途中まで)の回路図ということでしょう。

そして、回路は初期、中期、後期で異なるだけで、3005と5005の区別はスピーカーのジャック以外はないですね。

ふむふむ。



ということで、3005を5005と同じ条件にして音を比べてみます。

いや、あくまでも動作確認ですが、
音が異なるのはキャビネットとスピーカーの床からの高さのせいだということを確認させてください。



Xシリアルは元のキャビネットに戻して、
他の5005のキャビネットのシャーシーを抜いて、そこに3005のシャーシーを入れます。





Sシリアルのキャビネットを借りました。
これは抜いたSシリアルの基板です。かっこいいですねー、えへへー。





ちなみになんですけどねー、なんかねー、3005が気に入っちゃったんですよねー。



例えば5005のシャーシーは底面からスピーカーケーブルと電源ケーブルが出ているので・・・





シャーシーを置く場合には当て木を用意しないとケーブルが根本でアレですよね。





こうやって浮かさないと置けないわけですよ。





でも3005はスピーカーケーブルと電源ケーブルは背面から出るので、





気にせずそのまま置けるのです。 なんかスッキリしてて扱い易いんですよね。





ということで左が5005で右が3005です。これで同じ環境で比べられます。





はい。



同じ音でした!!



やはり音が異なっていたのはキャビネットとスピーカーの床からの高さのせいでした。

良かったです。

かっこいい音だと思った3005と同じ音がする5005のXシリアルを持っているということで良かったです。

それと同時に、やっぱり3005のスタック仕様の方が音がかっこいいということも分かりました。
まぁセッティングにもよりますし、5005でも高さを上げればいいだけだとも思いますが
もうイメージ的に3005スタックの方が音がかっこいいと思っちゃっています。

チャンスがあれば入手したいですね。



3005を元の箱に戻して修理完了です。





今回は修理の内容としては特に問題なくスムーズにいきましたが、

3005を実際に鳴らしたのは初めてで、同じ回路、同じ基板でも
スピーカーキャビネット等の環境によってかなり音が変わるということをあらためて痛感しました。

そして、Lead12の音がとてもMarshallらしくてかっこいいということもあらためて思いました。

クランチも良い音だし、GAINがフルより少し手前の弱い歪みもかっこいい。
手の加減での強弱も良い感じに反応してくれる。

間違いなく名機です。

2021.4.27

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